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GUNS N' ROSESのカヴァー選曲 後編

 前回の続き

 年末年始の仕事のゴタゴタで更新もままならず。それに加え、年末の新大久保での我々のバンドのライヴでは、前年に引き続き帯同したシュンさんが負傷し、救急車で搬送されてしまうという波乱もあり、おれも新年早々、業界団体の新年会で泥酔して、二次会場のラウンジから車椅子でホテルの部屋まで運ばれるなどの凄まじい恥をかいてしまった次第である。言い訳をさせてもらえるとすれば、一次会でビールを飲もうとしたら、それが発泡酒であったことに絶望し、赤ワインを喇叭飲みしてしまったのがいけなかった。あれがビールだったならば、そんな無茶はしなかったのである。

 と、アクセル・ローズには程遠いプチ乱行を披露したところで本題に入る。

 廊下であっさりと体力を回復させたおれは、最後列のドアからフロアーに入った。やはり後ろの方では壁にもたれかかってリラックスしながらライヴを楽しんでいる方が多い。最前付近の混雑状態とは大違いである。このあたりではバラードが立て続けに披露されていたのもあるだろう。このときは「Don't Cry」が演奏されていた。曲が終わるとインストのジャムがひとしきり演奏され、そしてTHE WHOのカヴァー曲「The Seeker」になだれ込んだ。
この曲はシングルのみで発表されていた曲で、「MEATY,BEATY,BIG AND BOUNCY」のようなコンピレーション盤に収録されている。最近は旧譜のリマスターのついでにシングルコレクションなどもリリースされ、以前よりは聴き易い状況になった。とにかく、日本に於いては知名度と扱いがまるで一致しないグループであったTHE WHOだが、初来日以降は徐々にだがそういった状況が良くなっている感じはす。おかげで学生時代に苦労して買っていたTHE WHOのアルバムが豪華版で再発され、お値段もそれほど変わらず、収録曲が倍以上になっていたりするのだから、なんとも複雑である。「The Seeker」はちょっと前にやたら軽々しく用いられていた「自分探し」的な内容の曲であるが、これは1970年の曲であるからして、「自分探し」ブームの時に出されていた似たような傾向のものとはモノが違うのである。アクセルにまつわるゴシップのひとつに「90年代前半に行なった逆行催眠によって、自分が養父に性的に虐待されていたことを知った」というのがあったが、そういった「逆行催眠」などというものをやってしまうのも、アクセルが自分のレゾンデートルを捜し求めていた結果なのだろう。本人はその催眠で呼び覚まされた記憶こそ真実だというような物言いをしていたのだが、それが本当に呼び覚まされた記憶なのか、催眠によって作り出された記憶なのかは我々の知る由ではない。
THE WHO 「The Seeker」


 次のカヴァーはライヴ本編も終盤になって演奏されたボブ・ディランのカヴァー「Knockin' On Heaven's Door」である。これは80年代からガンズのライヴではお馴染みのカヴァーで、88年にMTVで放送されたクラブ・リッツでのライヴでも演奏されている。その後発表されたアルバム「USE YOUR ILLUSION II」にスタジオ録音版が収録された。また自分たちのライヴだけでなく、92年にウェンブリーで開催されたフレディ・マーキュリー追悼コンサートでもGUNS N' ROSESという形態では2曲のみの演奏であったにも拘らず、このカヴァーを演奏してしまったという大胆さにはさすがに恐れ入ったものである(もう1曲はオリジナル曲の「Paradise City」)。この曲の思い出といえば、前述のリッツでのライヴを当時TBSで放映されていた「PURE ROCK」というへヴィ・メタル専門番組でも何曲か抜粋という形で放送したのであるが、この曲も取り上げられていた。そこで、番組に出演していたメタル評論家のキャプテン和田こと和田誠氏が、「この曲はボブ・ディランのカヴァーですけれど、彼らはエリック・クラプトン・ヴァージョンを下敷きにしていますね」などと言っていたのにはビックリした。たしかにクラプトンもこの曲をカヴァーしていたのであるが、クラプトンのはガンズのには似ても似つかない全編レゲエアレンジのカヴァーだったからである。このオッサンは何を言ってるんだ、だから後になって「生まれはオランダでも心はジャーマン」とかワケワカラン事書いてBURRN!から干される羽目になるんだ、と呆れてしまったのだが、話はここで終わらない。ガンズの「Knockin' On Heaven's Door」は確かにこの当時はロッカバラード風に演奏されており、後のスタジオ録音版も大して変わらない感じだったのだが、「USE YOUR ILLUSION」リリースに伴うワールドツアーからは、中間部がレゲエアレンジになったのである。当然、同時期に行なわれていたフレディ・マーキュリー追悼コンサートでもレゲエパートを途中で挟み込むヴァージョンで演奏されていた、そして20年の時を経た今回のライヴでは「完全なレゲエ」とは言えないまでも、全編に渡ってレゲエ的なまったりした雰囲気のある曲に刷新されていたのである。クラプトン版に似ているかといえば決して似てはいないのだが、レゲエという方向性の一致は確かにあったといわざるを得まい。もし、キャプテンがリッツでの演奏からその匂いをかすかに嗅ぎ取って「コレはクラプトン版が元になっている」と喝破していたとしたら、なかなか凄いことだったのではないかと戦慄したのであった。
 GUNS N' ROSES 「Knockin' On Heaven's Door」88年リッツ公演

※この演奏をキャプテン和田氏は「クラプトンヴァージョンを元にしてる」と大胆に言ってのけた。当時は戯言だと思っていたのだが… ちなみに曲紹介の字幕を見る限り、これは「PURE ROCK」で放送されていたものを録画した動画であろう。4:3の画面の上下を切って16:9にしているようだが、この画面の上の方の切られた部分には、放送時に時折「天皇陛下の容態については情報が入り次第お伝えします」という字幕が出ていたのであった。

 GUNS N' ROSES 「Knockin' On Heaven's Door」92年フレディ・マーキュリー追悼コンサート

※7分過ぎあたりに短いレゲエパートが入っている。また、導入部で演奏されているのはアリス・クーパーの「Only Woman Bleed」。おれが高校のときに観に行ったドーム公演と同じようなアレンジだが、そのときはストーンズのロン・ウッドが飛び入りしての演奏であった。

 GUNS N' ROSES 「Knockin' On Heaven's Door」12年ロック・イン・リオ

※昨年のロックインリオ。東京公演と同じアレンジであるが、あまり声が出ていない感じである。東京公演のアクセルは最初の2,3曲を除けば絶好調であった。ここまでゆるいアレンジになると、さすがにかつてのキャプテンの言い分も無視できなくなった。

 本編ラストの「Nightrain」が終了したときには既に10時を回っていたが、勿論おれを含め観客はアンコールを求める。開演時間はおろか開場時間まで遅くなったことに配慮してか、それほど間をおかずにバンドは再登場。そして演奏されたのがニール・ヤングの「Don't Let It Bring You Down」。なんとも意外な選曲であるが、ガンズのカヴァー選曲の縦横無尽さを思えば、まだ納得の範疇であろう。ニール・ヤングの癖のある声も、アクセルの癖のある声と同じベクトルにあるように聞こえて来るから不思議である。「嫌なことがたくさんあるけど、めげてはいけない。逆境をはねつけている人がいるのを見れば君もきっと元気になれる」という歌詞の内容だが、現代っ子の鬱人間は逆境をはねつけている人間を見ると、却って「それに引き換え自分は本当にダメな人間だ」とますますダウナーに入ってしまうのである。それを踏まえたうえで、極度の双極性障害(俗にいう躁鬱病の極端な症状)とされるアクセルがこの曲を歌っているということは、とても興味深い。また、BUFFALO SPRINGFIELDやCROSBY,STILLS,NASH & YOUNGに於けるニール・ヤングとスティーヴン・スティルスの関係性にアクセルとスラッシュを重ねてしまうのはおれだけであろうか?
 ニール・ヤング 「Don't Let It Bring You Down」

※この曲の邦題は「ブリング・ユー・ダウン」。原題が「そんなことでめげないで」というような意味なのに、まるっきり逆になってしまう。AEROSMITHの「I Don't Want To Miss A Thing」も「(君のすることを)何一つ見逃したくない」という意味なのに、邦題が「ミス・ア・シング」なので真逆の「見逃せ」になってしまうというのもあった。まだ酷い邦題の代表的存在であるTHE WHOの「恋のピンチヒッター」の方が、一応意味は通っている分マシである

 AC/DCの「Whole Lotta Rosie」である。大分この公演ではカヴァー曲が多く取り上げられていたが、この公演最後のカヴァー曲である。これはガンズファンには馴染み深いカヴァーであろう。ガンズがはじめて全米1位を獲得したシングル「Sweet Child O' Mine」であるが、7インチのシングルヴァージョンは曲を短く編集したものだったが、その後、アルバムと同じヴァージョンのシングルが12インチの45回転盤でリリースされ、そのB面には「It's So Easy」のライヴヴァージョンとともにこの曲のライヴ・ヴァージョン(どちらもロンドンのマーキー・クラブ公演の音源)が収められていたのである。ちなみにA面の2曲目にはこれまた珍しい「Move To The City」のスタジオ録音版が収録されている。珍しいといっても「LIVE?!★@ LIKE A SUICIDE」や「GN'R LIES」に収録されている擬似ライヴ音源から歓声などを取り除くと、このシングルのヴァージョンの音源になってしまうだけなのだが。また、日本独自の企画盤としてリリースされ、べらぼうなプレミアがついた「LIVE FROM THE JUNGLE」というミニアルバムにも「Whole Lotta Rosie」のマーキー公演の音源が収録されている。それにしてもこの歌の歌詞は本当に酷い。当時のAC/DCのヴォーカリストだったボン・スコットの体験談を歌ったものなのだが、要は「ポチャ系の女はなんでもやらせてくれてサイコー!」っていう内容である。この曲で歌われているロージーという女性のサイズは「42、39、56」と歌われているが、これは単位がインチであるので、センチメートルに変換してみれば、まぁ、どのような体形かはよくわかる。ちなみに体重は「19stone」とのことだが、これもキログラムとして計算してみると、まぁ冗談としか思えないわけだが。とはいえ、英語のわからない日本人にとっては、究極に恰好いいロックンロールでしかないわけで、おれもこの曲のリフをよく練習していたものである。アクセルの女性の趣味を考えるとこの曲をジョークとして捉えているのだろうが、ボン・スコットは多分本気だったのではないかと思う。それくらい彼は狂気を秘めていたし、欲望に忠実な人間だったと聞く。だからこそ、あのような非業の最期を遂げてしまったわけだが。
 AC/DC 「Whole Lotta Rosie」


 ライヴはこのあと、「Patience」と「Paradise City」が演奏されて終了。時刻は11時ちょうどだったであろうか、3時間超のライヴであったが、30曲を超えるナンバーが演奏され、カヴァー曲も各メンバーのセルフカヴァーを除くと、8曲も演奏された。ガンズのブート盤などを聴くとストーンズの「Jumpin' Jack Flash」や、プレスリーの「Heartbreak Hotel」をメタルアレンジしたものや、New York Dollsの「Too Much To Soon」をオリジナルの要素を大いに残したカヴァーをするなど、ライヴでのレパートリーの広さには本当に驚かされる。カヴァーで腕を磨いたバンドは本当にライヴが凄い。様々なミュージシャンの要素を吸収した上でオリジナル曲を作るのだから、様々な要素が絡み合った奥の深い作品が作れるのであろう。人は1人で生きていくのではなく、他人からいろいろなものを学びとって、己を作り上げていくのである。新婚の友人に誘われたライヴで、そんなことをふと思うのであった。でも、やっぱ式の2日後に嫁さんを置いて遊びに行くのはまずいと思う。こういう事の積み重ねで家庭不和にならないことを切に願うばかりである。
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