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ロックムービークロニクル

 7月の末頃だったろうか、たまたま深夜のテレビで「シネマ通信」を見ていたら、革ジャンを着たパンクファッションの色白で赤毛長髪の恰幅のいい影山ヒロノブみたいなオッサンともお兄さんともつかない男性が、ニコニコと愛想を振りまきながら映画の解説をしていたのを見た。誰かなと思っていたら、映画に詳しいヴィジュアルデザイナーの高橋ヨシキ氏だった。驚愕。いや、何年も高橋氏のご尊顔を拝する機会がなかったのだが、こんな人のいいパンク兄ちゃんみたいな風貌で愛想良くしているのを見て、以前見た氏とあまりにも様相が違っていてビックリしたのである。

 初めて氏を見たのは、CSで放送されていた「侵略放送パンドレッタ」でホラー映画の解説をしていたときであった。その頃の風貌はそこら辺にあるテキトーな服を着て、黒の長髪に小太り、まるで長州小力がサングラスをかけているような感じであった。随分前のことなので、その風貌の記憶がおぼろげになってしまっているが、確かそんな印象だった。パンドレッタは全て録画してDVD-Rに保存していたのだが、大地震で全て棚から落ち、その上にまた物が落ちてきたため、全て割れてしまった。よって、再確認できないのが残念である。氏は出演中、愛想なんてものを振りまくことはまったくなく、この世の全てを憎んでいるかのような態度で進行し、ダークなオーラがにじみ出ていた。冒頭の自己紹介で「こ、こ、子供も殴れば、女も犯す鬼畜」というようなことも言っていたのだが、ちょっと噛みながら言っていたのが印象に残っている。雑誌「映画秘宝」のホラー映画や「サウスパーク」に関する文章などで氏の存在は知っていたのだが、ある意味予想通りなキャラであった。

 一度実際に氏を見たことがある。2004年頃だったろうか。その日は何故か宛もなく電車に乗り、東京に行った。巣鴨で降りて「久しぶりに大沢食堂にでも行くか」と白山通りをてくてく歩いていたら、いつの間にか本郷の方まで行ってしまうというわけのわからないことになっていた。この日は夏の最中で暑かった。1人でいるのもなんなので友人を呼び出そうと電話をしたら「軽い熱中症になった。とても動く気にならん」と言われた。それほどまでに暑かったのだ。もと来た道を戻り、途中横路を入って大沢食堂を発見した。ゴッドハンド・マス大山総裁の愛弟子であるご主人が切り盛りしているこの食堂、以前行った頃は青果市場の方にあったのだが、東洋大学の近くに移転していたのである。一応それは知っていたのだが、おおよその見当で歩いていたら、見事に道を間違えてしまいエライ遠回りをしてしまったというわけだ。このとき初めて見る移転後の新店舗だったが、「カレーライス」と書いてある赤い幟は立っていたものの、店の入り口に暖簾が出ていなかった。旧店舗では夕方6時~深夜2時までの営業だったのが、移転してからは昼間もやっていると聞いていたので、5時ごろに行っても開いているだろうと高を括っていたのだが、見事にあてが外れ、夕方の営業は以前と同じく6時からだったようだ。このクソ暑い中1時間も待つのは嫌だったので、冷房の効いた電車に飛び乗り、新宿に向かった。西新宿でCD漁りをして、その後歌舞伎町のロフトプラスワンで何かイベントがやっていたらそこに潜り込もうと思ったのである。

 西新宿のレコード店を冷やかした後、そのまま大ガードをくぐって歌舞伎町に向かう。まだこの頃はコマ劇場が営業していた。そのコマ劇の向いの雑居ビルの地下にロフトプラスワンがあるのだが、ビルの入口のところにその日の演目が書き出されており、そこには『ロックムービー暗黒星』と書かれていた。ロック映画のイベント…これはドンピシャでおれ好みのイベントではなかろうか。ちょうど開場時間を少し回った頃だったので、これ幸いと階段を降りて行った。店内に入ると、客がおれ1人だった。たまたまこれまでは客が入るような企画に行っていただけのことなのだろうが、この状態は初めてだったので、些か動揺した。一応、ステージ正面のやや後方に陣取り、飲食物を注文して開演を待つことにした。開演までにポツポツと人が入って来たが、空席がかなり目立つ。そしてイベントが始まって、メインの出演者である音楽ライターの山崎智之氏が現れた。この人はある時期までBURRN!や炎でも毎月執筆していたフリーライターだったので名前は知っていたが、本人を見るのは初めてだった。スポーツ刈のような短く刈り込まれたヘアスタイルの音楽ライターらしからぬこざっぱりとした風貌で、短髪の頃の漫画家:萩原一至(BASTARD!の作者)にちょっと似ているなと思った。音楽ライターだの評論家だのは、伊藤セーソク氏他のメタル関係の方々のような小ぎたな、じゃない、ラフな長髪の方や、渋谷陽一氏のような「一体どこの国の人なんだ?」と疑問に思うような濃ゆい顔立ちの方だったりと、やたらアクの強いルックスの人ばかりの印象が強かったので、このような普通な感じの方だったのは意外に思えた。書いてる文章がかなり強烈で、インタヴューでオジー・オズボーンを怒らせたりした実績のある方だったので、余計にそう思えたのかもしれない。この方は帰国子女で、少年時代をイギリスで過ごしており、日本に帰って来た十代の頃、BURRN!の「ゲイリー・ムーア訳詞コンテスト」に応募して最優秀賞を獲得するほどのゲイリーファンで、ライターになってからも基本的に通訳ナシでインタビューするほど英語に堪能な方だが、ジャパネットの高田社長よろしく「CD」を「シーデー」と発音することがやたら印象深かった。その山崎氏の横にいたのが高橋ヨシキ氏だったのだが、氏の風貌は以前テレビで見たときのものとは違っていた。金髪の長髪で痩せており、目の下には隈ができていて、以前にも増して漆黒のオーラを纏っていたのである。

 イベントは「ロックに関係のある映画について、いろいろ語っちゃおう」という至極単純なもので、出演者が作った解説用の映像を観ながら、その作品について語るという構成である。しかし、これは事前の打ち合わせ等がかなり足りなかったのは明白で、進行がgdgdで非常にテンポが悪く、また出演者も準備不足は明らかでそれぞれの解説もイマイチわかりづらく、なかなか観ていて辛いものだった。途中で退席する観客もチラホラいて、ステージの上で山崎氏が「ああっ、帰っちゃうんですかあ?」と悲しげに言っていた声が今でも脳裏にこびりついている。それにしても、サミュエル・ホイの映画を持ち出して無理矢理ロックだと言われても、さすがに困るわけで…
 その中でもさすがに山崎氏は主催者だけあって、非常に興味深い内容を披露していた。アメリカのマッチョ・メタル・シンガー、ジョン・マイクル・ソアー主演の「エッジ・オブ・ヘル~地獄のヘビメタ」の脱力っぷりや、ジム・キャリー主演の「エース・ベンチュラ」にデスメタルの大御所CANNIBAL CORPSEが出演した経緯、日本では無視されているがアメリカではカントリーがロック以上に売れていて、しかもキリスト教原理主義みたいな内容の歌が何百万枚も売れていることなどを、カントリーミュージシャンのまるで東南アジアで作られたようなもっさいPVを上映して解説するなど、非常に好奇心をそそられるものもあった。
ジョン・マイクル・ソアー主演「エッジ・オブ・ヘル~地獄のヘビメタ」

※観ておわかりのとおりの、B級などという生半可な形容を遥かに超える凄まじい作品。山崎氏曰く「爆音のヘヴィ・メタル、悪魔、筋肉、巨乳ギャルという素晴しい要素が全て揃っている。これで内容が面白ければ最高なんだが」
Rock 'n' Roll NightmareRock 'n' Roll Nightmare
(2006/07/18)
Jon Mikl Thor

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ジム・キャリー主演「エース・ベンチュラ」CANNIBAL CORPSE出演シーン

※すっごく楽しそうなライヴ会場!おれも混ざりたい。演奏曲は「Hammer Smashed Face」と来たもんだ。最高すぐる。
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(2004/06/18)
ジム・キャリー、コートニー・コックス 他

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(2005/02/16)
カンニバル・コープス

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 このgdgdなイベントに於いて一番印象に残ったのは、高橋氏が作成したミュージカル映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」と、キリスト受難を描いたメル・ギブソン主演映画「パッション」を合成した、所謂MADビデオだ。能天気に流れる「ジーザス・クライスト・スーパースター」のテーマ曲「Superstar」や「King Herod」に乗せて、凄まじい拷問を受けて血まみれのメル・ギブソン演じるイエス。拷問の合間に挿入される肥え太ったジーザス・クライスト・スーパースターのヘロデ王とのコントラストがまた強烈であった。この完成度たるや見事なもので、誰が見ても素晴しいと思うが、キリスト教系の学校に通っていたおれなどは余計に凄いと感じた。敬虔なクリスチャンの人が観るとどうなるのか非常に興味深いが、残念ながらこの映像はこのイベントのみでの公開で現在は見られない。是非ともようつべなどにアップしていただきたい映像作品である。
映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」より「King Herod」

※この能天気な音楽に乗せ、ただれきったヘロデ王の姿がキリストの受難に重なると、そりゃあもうえらい事になっていた。
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メル・ギブソン主演「パッション」拷問シーン(刺激が強いと思われるので閲覧注意)

※これに「ジーザス・クライスト・スーパースター」の能天気な音楽が重なっていたわけである。メル・ギブソンのユダヤ嫌いはガチなため、アニメ「サウスパーク」ではカートマンに崇拝されている。
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ジム・カヴィーゼル、モニカ・ベルッチ 他

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 このような「当たり」はあったものの、イベント全体のgdgd感は如何ともし難く、途中退席する客が続出した。おれもあまりにもこのいなたい雰囲気に耐えることは厳しく、過剰にアルコールを投入することで何とか精神の均衡を保っていた。するとイベントの終盤、ステージの方に呼ばれる始末。一番乗り(したくてしたわけじゃない)だったのを見ていたらしく、「最初から来てたんでしょ、こっち来てよ」といった感じで、ステージ上の掘りごたつに座る羽目になった。高橋氏の隣だった。彼の腕にはカッターなどでつけたであろう、様々な紋様の傷が無数にあったのだが、当時は何故か周りにリストカット常習のメンヘラ女子が複数いた時期だったので、特に動揺することもなかった。どちらかというと、氏のは刺青のかわりに刻み込んでいる感じで、メンヘラのそれとは違って、キチンとデザインされている傷であった。何故このイベントに来たのかなどを訊かれたので、たまたま来たらやっていたので入ってみた旨を答えた。一応、山崎氏監修のムック「ダークサイド・オブ・ザ・ロック」を所有してたので、その本が非常に楽しめたことを話したら、山崎氏も喜び、この重い会場の雰囲気がやや軽くなった感じがした。高橋氏が「その表紙のマンソンの絵、俺が描いたんだよ」と無表情で話しかけて来た。勿論、氏が描いたことは知っていたのだが、「ああ、知ってます」ではそこで流れが切れてしまうと思い、せっかくなので「そうだったんですか。それはビックリ」みたいな感じで驚いてみせた。「しばらくしたら改訂版が出るよ。その表紙も俺が描くよ」みたいなことをボソッという高橋氏の暗黒オーラに当てられ、否が応にも酔いが回る。会場のアレな雰囲気に耐えかねた山崎氏がLED ZEPPELINの「Rock And Roll」を歌いだし、何故かおれがエアギターをしながら口でギターの伴奏をするなど、ただの酔払いが駄弁っている空間と化したのであった。おれと同じくステージに呼ばれた女の子が苦笑いをしていたのだが、何故か山崎氏とおれでCONCERTO MOON(技巧派ギタリスト島紀史さん率いるメタルバンド。滅茶苦茶巧いが、BURRN!の広瀬編集長の過剰なゴリ押しと衣装のフリル付きブラウスが恰好のネタの材料となった)について腐すような話になったところ、その女の子の「あたし、そのバンドのギターの人と知合いですよ」という一言で、その話題に関しても撤退せざるを得ないハメとなった。そしてエンディングには何の脈絡もなく山崎氏が持参した洋物ハードコアポルノビデオが流されたのだが、よりにもよって無修正のホモビデオだったという最悪の結末で以ってこのイベントは終了したのである。
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※ダーク・サイド・オブ・ザ・ロック1と2。どちらも高橋氏が表紙を描いている。このセンスの良さ、作風の幅の広さは凄い。
※↓これの改訂版
ダークサイド・オブ・ロックダークサイド・オブ・ロック
(2005/09)
山崎 智之、川嶋 未来 他

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ダークサイド・オブ・ロック (2) (洋泉社MOOK―ムックy)ダークサイド・オブ・ロック (2) (洋泉社MOOK―ムックy)
(2006/07)
不明

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 終演後、山崎氏に「今日のイベントは僕が監修した『ロックムービー・クロニクル』って本の発売記念でやったんだけど、持ってるかな?」と訊かれ、「すみません。まだ持っていないんです」と正直に話したところ、「じゃあ持ってきてるんで、1冊あげるよ」と言われ「サインも書いとくね」と表紙裏にサインを入れて、本をおれに手渡した。このサインがこれである。
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 そして帰り際にどうしても山崎氏に聞きたいことがあったので、酔った勢いで訊ねてみた。「広瀬さんのことは嫌いですか?」酷い質問だ。おれ自身がまったく面識もない他人の印象を訊くのに「好きですか」と訊くならともかくも、「嫌いですか」は幾らなんでも失礼だろう。酒は本当に人を狂わせる恐ろしい物質である。このような非礼極まりない問いに対し、山崎氏は悪びれることもなくスパっと答えてくれたのだが、好き嫌いはともかく、その理由に関してとてもここでは書けないような素晴しいお答えをいただき満足した。ステージに呼ばれた子も「山崎さん、BURRN!に書くのをやめて正解ですよ」と、山崎氏の労をねぎらっていた。以上の出来事は何しろかなり酔っ払っていたときのことなので、正確な事実かどうかは保証しかねる。山崎氏のサインがあることから、イベントに参加し、本をいただいたことは間違いないのだが。

 山崎氏からいただいたサイン入りの「ロックムービー・クロニクル」は内容が濃く、非常に読み応えがあり、様々なロック映画を選ぶ上で大いに参考になった。何でこんないい本を作ったのに、あんなイベントになってしまったんだろうと今でも思う。それにしても、以前CSで見た高橋氏と、イベントでおれの横にいた高橋氏と、最近テレビやWEBで見る高橋氏は本当に同一人物なのか?未だにどこか信じられない自分がいるのであった。
ロック・ムービー・クロニクル (CDジャーナルムック)ロック・ムービー・クロニクル (CDジャーナルムック)
(2004/06/01)
山崎 智之

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法螺や誇張を交えてつらつらと

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