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XはHELLOWEENをパクっていたのか?

 サマソニにX-JAPANが出るような時代が来るとは。といっても、サマソニには特に行こうとは思わなかったわけで、当然行ってない訳で。
 Xのファンだった(過去形…)十代の頃、よく言われていたのは「XはHELLOWEENをパクった」ということである。今でこそおれもパクりには寛容になったものの(これだけ楽曲があるのに、まったく似ていない曲を量産するのは苦しい)、多感な十代の頃は、パクりに関してはかなり嫌悪感を持っていたものである。ある同級生がやたらおれの音楽の趣味にケチをつけてきたことがあって、最初はスルーしてたものの、あまりのしつこさにおれも腹を立て、MOTLEY CRUEの「Live Wire」や「Time For Change」、AEROSMITHの「Love In An Elevator」「What It Takes」など、彼奴が熱狂的ファンであった某ミュージシャンの曲にそっくりな曲(勿論モトリーやエアロの曲の方が先に発表されている)ばかりダビングしたテープをそいつに聴かせて泣かせるなど、非常に大人げのないことをしたものである。子供のやることだから大人げのないのも当然ではあるが。今は大人であるので、いちいちようつべで比較用の動画を貼り付けたりしない。うむ、大人だ。
 さて、XとHELLOWEENであるが、その頃はおれは両方とも好きなバンドではあったものの、正直「どこがパクりなの?」って感じだったのである。好きなバンド同士だったから無意識に似てるところを避けてて認めないようにでもしていたのであろうか?Xの「VANISHING VISION」「BLUE BLOOD」「JEALOUSY」と、HELLOWEENの「HELLOWEEN」「WALLS OF JERICHO」「KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part 1&2」を何度も聞き比べてみたが、盗作していると言われるようなフレーズが存在している曲がないように感じたものである。それどころかHELLOWEENの「I Want Out」は、曲はGARY MOOREの「Out In The Fields」に似てるし、ギターソロがMSGの「Into The Arena」じゃねえか、とメタルの見聞を広めるうちにHELLOWEENのパクりを発見してしまう始末であった。
HELLOWEEN 「I Want Out」

※何だかんだ言って名曲。元ネタより好き。「Out The Field」はこちらの記事に貼り付けてあります。

MSG 「Into The Arena」

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 仕方ないので「XはHELLOWEENのパクり」と吹聴していた奴に「具体的にXのどの曲が、HELLOWEENのどの曲をパクッたのか?」と訊いてみたところ「いや、そう皆が言ってるから」などとのたまう始末であった。確かに当時は今に較べればメタルも人気があったし、Xも絶頂期といっていい人気を誇っていた頃ではあったが、正直おれのまわりでメタルを聴いている奴など殆どおらず、Xに関しても他所に較べるとおれの周辺ではBOØWYやCOMPLEXのようなビート系が圧倒的に人気で、Xはそれほど人気はなかった。それなのに「皆言ってる」って、皆聴いてもいない奴ばっかなのにそんなのわかるわけねえだろう、と思い、なんだか馬鹿馬鹿しくなってしまったのを覚えている。辛うじてXのシングル曲の「Standing Sex」のAメロのヴォーカルライン(Lucy in the sky~♪の部分)が何となくHELLOWEENの「Judas」のブリッジのヴォーカルライン(Fight for freedom~♪の部分)に似てるなあ、とは思ったものの、「Standing Sex」は「XはHELLOWEENのパクり」と聞かされてしばらく経った後にリリースされた曲であるからして、その曲を以ってパクリと断定していた訳でもあるまい。この2曲も曲調自体はてんで別物だし。
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 そうすると、Xは別に曲をパクッた訳ではなく、HELLOWEEN的な手法を取り入れたということであろうか。それならば納得がいくのである。要するに後のメロスピやメロパワの雛形となる、ツーバスの疾走ドラムにツインギターが乗って、歌謡曲的なメロディが乗っているという共通点である。なるほど、それならHELLOWEENの方が若干では先行であるし、その方法論をXが取り入れたというのはすんなり受け入れられる。それにHELLOWEENの「KEEPER OF THE SEVEN KEYS」のリリース時の衝撃たるや凄まじく、一種の革命的な作品であり、ヨーロッパや南米、そして日本ではその影響たるや現在でも連綿と受け継がれている。しかし、これを以って「パクり」というのは些か乱暴ではなかろうか?それを言ってしまったら、スラッシュ・メタルは全部METALLICA(特にデイヴ・ムステイン在籍時)のパクりになってしまうし、ヘヴィ・メタルはすべてJUDAS PRIESTのパクりになってしまう。極端に言えばあらゆるロックンロールはチャック・ベリーのパクりになってしまうし、OASISはBEATLESのパクりになってしまうではないか。パクりというと、方法論を継承することよりも、曲そのものや旋律を盗作する事をイメージするのが当然であって、あまり広い意味で使うのはどうかと思うのである。方法論を取り入れることが盗作になってしまったら、形成するジャンルのパイオニア以外はみな盗作になってしまう。

 しかし、ある程度は納得いったようなものの、それでも世間で言われるほどXとHELLOWEENは似てないよな、と思うわけである。HELLOWEENはどこかコミカルな雰囲気を持っているし、ポップな要素もあって聴いていて楽しい雰囲気があった。Xはどちらかというと陰気というか、シリアスな印象があったので、どうにも別物にしか思えなかったのである。では、XはHELLOWEENを参考にしなかったのかといえば、それは否である、と言いたい。Xのアルバム「BLUE BLOOD」の曲順の構成は明らかにHELLOWEENの「KEEPER OF THE SEVEN KEYS」を参考にしていると思われる。短いオープニング的なインストで始まり、間断なくスピードナンバーに移る。ミドルテンポの曲やバラードを挟んだ後、終盤に10分を越える大作をもってくるところなどは大いに参考にしていたのではあるまいか。うろ覚えではあるが、そのあたりをYOSHIKIはインタビューでは否定していた記憶はある。「IRON MAIDENは大いに参考にしたけど、ジャーマン・メタル(HELLOWEENのこと)自体にあまり興味はない」といった感じだったと思う。しかし、後にYOUNG GUITAR誌に於けるRITUAL CARNAGEのギタリストEDDIE(小出健一)のインタビューでは「YOSHIKIは当時HELLOWEENに衝撃を受けて、随分聴いていた」というような証言が出ている。EDDIEはかつてXに在籍していた時期があり、その時期について質問された際の答えである。Xにはデビュー以前に随分とメンバーチェンジを繰り返しており、そのメンバーの中には結構名の通った人物も多く、UNITEDのハリー先輩やMEPHISTFELESの宇高ヒカル、バカテクギター講師で名を馳せた高井寿などがXに在籍している。EDDIEとYOSHIKIでは真っ向から食い違う言い分ではあるが、おそらくはEDDIEの言い分の方が事実に近いものがあると思われる。YOSHIKIもあまりにHELLOWEENのことが持ち出されていたので、意地を張って「まったく聴いていない」等と言ってしまったのではないだろうか。勿論これはあくまでもおれ個人の印象に過ぎないし、現在に至ってもYOSHKIの口からHELLOWEENの影響を認めるような発言はおれの知る限りでは為されていない。
HELLOWEEN 「Halloween」live

X 「Rose Of Pain」PV

※両バンドの「長大曲」。まるっきり傾向は違う。共通点と言えばイントロにクラシック(と言っても、近代音楽とバロックだが)を引用しているところくらいか。Halloweenはホルストの「火星」、Rose Of Painはバッハの「小フーガ」。

 それでは、HELLOWEENとXの関係に関しては、実際メタル系の媒体ではどのように言われていたのであろうか。伊藤セーソク氏などは「Xはいち早くHELLOWEENから売れる要素を嗅ぎとり、盗み取ったことは間違いない」と着眼点を誉めつつも「盗み取る」という穏やかではない文章を炎誌に寄稿している。これにしても、掲載時期が90年代後半でX-JAPANの活動が既に停滞していた時期であったし、セーソク氏が分析した結果というよりも、80年代後半に自然発生的にメタルリスナーの間で「XはHELLOWEENを模倣した」という定説があって、それを踏まえたうえでの言説という印象である。その模倣は幾多のメタルバンドがJUDAS PRIESTやMETALLICAに関してやっていたことと同じであり、特に責められるべき性格のものではないと、おれ個人は思うのである。
 では、メタル業界での影響力がやたら強いように言われるBURRN!誌などに於いてはどう扱われていたのだろうか。有名な『YOSHIKI FAX送りつけ事件』の当事者である、インディーズ時代のEP「オルガスム」を酷評した増田勇一氏(後にMUSIC LIFE最後の編集長となる)は、その後なんだかんだ言ってXに好意的になり、後述のBURRN!JAPANに於いてXをプッシュしていたりするが、当時でXに関して辛辣な物言いをしつつ評価を変えなかったのは広瀬和生氏(現在のB!編集長。「紅」のレヴューはボロクソだった)くらいであり、それでも「HELLOWEENのパクり」のような言い方ではなかった。Xの音楽性の形容に「HELLOWEEN的な」というのはあったとは思うが、模倣者や剽窃者といったレッテル貼りはしていなかったと記憶している。
 同誌のジャパニーズメタルに特化した不定期刊行の増刊号であるBURRN!JAPANでは、創刊号で既にインディーズ時代のXを採り上げており、YOSHIKIも「林よしき」という名義で掲載されているのが興味深い。3年程度で6号という短い発刊期間であったが、Xの記事は全ての号に掲載されており、3号以降は全て特集扱い、4号のメジャーデビュー直前の特集ではYOSHIKIが表紙となっており、BURRN!誌の性格からすると敬遠していたと思われがちなXであるが、実はそれなりに大きく扱われていたのが事実である。それには当時の編集長であった酒井康氏がXをあまり嫌っていなかったという事情があるだろう。
 酒井氏といえば聖飢魔IIの1stアルバム「悪魔が来たりてへヴィメタる」のレビューで「音楽がいいだけに、こんなイロモノをやっているのは許しがたい」と0点をつけたことで有名であるし(本当はアルバムで演奏しているのがスタジオミュージシャンだということを公言できない鬱憤があったということもあるようだ)、LOUDNESSに関しても、ライヴ会場で業界関係者に入口で記帳させるなどの芸能界体質(前身バンドのLAZYがアイドルバンドだった)を嫌悪していることも指摘されている。(もっともその一方で、酒井氏自身はLAZYの解散ライヴを当時絶賛していたり、BURRN!JAPAN誌に於いて樋口宗孝と非常に親密な間柄を伺わせる内容のインタヴューをしていたり、自身のラジオ番組でLOUDNESSの曲をかける際に二井原実に直接電話で許可をもらっていたりする事実があったことも特記しておく)
 Xといえばヘビメタ=イロモノと決定付けた「天才たけしの元気が出るTV」のヘビメタコーナーに出演しており、メタル界隈では最も芸能界ずれしている感がある。実際に酒井氏はBURRN!誌のコラムや編集後記などに於いて、再三再四に渡りヘビメタコーナーに対する憎悪をぶちまけている。にも拘らず、Xに関してはそれほど悪感情を抱いていないというのは面白い。単純に酒井氏が見ていたのがXが出演したものではなく、ヘビメタがレギュラーコーナーになってからのバーバラ・アキタダやジン鈴木、AURA、ジストマあたりが出演していた頃のものだったのかもしれないが。Xに関しては、アルバム「BLUE BLOOD」のオープニングにFRANK MARINO & MAHOGANY RUSHの「World Anthem」のカヴァーを持ってきたことが好印象を齎したことに大きく作用している。このバンドはカナダのハードロックバンドだが、マニアの間では評価が高いものの(特にギタリストのフランク・マリノの評価は高い)、一般のメタルファンの間での知名度はそれほど高いものではなかったのだが、その彼らのカヴァーをアルバムのオープニングに持ってきたことで「こいつはわかってるな」と酒井氏の琴線に触れたのである。X結成時の安房高校の学生だった頃、既に学園祭でこの曲を演奏していることからも、YOSHIKI自身が随分この曲には思い入れがあるようだ。ちなみにこの学園祭の音源が存在しており、出回っている。演奏曲目は、「World Anthem」の他、DEEP PURPLEの「Burn」、IRON MAIDENの「Killers」、そしてXのオリジナル「I'll Kill You」である。
FRANK MARINO & MAHOGANY RUSH 「World Anthem」

※これが「BLUE BLOOD」の冒頭を飾る「Prologue」の原曲。

 この文章を書くにあたって、webでXがHELLOWEENをパクっているか否かを検証しているサイトはないか探してみたが、Yahoo!知恵袋でこんなページを発見した。たしかに、これは殆ど一致する。しかし、この例として出されたXのPVだが、これはそもそも販売用にリリースされたものではなくて、インディーズ時代のライヴで無料配布されたビデオのものであり、この音源もこれでしか使われていない。「VANISHING VISION」に収録されている英詞版の「KURENAI」とは別音源であり、件のギターソロもこのフレーズとは違っている。のちに「X JAPAN COMPLETE Ⅱ」というDVDのボーナストラックに収められたが、元々が無料配布用のものであり、この質問者の言う「パクりで金儲けしてるんだから悪いことに決まっている」とまで糾弾されるような代物ではないという印象である。これを糾弾したらHELLOWEENの「I Want Out」はもっとアレな感じで、更に強く糾弾しなければならないハメになってしまうのではなかろうか。もっとも、HELLOWEENの生み出した「型」はパクりという糾弾を物ともしないだけのオリジナリティがある。実際はパクリだらけのLED ZEPPELINなども、その「型」があまりにも空前で先進的、何者にも替え難いオリジナリティに満ちている為に、ある意味許されているところがあると言える。まぁ、ZEPの場合は何曲かは訴えられて、クレジットし直したり金銭で解決したりもしているが。
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 おれ個人としては、おそらくXはHELLOWEENを大いに参考にしてアルバムの構成をしたり、楽曲のスタイルを構築したことはあるだろうけれども、楽曲そのものをパクッたというのは、無料配布用の音源のギターソロを除いては殆どないと考えるのが妥当ではないかと思う。しかし、おれが見逃しているという可能性もあるかもしれない。「これは確実Xがパクッた」と確信が持てるようなHELLOWEENの曲をご存知の方が存在するかもしれない。いずれにせよ、どちらのバンドも一定の評価を得ている大御所であるし、そんなものがあってもその評価にうつろいが出るとは思えないけれども、十代の頃にまことしやかに言われていた説に対し、自分なりに“けり”をつけてみたかっただけのことである。
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