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感動のVENOM inc.東京公演

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 横浜に出張したついでにVENOM inc.のライヴを観てきた。なかなか週末にライヴを観に行く機会などないので、このタイミングでVENOM inc.が来日公演を行なうというのは非常に幸運だったと言えよう。
 それにしても、横浜で元アップルジャパンCEOの山元賢治氏の講演を聴いた直後にその足で原宿へ行ってアストロホールでVENOM inc.のライヴとは、自分のことながらやたら落差……じゃないな、起伏が激しいというか振れ幅の大きい生活してるなあと妙に感心してしまう。まぁ、この公演のオープニングアクトを務めるSIGHの川嶋夫妻ほどではないだろうけれども。
 
 「VENOM inc.って、なんだか“でんぱ組.inc”みたいだなぁ」とは同行した友人Mくんの弁。そもそもVENOM inc.とはなんぞや?というと、現在はGREAT WHITEとかQUEENSRYCHEとかRHAPSODYなどに見られるようなよくあるケースだが、VENOMが2つに分かれてしまっているのである。エクストリーム・メタルの祖であるところのVENOMのオリジナルメンバーはベース・ヴォーカル兼任のクロノス、ギターのマンタス、ドラムのアバドン、という今の感覚で言えば中二病丸出しの超かっこいいステージネームを持った3人のナイスガイ達であるが、現在“VENOM”名義のバンドにいるのはクロノスである。そして別バンドであるM:PIRE OF EVILというバンドをマンタスがやっており、そのバンドのベースヴォーカルがVENOMの2代目ヴォーカリストのザ・デモリション・マン(以下デモリションマンと表記)であった。そしてM:PIRE OF EVILにアバドンを引き込んで、VENOMナンバーを演奏するために結成されたのがもう一つのVENOMである“VENOM inc.”というわけだ。名称からして本家なのは勿論クロノスのいるVENOMの方なのだが、所謂“VENOM度”が濃いのはオリメンが2人もいて、しかももう一人が2代目メンバーであるところのVENOM inc.なのかもしれない。
 この2つのバンドの最大の違いが「現在も新曲を生み出して、ライヴでもそれを積極的に披露している」のと「新曲を作らず、昔の全盛期のおなじみのナンバーばかりをライヴで披露する」という点にあるだろう。どう考えても一般的には前者のほうが素晴らしく、後者のほうが後ろ向きなのであるが、VENOMに関して言えば後者のほうが前向きであるとも言えなくもない。後追いのおれが何を言っても詮ないので、リアルでVENOMの初来日公演を見た方の文章を読んでいただくのが一番良かろう。……とまぁこんな感じで本家は現役感にこだわるあまり、ファンの要望に充分に答えているとは言い難い状況なのである。新作が格好良ければ問題ないんだろうけれど。

 さて、公演について。今回は撮影が全面的にOKだったのだが、デジカメを家に忘れるという痛恨のミス。タブレットも先の山元氏の講演の撮影やら、電車の乗り継ぎの確認やらで酷使した末の電池切れ。よって画像はなしである。残念。
 前述の如く昨年のEMPEROR来日公演に引き続き、オープニングを務めたSIGH。会場に入った時から場内BGMでSIGHの新作「GRAVEWARD」の曲が鳴っている。というか、アルバムをそのままかけっぱなし。すると、ステージ上にサトシさんが登場し、ベースのサウンドチェックを始める。何気にこの人はSIGHの英文FBでいじられキャラとして海外のファンから人気がある。続いてドラムの原島さん、ギターの大島さんが登場し、サウンドチェックし暗転。今回はいつもの祭壇が作られておらず、火吹きとかどうすんだろ?と思っていたところに川嶋さんが登場し、いきなり毒霧吹きのパフォーマンス。この人のことだからムタじゃなくてカブキの方を意識しているのだろうなぁと思う。前回同様1stアルバムの1曲目「A Victory Of Dakini」でスタート。曲の途中からミカンニバル博士が出てくるのも、彼女が頭巾にマント姿でその下が腹出し衣装なのも同様。今回はお産が済んで普通のお腹になっていたのが前回との最大の違いであった。そのあと立て続けに1stから曲順通りに「The Knell」「At My Funeral」を演奏し、すわ1st再現公演か?でも20周年でやったのに今やるのもなぁ、と思っているところに川嶋さんのMC。「1stアルバムの『SCORN DEFEAT』から3曲やったけど、実はVENOMの歌詞からこのタイトルをパクったんですよね」というと、会場が笑い声に包まれる。VENOMの1st「WELCOM TO HELL」のタイトルチューンの女性のナレーションがかぶさっているところの歌詞「Leave your souls at his feet. Kiss the flames. Scorn defeat」から拝借したわけである。それは気付いてはいたが、それでこの選曲かナルホド、と腑に落ちたところでEP『葬式劇場』から「真言立川」がプレイされる。ミカンニバル博士加入前のナンバーながらサックスをフィーチュア(と言ってもスタジオヴァージョンではシンセのサックス音……だと思う。間違ってたらすみません)していた曲なので、この曲では博士のサックスが活躍。そして、仰々しい近代日本的オーケストレーションの「The Soul Grave」が続き、今度はお馴染みの博士の妖艶な血糊パフォーマンス……だが、なんか血糊が少ない感じ。いつもみたいに顔から体の前面を真っ赤に染めるほどのものではなかったように見えた。続いて新譜から「The Forlorn」が披露され、超低音のコーラス部分を博士が歌っててちょっとびっくりする。そして川嶋さんがMCで「今日は火吹きやんないの?って感じだけど、会場から『火吹きは絶対死んでもダメです』と言われているので……まぁ、いつもならそんなの気にせずやっちゃうんですが、火を吹いたせいでVENOM inc.のライヴが中止になったら、俺が死んじゃうんで……」と説明。ナルホド、それで血糊も加減したのかな、などと思った。後で川嶋さんのTwitterを見たら「火使わなかったのに、結局血糊を怒られました。」と書かれていた。あちゃー。「それじゃ、あと2曲」と言って『HANGMAN'S HYMN』から「Introitus / Kyrie」と「Me-Devil」を演奏して川嶋夫妻がSIGHの幟を掲げて終了。

 今回の注目もいわき在住の大島さんのギタープレイだが、さすがに今年に入ってヨーロッパのフェスの大会場を何度か経験しただけあってかなりの余裕が見られる。前回もそうだったが、前任の石川さんがTシャツ+ジーンズの普段着ファッションだったのに対し、大島さんはヒラヒラのステージ衣装をまとっており、これまでの川嶋夫妻+楽器隊普段着3人から、フロントマン3人の衣装組+リズム隊普段着2人(原島さんはテンガロンハットかぶってるやんけ、となったらサトシさんが独りぼっちになってしまうので敢えてこちら側に。ただでさえ石川さんが抜けて“一人だけ島(嶋)抜きの姓”になってしまったのに)とパワーバランスが逆転し、今回は大島さんが目貼を入れるなどしてより魅せるフロントマン意識が感じられる。ギタープレイも流麗そのもの。右手でネックを掴んでミュートしつつのトリルや、タッピングなどのレガートプレイ、オリジナルを大幅に改変した弾きまくりのソロなど、もはやこのバンドに定着したと言って良いだろう。前回と違っていたのは、アンプがドライヴチャンネルだったところか。足元(エフェクター)が自分の位置では見えなかったのが残念。多分最前列でもモニターの影だったので見えなかったと思うけど。
SIGH 「Me-Devil」

※今年ベルギーで開催されたメタルフェス「GRASPOP METAL MEETING」でのライヴ


 SIGHが引っ込むと、ステージに暗幕が張られ、その向こう側でVENOM inc.が準備をしているのだろう。BGMは相変わらずSIGHの新譜がリピートされている。場内BGMって普通いろんな人の曲をかけるもんだと思っていたが、アルバムをずっと流しっぱなし、しかも出演してる人たちの、っていうケースはおれが寡聞にして聞かないってだけで、それなりにあることなのだろうか?などと思いつつ周りを見回すと、結構な客入りで安心する。知り合いがいないか探すが特に見当たらず。ただ、全く面識のない兀突骨の高畑さんらしき人を発見すると、会場が暗転し、一気に大歓声が湧き上がる。

 そして暗幕が落ちるとものすごい量のスモークが焚かれていてステージがよく見えない。しかも向かって右側の暗幕が引っかかったまま落ちず、スタッフが慌てて暗幕を落としにかかる。すると、ステージ上にデモリションマンらしきベースを抱えた男が霞の中から現れベースを爪弾き出す。そして、マンタスがギターを持ってステージ中央に躍り出てギターリフを弾くと、霞がかって見えないドラムセットの向こうにいるはずのアバドンが相も変わらず怪しげなというか危なっかしいビートを叩き出す。初期VENOMの曲を演奏するプロジェクトと聞いていたが、いきなり6thアルバム『PRIME EVIL』のタイトルチューンで始まり意表を突かれた。しかし、デモリションマンが参加した本家VENOMの曲であるからして『デモリションマンがこのVENOM inc.のヴォーカルであるぞ!』と印象付けるという意味ではわからなくもない。個人的にはこのアルバムからならミドルテンポのこの曲(アルバムでも1曲目だけど…)ではなく、「Parasite」か「Megalomania」で始まったほうがライヴの掴みもいいのではなかろうか、などと不埒な考えが頭の隅をかすめもしたが、なんといってもあのマンタスが目の前でギターを弾いているのであるからしてそれだけでも素晴らしいと思わなければならない。オリジナルメンバーでは一番顔が整っているというか、他の2人に比べてあまりインパクトのないルックス(クロノスのルックスは本当に素晴らしい。どうせブサイクに生まれるならあんな顔に生まれたい)だったが、おっさんというかおじいちゃんになって貫禄がついて、タレサンの似合う非常に味のある風貌になっていた。そして2曲目に初期シングル(おれは「JAPANESE ASSAULT」という企画盤で所有)の「Die Hard」がかき鳴らされると一気に会場がヒートアップし、フロア前ブロックの中央付近で早速モッシュが起こる。これ以降演奏されたのすべて1stか2nd収録の曲、或いはその時期のシングル曲ばかりで、「『AT WAR IS SATAN』以降なんか知ったこっちゃない!」というすさまじい吹っ切れぶりにはもう平身低頭するしかないのだが、この時おれが着ていたのは『AT WAR IS SATAN』のTシャツだったので、ちょっとフクザツな気分であった。
VENOM 「Prime Evil」

※デモリションマンとマンタスとアバドンが本家VENOMだった頃のライヴ。

 本日のモッシュピットを仕切っていたのはモヒカン姿の若いあんちゃん。「ロビンソンの庭」に出てた頃の横山SAKEVIさんっぽいルックスの目付きの鋭い彼が上半身裸で(最初はTシャツを着ていた)暴れていた。このあんちゃんはまだ良かったのだが、もう一人、茶髪でちりちり天パーのおっちゃんのたちが悪く、モヒカンが暴れるとこのちりちり茶髪も調子づくのだが、まぁ、ひどい暴れ方をし、モッシュに参加していないそこかしこの人に激突していたのだが、一度はバランスを崩しておれの方に倒れ込んできてしまい、下半身にぶつかられたので弾き返すことが出来ずおれも倒れてしまい、鉄柵に頭をしたたか打ち付けてしまった。モヒカンがおれの腕を引っ張って起こしてくれたが、当のちりちりはとっとと後方にエスケープ。しかもライヴ終盤には火のついた煙草を咥えてモッシュする始末。危ないこと極まりない。たまたまうまい具合に人のいないところで煙草を落とし、近くにいたモヒカンがそれを踏んで消火したから良かったものの、当のちりちりはその後ろの方の客にたしなめられて恐縮する姿が見られた。せっかくSIGHが火の演出を我慢してライヴの進行を優先したというのに、こんなんで負傷事故を起こして公演が中止になったらどうするんだと。
 SIGHといえば、モッシュに流された先に川嶋さんがいたのだが、じっとステージを見ながら何やら口ずさんでいる。小声で今まさにステージで演奏されている曲(このときは「Warhead」だったか「One Thousand Days in Sodom」あたりのときだったような。曲順の記憶はちょっとおぼろげになっている)を一緒に歌っていたのだった。

 それにしても、デモリションマンである。1曲目こそ自分が在籍していたときの曲だが、あとはすべてクロノスが歌っていたナンバーである。かつては彼がVENOMで頑張っていても「クロノスのいないVENOMなんて、VENOMじゃねえよ!」などと心無い言葉をたくさん浴びたであろう。そんな彼がとても楽しそうに初期VENOMのナンバーを演奏し歌っている様を見ると、本当に彼を心から応援したくなるのが人情というものである。
 
 しかもこの日は、なぜかベース機材がトラブルを起こすという不運にも見舞われた。一度曲が終わった後にアンプを調整したら音が復活して、客席から喝采が飛ぶ。そのときに「デモリッションマンタース!」という野次が飛び、フロアもステージ上も一斉に笑いに包まれた。しかし、「Seven Gates Of Hell」(「Schitzo」だったような気もするが、セットリストのサイトを見ると7ゲーツだったっぽい。本当に記憶が混濁しているなぁ)が終わって、マンタスが次の曲のリフを刻むと、デモリションマンが口笛を吹いてマンタスに演奏を止めさせる。またもや機材トラブルである。先程はすぐに機材が復活したが、今度はなかなか直らない。デモリションマンが不安そうにアンプの方にスタッフと一緒にいると、マンタスもMCでジョークを言って場を和ませようとするが、悲しいかな我々日本人にはなかなかそれが通じない。ほんの数時間前に山元賢治氏が講演で「さまざまな情報が最初にリリースされるのが英語によってなので、フレッシュな情報を得るには英語が出来ないと話になりません」と言っていたことが、早速この場で思い知らされる。しかし、次の瞬間、客席から唐突に「アーバド~~ン!」とドラえもんに泣きつくのび太のような口調の野次が飛ぶと、すぐさまアバドンが「What(なんだよ)!?」と返し、この漫才かコントのような絶妙の間で繰り広げられたたった二言の会話で会場が爆笑の渦に巻き込まれ、落ちかけていた会場のテンションが復活し、アバドンのドラムソロが始まった。会場はやんやの大喝采。あの怪しげなドッスンバッタンとしたドラミングがこの時ばかりは頼もしく見える。するとマンタスがブルーズっぽいフレーズを弾きだし、即興のジャムセッションが始まった。ドラムソロも含め、これは全く予定になかったであろうし、誰もが予想もしなかった展開である。デモリションマンがベースの点検に一旦引っ込むと、マンタスが「アバドンも今から帰るってよ」と軽口を叩き、アバドンがスネアを抱えて引っ込もうとする。会場から「アバドーン、カムバーック!」という声がそこかしこから飛び、アバドンがドラムキットの方に戻る。デモリションマンが戻ってきた時にマンタスが「ベースアンプを交換するから」と言ったのちに機材の調整が終わってデモリションマンが弾いたベースの音がけたたましく鳴り響くと、会場が大歓声に包まれる。あのときの厳ついはずのデモリションマンの笑顔のさわやかなこと。まさに会場がひとつになった瞬間であった。
 
 そしてライヴが進み、「Sons Of Satan」が終了すると一旦メンバーたちが引っ込む。勿論あの曲もあの曲もやってないので会場中が手を叩きながら「ヴェーノム!ヴェーノム!」とコールする。誰一人「ヴェノムインク」とは言わない。そう、少なくともあの日あの時あの場所においては、間違いなく彼らこそが真のVENOMだったのである。

 メンバーが戻ってきてアンコール一発目は「Welcome To Hell」である。これでまた会場が爆発。サビの「Welcome To Hell, Welcome To Hell, Welcome To Hell」の大合唱にデモリションマンの表情もとても引き締まっている感じだった。

 この曲が終わるとマンタスが感極まったような面持ちでちょっと涙声になりながらやけに神妙な口調で我々に語りかけた。「東京のみんなにとても感謝している。我々は心から君たちをリスペクトしている。本当にありがとう。今から演る曲だが、俺がこのリフを作ってメタルのスタイルが、歴史が変わった。この曲のタイトルが音楽のジャンルにもなった。おれと一緒に呼んでくれ。たった2つの言葉なんだ」そしてマンタスが「Black!」と叫ぶとオーディエンス全員が「Metal!」と叫び返し、その刹那、「Black Metal」のリフが鳴り響き、ドラムの一撃が入った瞬間、おれはサークルピットの中に踊りこんだ。この日のおれはこれまでモッシュに巻き込まれて流れで参加してしまったことはあっても、自ら積極的にやることはなかった。何故ならこの曲でおもいっきりやろうと決めていたからである。勿論一曲目がこの曲であってもそうするつもりではあったが、アンコール2曲目という配置で、これまで溜め込んでいた力を一気に開放した。とは言え、なるべくピットに入らない人には触れないようにはしたのだけれど。全力でグルグル回りつつもキメの「Lay down your soul to the gods Rockn'roll」のところではピットから外れてステージに正対し、メロイックサインを突き上げ、またピットに戻った。そして曲の終盤になったところで演奏が止まり、マンタスが「一緒に歌ってくれ!」と言うとデモリションマンが「Lay down your!」と叫んだのだが、ちょっと間が合わず、オーディエンスの「Soul to the gods Rockn'roll」の返しがグダグダになってしまったのだが、マンタスが「もう一回やるぞ!」と言ってくれ、デモリションマンが再度「Lay down your!」と叫び、今度はオーディエンスが一体となって「Soul to the gods Rockn'roll !」と返すと、満足そうな表情を浮かべたデモリションマンが「Oh,oh,oh,oh......BLACK METAL !」と叫んでこの歴史的名曲の演奏が終わった。
 
 もうおれはここで全力を使い果たしてしまい、この前後の記憶が不確かになってしまっているのだが(おそらく、公演自体の時系列があやふやになっているので、これまで書いていたことも前後関係が怪しいかもしれない)、観客たちは「まだあの名曲が残ってるだろ?」とばかりに「One More !」コールが起こる。別にメンバーも引っ込んだわけではないのだが「Black Metal」の前のあの感極まったようなMCを聞かされた方はこれが最後と思ってしまうのも無理はなかろう。そして「もう一曲やるぞ!」とマンタスが言うと、VENOM史上に残る名曲であるところの「Countess Bathory」が演奏される。おれは息も絶え絶えになりながらも腕を突き上げ、拳を振るった。BATHORYのバンド名は勿論、X(現X-JAPAN)やCRADLE OF FILTH、KAMELOTやSLAYER、SUNN O)))などさまざまなメタルミュージシャンが採り上げたバソリー伯爵夫人(エリザベート・バートリ)を題材とした曲の先駆けであるこの曲が酸欠の脳内に突き刺さるたびに、VENOMの先見の明には改めて驚かされるのであった。

 この曲が終わり、メンバーが「写真撮るから前の方に来てくれ!」というので観客がフロア前方に集まる。そしてスタッフのきれいなおねいさんがドラムライザーのところからスマホを高く構える。「前の方だとメンバーの陰に入って写んねえじゃん」と思いつつも写真撮影に参加した。そしてメンバーがピックやスティックをフロアに放り投げて再度引っ込むと、またもやアンコールを催促する観客。おれは意識朦朧となりながらも、「あとなにかあったっけ?Teacher's Petがやってないな」などと思いつつ手拍子を打ってると、またもや3人が登場。 どういう感じで始まったか覚えてないが「Witching Hour」が演奏された。そうだよ、スラッシュメタルの元祖ともいうべきこれがまだだった。つかこのリフ使いまわ(以下略)。例のモヒカンがおれの肩に腕を回してきて、モッシュに参加してた連中で肩を組んでおそらくラストになるであろうこの曲を堪能した。
VENOM 「Black Metal」

※オリジナルメンバーによる85年のハマースミス公演。デビュー間もないCLASHのレインボー公演ですら目じゃない、如何に彼らの演奏力が凄まじい(どんな意味で言ってるかは観ればわかる)かを如実に表した映像。

 そしてメンバーたちが口々に日本語で「アリガト、アリガトゴザイマス」と謝辞を述べて袖に引っ込んだ。それでも観客たちは彼らを呼び続ける。するとスタッフのきれいなおねいさんが再び出てきて「すみません。メンバーの皆さんはもう疲れてしまって……もしかしたらもうちょっと後になったら演奏はしませんが、皆さんに会いに出てきてくれるかもしれません」と言うやいなや、アバドンが現れて客席に愛想を振りまいた。本当に今日はアバドンが要所要所で活躍したと思う。曲と曲の間、会場がちょっとおとなしくなると彼が「止まるな!続けろ!」と言って、観客のコールを要求したり、ペットボトルの水をぶちまけたりして、会場を盛り上げていた。マンタスも曲が終わった後にポカリスエットを飲んだ時に唐突に「POCARI SWEAT」と呟いて、会場から笑いが起こると、タオルで汗を拭いて「MANTAS's Sweat」と言い放ち、会場は爆笑。そしてそのマンタスズスウェットをたっぷりと吸い込んだタオルを投げ込むと、アバドンも対抗意識丸出しでタオルを放り込むのだが、フロアまで届かず、マンタスの傍に落ちるにとどまってしまい会場から失笑(本来の意味)が漏れる。そしてマンタスはそのタオルを拾い上げると、フロアではなく袖の方に投げ捨ててしまいまたもや爆笑が湧き上がったという場面も見られた。そしてひたすら誠実なデモリションマン。腕を見せて「東京のタトゥーを入れたんだ」と言うと会場から喝采が飛んだ。ちょっと遠目だったのでおれはどんなタトゥーかは確認できなかったのだが。

 そうしたメンバーたちの姿勢と観客たちの公演を目一杯楽しもうという姿勢(ちりちりだけはちょっと如何なものかってな感じだった)が一体となって、この感動の公演が出来上がった。機材トラブルも決してマイナスではなく、苦し紛れに「アーバド~~ン!」と叫んだ観客の思いと、それに機転を利かせて答えたアバドンの言動とマンタスとのジャムで却ってプラスに転化した感すらある。この感動は昨年のMANOWARの公演のメタル魂に溢れた感動とはまた違ったものだったが、素晴らしい体験には違いなかった。

 この後も会場では20年前に非売品で作られたというなかなか格好いいリバーシブルパーカーが「メンバーの飲み代を作るため」にオークションに掛けられるなどしたが、さすがに早朝から横浜に行ったのちに夕方に原宿に行ってライヴし、モッシュで全力を出し切ったおれは真っ白に燃え尽きて、Mくんとともに会場を後にした。このあとメンバーたちと観客たちの交流会があったそうだが、まぁ人見知りで英会話もおぼつかない上にカメラを忘れて写真も撮れない状況で参加しても切なかっただろう、と自分に言い聞かせた。
 
 その後プロモーターのSNSを覗くと、集合写真がアップされており、改めて客入りが良かったことに感嘆しつつも「どうせメンバーの陰に入っていて写ってないだろうな」と思いつつ見てみると、果たしてそこにおれは写っていた。しかも、マンタスとアバドンのちょうど間にすっぽり挟まった心霊写真のような状態で。
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