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GUNS N' ROSESのカヴァー選曲 前編

 大学時代の友人が結婚した。おれよりも年上で、不惑の声も聞こえて来る年になってきたが、片がついて何よりである。しかし、おれはまだ独り身であるのだった。
 結婚式の3週間ほど前のこと、友人から携帯に電話がかかってきた。着信名をみて、結婚式で挨拶や何か余興でも依頼するつもりか?この日は仕事を抜けてくるので途中からの出席になるだろうし、繁忙期なので余興を練習してる暇などないから、いずれにしても断らねばな…、と若干気を重くして電話に出ると、意外な用件を切り出してきた。「あのさ、今度ガンズ来るじゃん。ライヴに行かないか?」
 さすがのおれもこれには呆れた。ガンズがZEPP東京で1回のみの公演を開催するのは知っていたが、問題はその日程である。「…正気か?ガンズのライヴって、あんたの結婚式の2日後だろ?」「当日じゃないんだから問題ないだろう?新婚旅行だって来月に行くしさ」「嫁は連れて行くのか?」「オールスタンディングのハードロックのライヴになんか、危なくて連れて行けねえよ」「しかし、新婚2日後に嫁を置いて遊びに出かけるのはどうかと思うぞ?これがきっかけで離婚とかになったらおれが気分悪い。許可は取ってんの?」「大丈夫。嫁も今目の前にいるが、行ってきなと言ってる。問題ない」何だか腑には落ちないのだが、取りあえずチケットが取れたらということで行くことにした。チケットはあっさり取れてしまった。
 
 初期メンバーがアクセル以外に誰もおらず(辛うじてUSE YOUR ILLUSIONから参加したキーボード・プレイヤーのディジー・リードは残っているが)、ギター3人、キーボード2人、ベース、ドラムという大所帯ということもあってか、GUNS N' ROSES、というよりは、アクセル・ローズのソロ・プロジェクトのような印象を持ってしまったが、実際にライヴを見てみると、意外にバンド・メンバー個人個人の見せ場があり、アクセル自身も彼らを単なる引き立て役ではなく、さすがに自分とは同格扱いとまではいかなくとも、バンドメンバーとして遇しているような感があった。個人的にはイジー・ストラドリンに何となく似た容貌のギタリスト、リチャード・フォータスのギャロッピングを駆使したソロが面白かった。ブライアン・セッツァーなどのロカビリーの要素がある音楽を演奏するギタリストならともかくも、ハードロックやメタルのギタープレイではなかなかギャロッピングを使うプレイヤーはお目にかかれないので、とても新鮮であった。
 90年代半ば頃より長い沈黙を経て、2001年のロック・イン・リオ出演で久々に大衆の前に姿を現してからというものの、その容貌の変化が取り沙汰されているアクセルではあったが、実際にステージに飛び出して来たときは「これ、アクセルのモノマネしてるただのオッサンだったらどうしよう?」と思わなくもなかったが、やはりあの声、身のこなしを見るとアクセル以外の何者でもなく、次第にそのオーラとカリスマ性に引き込まれていった。何より、あのロックスターが間近に見られたというのは何者にも代え難い感動であった。勿論、若い頃のスリムで誰が見ても憧れるような格好よさを見せ付けていた頃のライヴを見ていた人とは較べるべくもないのではあるが、20年ほど前に東京ドームの3階席の酷い音響の中で見た豆粒のような大きさのアクセルとは比較にならないほど素晴しい経験だったことには違いない。もっとも、あのときはあのときで、ダフやスラッシュがいるガンズとしては最後の来日公演であったし、東京に滞在していたストーンズのロン・ウッドが飛び入りしてきたりと、何だかんだ言っても見てよかったライヴではあった。
gunszepp01.jpg gunszepp02.jpg
※スタン・ハンセンではない。テキサス親父ならぬ、インディアナ親父といった風貌のアクセル。オッサンになって貫禄は勿論のこと、スターのオーラも充分。

 詳細なライヴリポートを挙げているサイトやブログなどはたくさん出てくるだろうから、今回はこのライヴで演奏されたカヴァー曲について書いてみる。
 今回演奏されたカヴァーはまず、PAUL McCARTNEY & THE WINGSの「Live And Let Die」である。この曲はガンズのアルバム「USE YOUR ILLUSION」に収録されていることもあり、ガンズファンにはお馴染みの曲である。大御所ポール・マッカートニーのナンバーで映画「007 LIVE AND LET DIE(邦題:007 死ぬのはやつらだ)」の主題歌ということで、ロックファンのみならず世界的に有名な楽曲であるが、現在でもマッカートニー卿は好んでライヴで演奏しているビートルズ解散後の彼の代表曲である。以前はガンズのライヴにもホーンセクションがあったので、原曲のようなゴージャスな雰囲気があったが、曲構成自体に大きな変化はないものの、ホーンがない分今回はとてもソリッドなハードロックナンバーという印象を受けた。マッカートニー卿のライヴでは一番大騒ぎになる曲だが、今回のライヴでも多いに盛り上がるカヴァーであった。
PAUL McCARTNEY 「Live And Let Die」

※老境に在ってもロックし続けるサー・マッカートニー。「007」の銃声をイメージして、この曲の演奏時には花火が上がる(屋内ではパイロ)のが定番。

GUNS N' ROSES 「Live And Let Die」PV

※メンバーの子供時代をフィーチュアしたPV。途中に「MISSING」と書かれたイジー・ストラドリンの画像が挿入されているが、彼が脱退したことを示唆したものだったのだろう。

 次のカヴァーはディジー・リードのピアノソロで披露された(他のメンバーのソロは、彼らのソロ活動やバンドのセルフカヴァーを披露しているので、それについては割愛)、LED ZEPPELINの「No Quarter」である。演奏が始まった時は、なんだか聞き覚えのあるフレーズだな、と思ったが、それがZEPのノークォーターだと気付いた瞬間は鳥肌が立ってしまった。今回はインストヴァージョンであったが、是非、アクセルのヴォーカル入りでも聴きたいものである。ZEPのライヴではジョン・ポール・ジョーンズの見せ場となっており、スタジオ盤でも7分くらいの長尺曲であるが、ライヴでは10分以上(場合によっては30分くらい)も演奏される。ガンズはストーンズとよく比較されていたが、それと並んでZEPと比較されるバンドであった。「キース・リチャーズとジミー・ペイジが同時に存在しているバンド」(恐らく、イジー=キース、スラッシュ=ジミー)などと、的を射ているのか外しているのかよくわからない喩えをされていたが、メンバーも事ある毎にZEPへのリスペクトを表する発言をしていた。例えば、スラッシュの「曲ができて、『うわー、これはスゲエ曲ができた。レッド・ツェッペリンよりいいぞ!』と思って録音したのを聴いてみると、『畜生、これはレッド・ツェッペリンの曲だった…』ってなっちまうんだよな」という発言などからは、如何に彼がZEPの影響下にあり、尚且つZEPがあらゆる形態の曲をやり尽くしてきたかがよくわかる。しかし、ストーンズのカヴァーだったら「Jumpin' Jack Flash」はガンズのライヴでも一時期よく披露されていたが、ZEPはおれの知る限りは演奏されていた記憶はない。今回のライヴのあとに最近のセットリストを見てみたが、ディジーのソロではこの曲が披露されているようである。最近はライヴ前にそのアーティストの曲を聴きこんだり、ライヴの傾向を予習したりすることをしなくなったが、予習をしなかったからこそ得られた意外性と喜びがあった。
 LED ZEPPELIN 「No Quarter」(映画「狂熱のライヴ」より

※73年のマディソン・スクエア・ガーデン公演。ジョンジーがメロトロンやオルガン、エレクトリックピアノなどを駆使するプログレ的ナンバー。8分15秒あたりでペイジが変な仕草をしているのは、テルミンを操っているためである。

 ライヴの中盤、アクセルがピアノを弾きながら歌ったのはPINK FLOYDの「Another Brick In The Wall」。先頃、元PINK FLOYDのロジャー・ウォーターズが2010年からPINK FLOYDの全世界で1500万セットを売り上げた2枚組のトータルコンセプトアルバム「THE WALL」を再現したライヴツアーを行ない、余りの好評ぶりに延長に次ぐ延長で、また来年もツアーを行なうとのことだが、この曲も「THE WALL」収録のナンバーで、先行シングルとして発売され、アルバムは1000万枚超えが当たり前でありながら、シングルはさほどヒットしないフロイドにしては珍しい全英・全米ともにチャート1位を獲得した曲である。
 曲の内容は、学校教育に反発する児童を描いたものであり、ウォーターズは“教師の質の低さや高圧的な態度が児童の教育意欲を削いでいる”という事でこの曲を作ったのだが、学校生活に於いて様々な抑圧を受けてきた子供達が教育を受けることを拒否する歌詞の内容から、「ウォーターズは、そもそも学校教育そのものが要らない、という事を主張している」と誤解され、対応に苦慮したという。いずれにせよ、アクセルが少年期にベイリー家という敬虔なクリスチャンの家庭に「ウィリアム・ベイリー」として育ち、自身も聖書に親しみ、教会に通い、聖歌隊に所属するという生活を送っていたのだが、実父であると信じていたベイリー氏は実は母の再婚相手で血縁関係に無い事実を知ってから、性格が荒れて学校でも問題児として扱われるようになり、教師や級友からも疎まれはじめ、様々な抑圧に耐えなければならない日々を送り「あんなにも神を敬ったのに、何一つ奇跡など起こしてくれなかった」と信仰を捨てるに至った。実父の姓ローズであることからウィリアム・ローズと名乗るようになった。そうしたアクセルの前半生と比較しながらフロイドの「THE WALL」聴いてみる(或いはこのアルバムを題材にした同名の映画を観てみる)と、この選曲もなかなか興味深い。
 PINK FLOYD「Another Brick In The Wall」PV

※余りにもこの教師をイヤミに描きすぎたことから、後に「The Final Cut」を作成したときに、この教師にも辛い経験があったことによる負の連鎖でこうなってしまった、という同情すべき過去の物語を描いた。

 続いてアクセルのピアノソロでは、エルトン・ジョンの「Someone Saved My Life Tonight」を歌無しの独奏が披露された。日本では「僕を救ったプリマドンナ」という邦題で有名なヒット曲だが、歌の内容からはどう考えてもプリマドンナは「僕」を自殺に追い込もうとしていて、自殺しようとした「僕」を止めてやったのはシュガーベアの方である。でもエルトンの性的嗜好からして「僕を救ったシュガーベア」という邦題ではシャレにならないのも確かであろう。実際、シュガーベアのモデルとされる伝説的イングリッシュ・ブルーズマンにして、ミュージシャン発掘の天才でもあるロング・ジョン・バルドリー(エルトン・ジョンの芸名は彼とエルトン・ディーンからとられている)も、あらぬ疑いをかけられては大変であろう。誤解がないように説明しておくが、エルトンをミュージシャンとして売り込んでやったことが大成するきっかけとなったことを、「僕を救った」という譬えにした楽曲ととして作った、ということである。
 アクセルのエルトンに対するリスペクトは昔から有名であり、フレディ・マーキュリー追悼コンサートでアクセルとエルトンがQUEENの「Bohemian Rhapsody」でデュエットしたというのも、そうしたアクセルの言動があっての実現だったのであろう。そんなアクセルがエルトンの曲を演奏するのは当然の成り行きなのであった。
エルトン・ジョン「Someone Saved My Life Tonight」

※本当に何を考えてあのようないい加減な邦題をつけられてしまったのかよくわからない名曲
  
 「Another Brick In The Wall」演奏中に、フロアの最前エリアの中央辺りにいたおれは突然息苦しくなり体調不良に陥って一旦フロアから退出した。仕事が忙しくこの日は全く食事を摂っていなかったのである。最近は肥ってきたので、空腹でも脂肪がエネルギーになるだろう、という甘い考えは通用しなかった。寒空の中で1時間以上開場が遅れたのを待っていた間に、無自覚のままエネルギーを消耗しており、そのままライヴで暴れていたので、恐らく血糖値が一気に下がってしまったのだろう。廊下に出ると涼しい風が心地よかったが、脚に力が入らず「これが老化か?」と思った。糖分が足りないと自己判断し、ドリンクチケットで三矢サイダーを購入。まさか車の運転のない状態でありながら、ライヴハウスのバーカウンターでソフトドリンクを買う羽目になろうとは。ドリンク代500円を考えると痛いが、アルコールだとカロリーがすぐに熱になって消費されてしまうので、背に腹は替えられず、サイダーを飲む。そして、アイスクリームの自販機が目に入ったので、さらにアイスを購入して喰らう。単純にエネルギー補充が目的の食事というのはなんとも味気ないものだが、あっさり体力が回復したことで拍子抜けしてしまう。やはり単純なエネルギー切れであった。これからはキチンと腹ごしらえをしてライヴに参戦することを誓った。
 それにしても廊下で聴くと非常に曲がはっきり聴こえる。やはり最前列付近はPAの位置や、観客の暴れっぷりによって、音が聴こえづらくなっているのは致し方ないのだろう。暫く廊下でアクセルのピアノソロの「Someone Saved My Life Tonight」と、ガンズの名バラード「November Rain」を聴く。廊下で酒を飲み談笑しながら演奏に耳を傾けている観客も多く、皆それぞれのスタイルでライヴを楽しんでいるのだなと思った。充分アクセルの姿を間近で堪能したので、あとはフロア後方でのんびりコンサートを楽しむことにし、フロア最後列付近のドアから再びフロア内に入っていった。

 後編に続く。

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