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EMPEROR東京公演 ~こうていののろい編~

 本編のEMPERORは1st完全再現。
 イーサーン(本当は“イーシャン”に近い発音をするらしい)は歌いながらも凄まじく複雑なリフを易易弾きこなす正確無比な演奏を聴かせてくれるが、オールバックに黒縁メガネ着用で全くブラックメタルの雰囲気なし。いつぞやのW.O.Aみたいに普段着にトゲトゲプロテクターといういでたちをされても困るけれども。サモスは長髪の間から鋭い眼光を見せてメタラー然としたルックスだが、定位置で黙々とギターを弾く。曲も演奏もいいので盛り上がるんだが、どこか冷めた風な印象を受けた。
 しかし、1st再現のために合流した初代ドラムのファウストが殺人の前科持ちのため来日できず、日本公演のみ2nd以降のメンバーだったタリム(こちらもMCを聞く限り“トゥリム”という発音のほうが近いと思う)がドラムを担当し、正確ながらも同時に凄まじくアグレッシヴなプレイを見せてくれた。プレイ的には微妙なファウストよりもすさまじい演奏をしてくれるため、日本だけラッキーだったといえばラッキーだったのかもしれない。勿論「ファウストのあのもたることが如何にもアンダーグラウンドってな雰囲気があっていいんだよ!」という意見も尤もだとは思うけれども。
 そして、なんといっても今回のツアーにヘルプで帯同しているZYKLON(サモスのバンド)のベーシストであるセクトデーモン(こちらもMCを聞くと“セクスダモン”に近い発音かと)が、見栄えのするルックスでガンガンヘドバンをかましつつ、ドスの利いたグロウルでコーラスも取っており、正メンバー達より目立っていた。ついDIE YOU BASTARD!のライヴでのスーパーヘルパー信二さん(現:DISGUNDER)を思い起こしてしまった。またやはりヘルプで参加しているキーボードのエイナル・スーベルグもステージの隅っこのほうながら、セクトデーモンとは対照的な良く言えばマイケル・シェンカー風、悪く言えば寂しい頭髪状況ながらも派手に頭を振り乱しながらあの冷ややかで荘厳なサウンドを奏でつつ、セクトデーモンとともにコーラスを取っていた。このヘルパー二人が大いに目立つことで会場を盛り上げていたと思う。
 それにノセられるかのように、イーサーンも客を煽りだしたりして、フロアーではモッシュが起こったりもした。最近はともかく、どうしても初期のブラックメタルとなると、ユーロニモスが標榜した「No Mosh、No Core、No Trends、No Fun」を純粋に守ろうとする人がいるため「モッシュはご法度」という印象があるが、イーサーンはモッシュが起こってる様子を見て満足そうにニコニコと笑っておられた。実際、ユーロニモスも単にデスメタルと明確な差別化を図るためのマーケティング戦略で言い出したことであって、そこまで本気で言っていたわけではないらしい。その辺りのギャップが災いして、真性でガチガチの原理主義者であるヴァルグ・ヴィカネス(BURZUMのカウント・グリシュナック)に殺される羽目になったのかもなぁ、などと思ってみたり。
 おれ自身もどこか冷めてる風に思う一方、やはりブラックメタルの歴史上最も意義のあるアルバムのひとつである「IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE」の楽曲群を聴かせられては興奮しないわけがない。1曲目の「Into The Infinity Of Thoughts」ではヘドバンをしまくり、3曲目の「Cosmic Keys To My Creations & Times」のイントロが奏でられると思わず「うおおおお!宇宙鍵ーっ!」とこの曲に付けられた変な邦題を叫んでしまった。4曲目の「Beyond The Great Vast Forest」が始まった時もやはり変な邦題である「巨森越え」を叫ぼうとしたものの、一方で冷めている風なおれの心が「きょしんごえ」と読めばいいのか、それとも「きょもりごえ」なのかよくわからなかったことを感じさせたので、叫ぶのをやめた。
 そしてハイライトはやはりEMPERORの曲の中でも名曲の誉れも高い「I Am Black Wizard」(さすがに邦題の「我は黒魔術師なり」とコールする気にはならなかった)ではフロアーからも一際大きな歓声が上がり、このあまりにも荘厳な音の海に身を委ねた。フロア前方ではクラウドサーフなども起こっており、20年の時を越え日本に降臨した闇の皇帝に生贄を捧げるがごとく、ステージに向かってサーファーが運ばれていった(勿論、ステージには上がれなかったが)。
 この曲が終わると、「IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE」にはもう1曲しか残っていない。イーサーンが「インノゥー!」(陰嚢ではない)とコールすると、こちらもあらん限りの声を振り絞って「サタナアッー!!」と叫び返す。そして本編最後の「Inno A Satana」が演奏されステージからメンバーが去っていった。
 勿論、こんなんで満足するわけがないフロアーからは「EMPEROR!EMPEROR!」とアンコールを促すエンペラーコールの大合唱。そしてさして待たされるわけでもなく、すぐにステージに再登場したEMPERORの面々は「Ancient Queen」を演奏。どうやら「IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE」の20周年記念盤のボーナストラックに収められていたようだ。おれは20周年記念盤は所有していなかったものの、デモ音源集「EMPEROR」と「WRATH OF THE TYRANT」のカップリング盤でチェックしていた。まぁ、なんともあっさりした曲であっさり終わったため、フロアーは虚を突かれたようになっているが、バンドは構わず「Wrath Of The Tyrant」を演奏。おれはこの日「WRATH OF THE TYRANT」のEPのジャケット柄のTシャツを着ていたので、気分は厭が応にも上がってゆく。CDで聴くプリミティヴブラック的なチープな音と違い、ライヴでは非常にクリアで力強い音で演奏されて新たにこの曲の魅力を再確認する。「いやいやいや、素人はコレだから。プリミティヴ・ブラックってのはあの劣悪な音質にこそ見出すべき価値があるのであってだなー」という意見も尊重はするけれども。
 そしてイーサーンが「クォーソン(クォートンと発音しているように聞こえた)に捧げる」とMCし、BATHORYのカヴァー曲「A Fine Day to Die 」の静かなイントロのアルペジオが奏でられると、目の前にいるBATHORYのTシャツを着ている背の低い外国人男性が振り向いて、おれに向かって己のTシャツを指さし「BATHORY!BATHORY!」と興奮しながら口走っていた。おれが彼に「Quorthon is genius ! BATHORY is The Greatest Band!」と声をかけるととても嬉しそうに飛び跳ねていた。イーサーンの咆哮とともにシンプルで印象深いリフが刻まれると会場が一気にヒートアップし、この日の最後の曲に酔いしれた。
 公演前は日本のみ単独公演でタリムがドラムということで「1stの再現だけでなく、2nd以降の曲も何曲かやるのでは?」と噂されていたが、結局は海外フェスのセットリストと全く同じセットでの公演となった。イーサーンも当初は何曲か考えてはいたらしいが、やはりEMPERORの曲は複雑怪奇な構成のため、セットを複数にするとリハーサルに時間を掛けなければならないだろうし、タリムは実質ミュージシャン業を引退しているため、時間もなかなか取れないとのことであった。しかし、とても引退したプレイヤーとは思えない凄まじい演奏であった。
タリム「EMPEROR 日本公演に向けてのリハーサル」

 
 とは言え、一方で冷めている自分がいるというのもまた事実なわけで。やはり、これはこの再結成EMPERORは、あのブラックメタルのEMPERORとはまた別のものであるという事実が突きつけられたからであろう。「モッシュなんか起きてて気分が悪かった」「イーサーンのメガネはどうにかならんのか?」という意見もちらほら聴かれたし、やはりEMPERORが現役時代に纏っていたであろう禍々しいオーラというものは全く感じる事はできなかったので、EMPERORの持っていたブラックメタル的な要素を期待していた向きには到底満足のできないものだったのだろう。
 しかし、ヘヴィ・メタル・バンドEMPERORとしてみれば、本当に素晴らしいライヴだったわけで、あのニコニコと笑うイーサーンをみることができたのも嬉しかった。ある意味、ブラックメタルという呪縛から解き放たれた公演を体験できたわけであり、今後また再結成され、2ndや3rd、4thの曲を演奏するライヴが日本で観られるのかどうかは分からないが、その機会に恵まれれば、純粋にメタルバンドとしてのEMPERORを楽しむことができるのではないかと期待している。
EMPEROR 「The Burning Shadow of Silence」(東京公演)

EMPEROR 「Cosmic Keys To My Creations & Times」(東京公演)


 公演終了後、汗だくのまま夏の夜の道玄坂を歩き、駐車場に停めていた車に乗り込む。明日は朝から仕事なので早く帰って休もうと思い、家に向けて出発。途中、横道から黒塗りフルシルエットの一桁ナンバーのキャデラックが前に出てきて、なんだかやだなぁ、QUIET RIOTの「Slick Black Cadillac」は好きだけどさぁ、などと思っていると、後ろからパトカーが。なんでこんなイヤーな車に前後挟まれてんだよ、とオセロの石になったような気分になるが、首都高に乗ろうと高樹町インターの手前まで差し掛かった時に後ろから「前の車、停まりなさい!」との声が。あのキャデラックはヤバイ車なのかな、などと思っていると「そこの水戸ナンバーの軽自動車、左に寄せて停まりなさい!」……ええっ?おれかよ!?インターに入るのに片側3車線の一番右のレーンを走ってたというのに、一番左のレーンまで車線変更して、停車。パトカーから二人の警官が出てきて窓を開けるように促される。
QUIET RIOT 「Slick Black Cadillac」US FESTIVAL

※大ヒットアルバム「METAL HEALTH」収録のゴキゲンなR&Rナンバーで、QRの中で一番好きな曲。作曲はランディ・ローズで、彼が在籍していた頃に出た2ndアルバムにも収録されている(勿論、ギターはランディ!)。

 警官いわく「免許証見せて。なんで停められたか分かる?ナンバー灯が切れてますよ。整備不良です」とのことで、車を出て、リアのナンバー灯の確認をさせられる。テールランプやブレーキ灯ならともかく、ナンバー灯なんて気づくかよぅ、トラップじゃねえか、などと思いつつ車から出てきたおれであるが、傍目から見ると汗だくで長髪の色白で黒尽くめ(しかもTシャツの柄がこれ)の男だったので、警官もおそらく「こいつは今話題のアレを所有しているのでは?」と思ったのだろう、切符を切るのをやめて、職務質問に入った。「整備不良には気付いてなかったようなので、故意ではないのでしょう。これは不問にしますので、明日にでも付け替えておいてください。あと、車の中を見せてもらいますのでご協力をお願いします」と、車内を引っ掻き回しだした。職務質問の用件は『警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。』ということが法で定められているのだが、整備不良も犯罪とはいえない間でも行政罰相当の反則ではあるし、それを見逃してもらった立場としてはまぁ断れないなと思いつつも、何も出てこないことは明白であったので凄まじく余裕ではあった。とは言え車の中を弄くり回されるのはやはり気分のいいものではない。「いや、形式的なものですから」「今、都内は結構物騒なんで」と一人の警官が言い訳する一方で、もう一人警官が黙々と車内を荒らしていく。言い訳している警官も財布を見せろなどというので見せてやると、「他人名義のカードなどは持っていませんか?」などと完全に犯罪者扱いである。しかし、清廉潔白なおれはそんなものを持っているはずもない。警官が業を煮やし、もう一人に「なにか出てきたか?」と問うと「ダメです、CDしかありません!」との答えが。「ダメです」ってなんだよ、もう何か出てくるの前提じゃねえか、と呆れる。警官からすれば、車から出てきたおれを見てさも警ら中に田代まさしや清水健太郎のようなボーナスキャラにでも出くわしたかのような期待感があったのだろうが、お生憎様である。まぁ、他県ナンバーのしかも軽自動車なんぞでわざわざ都内の繁華街に来るような奴はまともではない、何かそういうものでも仕入れに来た商売人なのであろうと推測したのだろうけれども。
 何も出てこなかったので警官も下手に出て「すみませんねえ、ご協力ありがとうございました、被災地の様子は今でも大変ですか、頑張ってください」などと言って、ようやく身柄が解放された。このあとナンバー灯の整備不良で停められてもいいように、言い訳警官の身元を確認。渋谷警察署の●●巡査ね、と。停められたらこの人に確認するように手はずを整えて出発した。
 やれやれ、と思いつつ首都高に乗り走っていると、やたらに左レーンが混んでいる。箱崎で隣のレーンに合流しないとなぁと思って左ウィンカーを出すと、なんと目の目の前で事故処理を行なっており、合流できない状態に。警官が出てきて「すみません、左に行くんですか?この事故車の前のスペースが空いてるんで、そこから入ってください」と誘導される。なんだかなぁ、ブラックメタルの呪縛から解き放たれたと思ったら、別な呪いでも掛けられたのかな、などと思いつつ、這々の体で家路に急いだのであった。


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