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「LOW IQ, High Energy」 by TOMMY LEE

 「ヘヴィ・メタルはやっている方も聴いている方もIQが低い」
 このような記事が今は亡き「ポップギア」という雑誌に掲載され、物議をかもしたことがあった。当然、へヴィ・メタルの媒体であるBURRN!誌上でこの記事が徹底的に叩かれたのは言うまでもない。この記事を書いたNさんは上智卒のインテリなんだぞ、という反論がなされた時は、折も悪くB!編集部に東大卒の広瀬氏(現在は編集長)が入ってしまっており、学歴によるIQ云々に関しては分が悪い発言となってしまったのであった。だいたい、ポップギアにもポイズンだのマイケル・モンローだの、当時は頭の悪そうな(悪いのではない。あくまでも悪そうな印象があるという共通認識が存在していたということなので、誤解なきよう)メタルにカテゴライズされていた方々が表紙を飾っていたりしたので、メタルも聴くというポップギア読者からも反感を買い、さらにNさんがCHEAP TRICKの追っかけをやっていたというあまり頭のよさそうでない過去があったため、この発言は有耶無耶にされてしまい、御大伊藤政則大権現の「MOTLEY CRUEのトミー・リーが己を評して『Low I.Q, High Energy』という発言をしたが、こういう本質的でシニカルなことが言える人を決して頭が悪いとは思わない」という言葉でこの問題は終息したのであった。
 Nさんが「メタルはIQが低い」とマスメディアで発信してしまったのは非常に悪手であったことは間違いないのだが、彼女がそのように思ってしまったこと自体が果たして不当かと言うと、そうとばかりは言えないのも事実である。いや、何もおれはメタル関係者が全員IQが低いと言いたいわけではない。しかしヘヴィ・メタルという現象そのものや、メタルミュージシャンやファンがメタルを楽しんでいる様を第三者の目で見た場合、「この人たちは頭がイカレているのではないか?」という感想を持つことはある程度仕方がないことなのではないかと思うのである。
 頭の良し悪しを測るために学歴を持ち出すことは、政権交代時の鳥類の名前を持った総理大臣(東京大学卒)のおかげでいささか不都合なことになってしまった感があるが、先述のとおり、Nさんを擁護する側が学歴を持ち出してきたために、メタル雑誌の編集者の学歴を以って返り討ちにすることは有用だったわけである。メタル愛好家の中にも普通の人もいれば、余り頭脳を行使することが得意でない方もいるだろうし、また、かつてこのブログでも紹介したように、SIGHの川嶋さんやDr.MIKANNIBALさん、元・凶音のメンバーの皆様方など、やたらに高学歴なインテリゲンツィアがこの界隈にも少人数ではあるが存在する。確かに、この方々は勉強ができるというだけでなく、実際に非常に頭の良い方々なのであろうことは間違いない。特にミカンニバルさんなどは物理学者という、純粋に頭脳で以って仕事が評価される職業に従事しているのである。そんな彼女でさえ、下世話な雑誌(はっきり言えばペキンパー)に登場するときは、淫語だらけのインタビューの受け答えをし、イロキチガイのようなキャラクターを前面に出している。凶音にしても、彼らの素性を知らない人間が「黄泉メタル(彼らが自称したジャンル名)」「マガネ・アタック(アルバム名)」などという単語を見て「こいつらアホだ」と思ってしまっても、その人を責めるのは如何なものかと思うのである。実際にバカでなくても、バカに見えてしまうのがメタルなのであり、むしろ彼らの多くは積極的にバカになっている感すらあるのである。
 メタルの中でも特にインテリとされているIRON MAIDENのシンガーであるブルース・ディッキンソンなども、メタルを離れているときは旅客機のパイロットを務めたり、旅客機のメンテナンス会社の経営をしていたり、世界的なIT企業の基調講演に講師として出演したり、ディスカヴァリーチャンネルの番組で戦車や電車について解説したりと、八面六臂の活躍をしているが、メタルシンガーになっている時はまるでお猿さんのように振る舞い、とてもインテリには見えないのである。

 かつて、歌手の美輪明宏氏も「ヘビメタなんか聴くと頭が悪くなるわよ」と言っていた。通常時の頭の良し悪しにはそれほど影響しないとは思うが、確かにメタルに接している間は確実にバカになってしまう。「恋は盲目」などという言葉があるように、恋愛をしている人間は傍目で見ると通常の状態では考えられないような行動をとることがあるが、それは脳内でドーパミンという向精神作用のある物質が分泌されているためである。メタル向きの人間にとっては、メタルが引き金となってドーパミンが多く分泌されてしまうのであろう。おそらく、他の音楽を楽しんでいる人も好みの音楽を聴くと同様の状態にはなると思うのだが、とりわけメタルはその作用が強く働いてしまい、異様に頭の悪く見えるような行動を取ってしまうのかもしれない。先述の方々のようなインテリゲンツィア連中はもちろんのこと、それ以外の普通の人も、メタルモードに頭脳が切り替わった途端にバカになることは間違いないのである。そう、インテリだろうと普通の人だろうと、平素から頭の悪い人だろうと、メタルを楽しむ空間に於いては、皆等しくバカになるのであった。

 それを克明に記録したドキュメンタリー映画がある。その名も「HEAVY METAL PARKING LOT」。題名のとおり、へヴィ・メタルのコンサート会場の駐車場の様子を撮影したものであり、そこにいる人たちにインタビューをしているだけの何の変哲もない映像である。製作したのもアメリカの一地方の小さなケーブルテレビの番組を作っていた2人組。しかし、明らかにその瞬間、世界中で最も多くのバカが集結している空間になっていることは疑いようがない。なんといってもそのコンサートが、メタルの神たるJUDAS PRIESTのライヴであり、アメリカにおけるメタル全盛期の1986年の模様なのである。
「HEAVY METAL PARKING LOT」


 イングランドのサッカー場などでも如何にも頭の悪そうな粗野なフーリガンたちが暴動寸前のような興奮状態で喚き散らかしている様が見られるが、それとはまた違った異様に平和でなおかつ異様に頭の悪い様子が見て取れる。
 その中でもとりわけ頭が悪そうで、世界中のこの動画を見た人たちから一番人気なのが、9分頃から登場するゼブラ柄のコスチュームに身をつつんだ若者、通称「ゼブラマン」(哀川翔主演の特撮映画との関連性は不明)と呼ばれている男である。マリファナでも吸っているかのようなトロンとした目付きは他の連中と何ら変わらないが、如何にも善良そうな表情から、さして凄みのある口調というわけではないが、目いっぱいドスを利かせようとした口調でメタルを賛美し、パンクとマドンナをこき下ろすスピーチをしている。
「It sucks shit! Heavy metal rules! All that punk shit sucks! It doesn't belong in this world, it belongs on fuckin' Mars men, what the hell is punk shit? And MADONNA can go to hell as far as I'm concerned, she's a dick」
 もう、拍手喝采ものの途轍もなく頭の悪いスピーチである。パンクを「Punk」ではなく、必ず「Punk shit(2ちゃんなどでいう所の“パン糞"そのまんまである)」と呼んでいるところもポイントが高い。途中でマイクを歯にぶつける間抜けさも彼の人のよさを物語っている。それにしても「この究極に腐れたパン糞の居場所なんかこの地球上のどこにもないから、いっそのこと火星人の仲間になったらどうなんだ?」などという文言が、よくもまぁあの普通ではない精神状態からひねり出せるものだと感心する。それほどまで彼はパンクを憎んでいるのだろう。当時のパンクは日本のジャパコアのような例外を除くと、実際の自分より頭を良く見せようと頑張っていた人が多かったと思う。ロッキングオンなどでも渋谷陽一氏がやたらに「パンクのミュージシャンはさ、頭いい人が多いよ。ジョン・ライドンとかジョー・ストラマーなんかは実際はインテリだからね」などと喧伝していた記憶がある。USパンクでもジェロ・ビアフラなどが政治的なメッセージを出していたため、ミュージシャンのみならず聴き手側のパンクスにもある程度インテリめいた言動して、その暴動めいた行為をあくまでも世の中の不条理、ひいてはそれを作り出した権力者を攻撃するためのものであるという裏づけになるロジックや行動原理を作らなければならないという、一種の強迫観念のようなものがあった。
 一方のメタルといえば、ライヴ会場での暴力的なノリこそはパンクスと似たようなものがあるのだが「サンセットストリップでおねえちゃん引っ掛けて、朝までドライブしようぜ~」みたいな軟派な歌詞か、「地獄の炎に包まれた悪魔がおまえたちを八つ裂きにする」みたいな現実離れした歌詞か、「他のバンドは演(や)るが、マノウォーは殺(や)る!」というわけのわからないものまで、とりあえず「頭悪そう」という共通項を持ったことを歌い、またそのファッションも、パンクのようにファッションカルチャーのメインに食い込むようなことのないキワモノ的なものだったことから、一般人からはともかく、本来は反社会的であればあるほど評価されるべきパンクスにさえメタルは蔑まされることになり、それを一身に受けた当時のメタルファンは、さぞパンクに対して憎悪の炎を燃やしたことであろう。そうした通常の生活で受けた様々なゼブラマンへの抑圧が、この同好の士が集まるコンサート会場の駐車場という舞台、ライヴ開始前の期待感による高揚感と飲酒による酩酊感がない交ぜになったシチュエーションによって、このような言葉を吐き出させしめたのであろう。
MANOWAR 「Kings Of Metal」

※善しにつけ悪しにつけ、メタルそのものを体現しているMANOWAR。「Other bands play, MANOWAR kill!」という歌詞に対し「他のバンドは演(や)るが、マノウォーは殺(や)る!」という名翻訳を思いついたときの翻訳家の達成感は如何ばかりのものだったか計り知れない。


 このゼブラマンのキャラクターを筆頭に、この映画そのものがカルト的な人気を得、このケーブルテレビの番組を録画したテープが海賊盤として出回った。NIRVANAのツアーバスでもヘヴィローテーションで何度も何度も鑑賞され、過酷なロード生活を乗り切ったという。カートとクリスはこのバカなメタルヘッズたちを嘲笑することで心の平安を得、デイヴは愛すべきメタルヘッズたちに共感を覚え楽しんでいたのかもしれない。メタル好きもメタル嫌いも、それぞれ違った立場でこの作品を楽しむことができるわけだ。
 映画関係者の間でも人気を呼び、ダビングにダビングを重ねた粗悪な海賊盤の氾濫に業を煮やしたソフィア・コッポラが製作者に直接連絡を取って、マスターテープからダビングしてもらって、ある程度画質のいいものを手に入れ、その従兄弟のニコラス・ケイジまでこの動画にハマるという状況になり、遂に正式にDVDで商品化されたのがあのコンサート以来15周年(16年目)となった2002年。それにそれから10年を経て日本でもDVDで商品化されるに至った。
 DVDでは15分程度の本編の他、どうでもいいような製作者が作った他の映像も含まれているが、なんといっても15年後のあの駐車場にいた面々を追いかけたドキュメンタリーが面白い。これを見て思ったのが、その後もメタルを好きでい続けた面々の若々しさが印象的であった。一方それほどメタルに熱心でなくなった面々はすっかり落ち着いた姿とは対照的であった。あのゼブラマンの15年後の姿も登場するが、彼がどのようになっていたかはDVDを見てのお楽しみである。また、ロブ・ハルフォードもこの映像についてのコメントを求められており、ロブに会ったらどうしたい?と、あの駐車場で訊かれた女性ファンが「押し倒す!」と答えたことについた訊かれたときの答えがまた最高なので、是非ご覧になっていただきたい。
 
 ……かつて日本でもパンクとメタルを対立させて見世物にしてやろうというテレビ番組を、こともあろうに公共放送局であるところの日本放送協会、すなわちNHKが制作し放映したことがあった。インタビュー映像ではメタル愛好家が論理的に何故メタルを愛しているのかを説明しようとし、一方のパンクスは「とにかく、パンクは来るんだよ。クる!」と直情的にパンクへの愛を表明するなど、先述の「メタルはアホで、パンクは利巧ぶらなければならない」という大前提をいきなり崩されるわけだが、このとき集められたパンクスの多くがジャパコアという日本独特のジャンルの方々であったのが大きい。先述の如く、彼らは「例外」的な存在であり、彼ら自身の手によって既にパンクという壁を取り払っていたため、ゼブラマンたちが経験したであろうパンクとメタルの敵対がここ日本には既に存在していなかったのであった。ジャパコアミュージシャンの中にはG.I.S.Mのランディ内田さんや廣島さんをはじめとした「この人、絶対メタルやってた人でしょ」と如実にわかる人も多くいたことからも明らかである。当然、この番組のためにスタジオに集められた賢明な日本のパンクスとメタラーは、この対決軸を作ろうとしているNHK側の浅はかな考えを見抜き「こんなの意味ないよ」ということで一致し、番組の構成はグダグダなものとなり、司会者であるエコーズの辻仁成氏がバツの悪い思いをし、大体コメンテータのお二方、メタル側として呼ばれた伊藤氏とパンク側として呼ばれた大貫氏がとても仲良しであることはメタラーもパンクスも良く知るところであり、いちいちそんなことで対立させようとするなという結論に達した。まさかこのときパンチ合戦の解説映像が流れた後に「サイコビリーをバカにすんなよ」とご立腹だったRIKIさんのSCAMPと対バンすることになるとは、世の中わからんものである。閑話休題、というわけで日本では「パンクとメタルを対立させるのはおかしい」とパンクスとメタラーの双方が言っていたのだが、海の向こうではゼブラ柄の意匠に身を包んだメタルヘッドが「糞パンクなんか地獄に落ちちまえ!」と怪気炎を吐いていたのであった。この間5年の開きがあったため、もしかしたら番組制作者がゼブラマンのパンクをこき下ろす映像を観てしまったためにこの番組の制作を思いついてしまったのではないだろうか?……ないな。うん。
 いずれにせよ、決してヘヴィ・メタル・パーキング・ロットのような平和と愛に満ち溢れた空間ではなかったが、あのいなたい雰囲気の中、それぞれがそれぞれの好きなものを追求して、くだらない争いをするように載せられるなんてゴメンだという意見を誰に強制されたわけではなく、自らの意思で導き出したメタラーやパンクスたちに幸多からんことを。


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(2013/02/06)
ジューダス・プリーストのコンサートに集まったファン

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※メタル好きメタル嫌いに関わらず、何かを猛烈に「好き」である人ならば、必ず共感できる作品であると信じたい……が、ここまでバカ丸出しだと難しいかも。
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