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レイ・ケネディはMSGに合わなかったのか

 とても暑い日が続いている。電力会社のポカによる代償を何故か被害者である我々が払わされているという、奇ッ怪極まりない状況が続いている今日この頃である。
 1984年、日本がまだ平和だった頃、炎天下の中でメタル集団が日本各地(福岡・名古屋・大阪・埼玉)で数万人ずつ集まるという暑苦しいイベントが開催された。それが「スーパーロック'84」である。最近このイベントが「アンヴィル~夢を諦めきれない男たち」というドキュメンタリー映画によって再注目された。このときオープニングアクトを務めたANVILの現在の姿を追ったドキュメンタリー映画だが、これは非常に面白かった。本業を別に持っているロックバンドのツアーを描いたもので、アマチュアバンドをやっている人にとっては他人事ではなく、共感できる内容である。しかも、METALLICAをはじめとする後に超大物となるバンドに与えた影響も大きいというその特殊性も備えている。平ハウスではイマイチ受けが良くなかったのが残念だが、いろいろなところをツアーしているインディーズバンドの人なら結構楽しめる作品だと思う。
 さて、この映画のオープニングや予告編では、いわゆる「つかみ」として、スーパーロック'84の模様が映し出されている。
「アンヴィル~夢を諦めきれない男たち」予告編
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 スーパーロック'84でANVILと共演したバンドとしてBON JOVI、SCORPIONS、WHITESNAKEが登場している。BON JOVIはこの出演者の中で最も成功しているバンドであるが、このときはまだポッと出の若造バンドであった。この2年後に発売される「SLIPPERY WHEN WET」のメガヒット(全世界で2500万枚以上のセールス!)で頂点を極め、今尚最前線で活躍しているこのイべント出演バンドの中でも突出した出世頭である。
BON JOVI「Runaway」スーパーロック'84
夜明けのランナウェイ+4夜明けのランナウェイ+4
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ボン・ジョヴィ

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 そして、SCORPIONS。70年代は天才ギタリスト:ウルリッヒ・ロートを擁した哀愁溢れるサウンドで日本では既に高い人気を誇っていたが、ウルリッヒ脱退後の方針転換によりアメリカでも成功をつかんだ。82年に名盤「BLACK OUT」をリリース、前年のUSフェスティヴァルにも出演しており、多分この時点で最もビッグだったのはSCORPIONSであろう。
SCORPIONS「BLACK OUT」スーパーロック'84
蠍魔宮~ブラックアウト蠍魔宮~ブラックアウト
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 WHITESNAKEも元DEEP PURPLEのシンガーであったデイヴィッド・カヴァデールのバンドというだけあって知名度は抜群、本国イギリスや日本では既に人気を確立しており、このイベントでも日によってはヘッドライナーを務めていた。しかし、肝心のアメリカでブレイクするのは全米で1000万枚を売った「SERPENS ALBUS」がリリースされるまで3年ほど待たなければならない。それにしても、ベースがニール・マーレイ、ギターがジョン・サイクス、ドラムがコージー・パウエルという凄まじいメンツである。個人的にはミッキー・ムーディ&バーニー・マースデンのツインギター編成で、ドラムとキーボードがイアン・ペイス&ジョン・ロードというDEEP PURPLE組が参加している編成の方が好きだが、スーパーロック'84の時の編成の人気は際立って高い。特に「SERPENS ALBUS」というメガヒットアルバムのメインソングライターでありながら、完成直後に脱退する羽目になったサイクスとの再コラボレーションは未だに待ち望まれている。
WHITESNAKE「Guilty Of Love」スーパーロック'84
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 予告編に登場した出演バンドは以上だが、実はもう1組出演していたバンドがあった。それはMICHEAL SCHENKER GROUP (M.S.G)である。よほどマイナーなバンドが忘れ去られるならともかくも、このイベントの最終日の大トリを務めた超有名どころが忘れられてしまうというのは何とも・・・。しかも、映画の本編では、欧州のフェスでANVILのリップスがマイケル・シェンカーに出くわして「昔、日本のイベントで一緒に出たことあるんですよ」と会話するシーンまであるのである。もっとも、シェンカーのほうではあまり覚えてなかったようで、言葉を濁していた。実際にAVNILの印象があまり残っていなかったのかも知れないが、穿った見方をすれば、スーパーロック'84自体をあまり覚えていたくはない、むしろ忘れたい出来事なのではないかと思ったロックファンも結構いたに違いない。このイベントはマイケル・シェンカーのファンや、メタル・リスナーの間で「レイ・ケネディの悪夢」と呼ばれる事件の舞台でもあったのである。

 レイ・ケネディはハード・ロックやヘヴィ・メタルというよりも、コンテンポラリー・ロック畑のシンガーソングライターである。しかし、元VANILLA FUDGEのスーパー・ドラマー:カーマイン・アピス(日本のロックファンの間では、田村直美と組んだPEARLのドラマーと言った方がわかり易いかも)とK.G.Bというバンドを組んでいたこともあり、ハード・ロックとまったく縁遠いわけではない。それよりも日本で彼の名を知らしめたのは八神純子の盗作騒動であろう。大ヒットした八神の代表曲である「パープル・タウン」が、実はレイ・ケネディの「You Oughta Know By Now」(邦題は何故か「ロンリー・ガイ」)をパクったものではないか、という騒動が湧き上がり、結果的に八神側が曲名を「パープル・タウン~You Oughta Know By Now~」を改め、作曲者にレイ・ケネディをクレジットし印税を支払うことで騒動は決着した。後にマイケル・シェンカー・ファンで知られるB'zの松本孝弘がソロで「パープルタウン」をカヴァーしたのも何か意図的なものを感じたりする。
RAY KENNEDY「You Oughta Know By Now」
八神純子「パープルタウン」
※サビが唐突に転調してまったく別の曲になるんだから最初からサビと同じキーのオリジナルにすれば良かったのに、と思いたくなる。
ザ・ベスト・セレクションザ・ベスト・セレクション
(1996/11/21)
八神純子

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 その盗作騒動から4年近くを経て、「あのレイ・ケネディがM.S.Gに加入して来日する」ということになったわけだが、M.S.Gのヴォーカリストの変遷はここまででもなかなか複雑である。UFOを脱退してM.S.Gを立ち上げたシェンカーはまず、ゲイリー・バーデンをシンガーとして雇う。それで2枚アルバムを作りヒットするのだが、このバーデン、歌メロを作るのが滅法巧い反面、歌うこと自体はあまり巧くないのである。そこで、もっとバンドのヴォーカルを強化しようと、元RAINBOWの横山やっさんことグラハム・ボネットを加入させる。しかし、やっさんは親友のコージー・パウエルに「また一緒にやろうぜ」と誘われてM.S.Gに加入してみたら、既にコージーは脱退していたという奇妙なことになっていた。それでも「ASSAULT ATTACK」という名盤を作り上げて「やっさんはやっぱ凄いんだ」とファンは歓喜したが、やっさんM.S.Gの初ステージを泥酔状態で行ない、歌詞をまったく覚えていなかったためカンペをステージの床に置いたものの、空調でカンペが舞い上がってしまうという、まるで花王名人劇場のやすきよ漫才のネタか、というような状態に。しかも折りも悪く、出演前に飲みまくってトイレに行った際にズボンのジッパーを壊してしまった為、ノーパン主義だったやっさんの性器がライヴ中に露出してしまい、それに気付いたやっさんが慌ててジッパーを閉めようとして性器をジッパーに挟んで悶絶、そのままステージから逃走し、それ以降、M.S.Gに戻ってくることはなかったのである。仕方なくシェンカーはバーデンを呼び戻してアルバム「BUILT TO DESTROY」という凄まじい名盤を作ってしまうわけだが、アメリカ進出に当たってこのアルバムのリミックス盤を作ったところ「バーデン下手すぎ」という見も蓋もない理由で、一部のヴォーカル(曲によっては1曲丸ごと)が別人の歌に差替えられた。バーデンはヴォーカリストとしてこの上ない屈辱的な仕打ちを受けてしまったにも拘らず、ツアーには帯同。しかし、情緒不安定なシェンカーから八つ当たりされ、結局脱退。そこで代役として白羽の矢が立ったのが「ポップな歌メロを書くことができるシンガー」である、レイ・ケネディその人であった。
 レイの初仕事がスーパーロック'84という日本で行なわれるスタジアムクラスの会場でのフェスだったのだが、何しろ急に加入したものだから、曲を全部覚えることはできず、やっさんの悪夢を思わせるカンペ作戦を決行する。特にやっさんのような不幸が重なることはなかったものの、曲によっては歌詞を勝手に作って乗り切ったり、歌メロも別のものになっていたりするというリハーサル不足がもろに表れたパフォーマンスとなった。そしてなんといっても、そのステージ衣装には観客は度肝を抜かれたのであった。そもそも80年代前半のメタルのステージ衣装なんて、スパッツみたいなのが主流でそんなに恰好のいいものではなかったのだが、それでもレイ・ケネディのローラースケートを履いていない光GENJIのような衣装(尤も、この当時まだ光GENJIはデビューしていなかったのだが)は、後日この模様をビデオで観たバーデンに「おいおい、一体どうなってるんだ?って思ったよ。彼はネイティブアメリカンのナヴァホ族みたいな格好をしていた。酷かった、気の毒だった、信じられなかった、完全に浮いていた」とボロクソに言われている。なお、バーデン自身のファッションセンスも酷いものなのだが、その彼にすらここまで言われてしまったのである。その奇妙なステージの振り付けも「未開人の雨乞いの儀式のようだ」とまで評され、この出演がメタルファンの間で「レイ・ケネディの悪夢」と呼ばれ非難の対象となってしまい、結局レイもこのフェスの出演を以ってM.S.Gを脱退。その後マイケル・シェンカーはロビン・マコーリーをシンガーに迎えてバンド名もマコーリーの名前を入れたMCAULEY SCHENKER GROUPに改めて活動するものの、それ以降下降線を辿る事になる。
MICHAEL SCHENKER GROUP「Rock My Nights Away」スーパーロック'84
限りなき戦い限りなき戦い
(2000/06/07)
マイケル・シェンカー・グループ

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 それにしても、確かに酷いパフォーマンスと衣装ではあるものの、歌自体は別にそれほど酷くないように思える方も多いのではないだろうか。特にM.S.Gの曲をよく知らない人にとっては、歌詞や歌メロが違っていても気付かないだろうし、音自体を外しているわけではないので、それほど違和感を感じるものではないと思われる。実際に行った人にしてみると「これは最終日だからある程度まともになっているが、前日やそれ以前の名古屋、福岡、大阪なんてのは悲惨そのものだった」とのことである。また、この最終日の模様は映像作品として商品化されており、商品化に際し、一部ヴォーカルが後日レイがスタジオで歌い直したものに差替えられた部分もあるとのことである。しかし、ライヴ作品のヴォーカル差し替えなど、バーデン時代の「ONE NIGHT AT BUDOKAN」や「ROCK WILL NEVER DIE」でも当たり前のように行なわれていたので非難するには当たるまい。この「Rock My Nights Away」を聴く分には結構M.S.Gのキャッチーでポップな部分とレイ・ケネディのヴォーカルはマッチしているんじゃないかと思う。確かにライヴが酷かったとは言え、強行日程で日本に連れて来られたレイの状況を思えば、キチンとリハーサルをする時間が取れればこの様な酷いことにはならなかったのじゃないかと思ってしまう。前述の「You Oughta Know By Now」にしてもコンテンポラリーな曲とは言え、ハードなエッジの歪んだギターリフがバッキングの主体となっており、M.S.Gで採り上げてもそれほど違和感がないように感じるのだ。もし、このフェスの出演がなく、レイとシェンカーが組んでアルバムを作っていたら、もう1枚M.S.Gのディスコグラフィに名盤が加わっていたのではないか、とすら思える。歴史に「たら・れば」はないとは言え、レイ・ケネディが歌うM.S.Gのアルバムを聴いてみたかったものである。でも、衣装と振り付けに関しては、もうどうやって擁護したらよいものやら…
ロンリー・ガイロンリー・ガイ
(2002/09/19)
レイ・ケネディ

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No title

 レイ・ケネディが、昨日お亡くなりになりました。

僕は30年来のマイケル・シェンカーファンで、「スーパーロック’84」のビデオは、当時高価で、ここ数年ブートで購入して観たのですが、やはり当時は酷評されていたにも関わらず、そうでもなくゲイリー・バーデンより歌えていた感じでした。
当然、発売にあたり、差し替えはあったと思います。

僕の連れは、MSGの初めて観た映像が、「スーパーロック’84」だったため、
MSG=レイ・ケネディという逆転現象が起きています(^_^;)

心より、お悔やみ申し上げます。

re:タイガーマスク42歳さん

亡くなったのですか……それはびっくりです。
MSGも当日行った方は大変だったでしょうが、自分のように後追いで映像を観る分には非常に楽しめました。
また、この事件でレイ本人に興味をもったおかげでKGBのような素晴らしいバンドを知ることもできたのは本当に喜ばしいことでした。
本文中にあるとおり、メタル者に馴染みの深いカーマイン・アピスがドラムですし、
特に「Sail The Sailor」という曲はビーチボーイズのブライアン・ウィルソンとレイが共作した素晴らしいナンバーです。
http://youtu.be/SYBoYdc17Tw

>僕の連れは、MSGの初めて観た映像が、「スーパーロック’84」だったため、
>MSG=レイ・ケネディという逆転現象が起きています(^_^;)

とにかくインパクトは十分、ですからねえ。当方も「ロック・パラスト」「ロック・ウィル・ネヴァー・ダイ」のDVDよりも「スーパーロック」の方を観てしまう方です。
最後の方に差し込まれるインタヴューでレイが言った
「ロックンロールとは50%がパーソナリティのぶつかりあい、そして残りの50%の才能で作られるものだと思う」
いいことを言ってるようで、特にそうでもないこの言葉に何かグッと来てしまう自分がいました。

レイケネディ

レイケネディについては全く同感です。衣装とステージングは酷いですが、歌声だけは むしろ上手い部類と思います☺

Re: レイケネディ

今ではRock My Nights Awayはこのヴァージョンが個人的にはいちばん好きですね
いい歌唱だと思います
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Author:でー
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