FC2ブログ

メタルゴッドのファッションと音楽性の変遷・80年代編

 80年といえば、JUDAS PRIESTが名実ともにヘヴィ・メタルの凱歌を上げた「BRITISH STEEL」を発表した年である。プリーストの特徴とも言える叙情性を廃し、ひたすら硬質なリフで曲を埋め尽くしたソリッドな作風は、へヴィ・メタルという新しい音楽がこの世に誕生したことを高らかに宣言するものであった。
JUDAS PRIEST「United」

ブリティッシュ・スティールブリティッシュ・スティール
(2004/06/02)
ジューダス・プリースト

商品詳細を見る

 劇的な展開やツインのソロが見られず、そしてロブのシャウトを封印とまではいかないまでもかなりの割合で削減し、この虚飾をそぎ落とした作風はともすればパンクを思わせる要素もあるが、ロブの短髪とレザーはパンクスを思わせる風貌でもある。また、この頃からリズム隊もレザーを着用して、バンド内で衣装に統一感を持たせるようになった。JUDAS PRIESTがMetal Godsとして覚醒した証しだったのかもしれない。また、この「United」という曲は、歌詞の内容を見ると団結を歌うoi的な内容でもある。サビの「United we stand」など、まさにoiそのものを具現化した歌詞であり、この頃頭角を表わしてきたCOCKNEY REJECTSやSHAM69の存在を意識したものとなっているのだろうか。余談ではあるが、現在COBRAのベーシストであるユーイチ君がかつて組んでいたoiバンドの名前がUNITED WE STANDであった。
 このように、プリーストがメタルの権化でありながらも、新しい音楽にはいち早く反応し、尚且つその上でモノマネではなく、新たなスタイルを作り上げてていくというバンドでもあったことがわかる。
 
 この頃からJUDAS PRIESTは本格的にアメリカに進出するわけだが、「BRITISH STEEL」の作風を踏襲しつつ、アメリカで受けるようにと、よりポップでシンプルな作風となった「POINT OF ENTRY」を発表。アメリカでまずまずの売上を上げるも、イギリスや日本では酷評された。特に日本では、海外では歴史的名盤とされている「BRITISH STEEL」ですらその叙情性のなさから一段低い扱いを受けていたので、「POINT OF ENTRY」に至っては何をかいわんや、という評価であった。そしてプリーストはBRITISH STEELで確立したヘヴィ・メタルの質感をそのままに、かつて持っていた叙情性、ドラマ性を融合させることを試みたのである。

JUDAS PRIEST 「The Hellion」~「Electric Eye」


復讐の叫び復讐の叫び
(2004/08/04)
ジューダス・プリースト

商品詳細を見る
ライヴ ’82 ~復讐の叫び~ [DVD]ライヴ ’82 ~復讐の叫び~ [DVD]
(2006/04/19)
ジューダス・プリースト

商品詳細を見る

 傑作「SCREAMING OF VENGEANCE」のオープニングを飾る「The Hellion」~「Electric Eye」は、一体どれだけのメタルバンドのアルバム作りに影響を及ぼしたことかわからない。この82年のツアーでもアルバムとおりのオープニングでライヴの幕を開けた。おれも2005年の武道館で見たときのオープニングまさにこれだったが、体の中心からブワーッと痺れてくる感覚を味わったのを覚えている。このときのロブのスタイルはレザーのベストにラウンドスタッズを大量に打ち、鞭や鎖、手錠というSMスタイルで、実に背徳的なファッションである。またKKも鎖を体中に纏い、グレンもラウンドスタッズを大量に打ち込んだ衣装になっている。特にギターのストラップには尋常じゃない量の鋲が打ち込まれており、当時としてはかなりのインパクトがあったであろう。

JUDAS PRIEST 「Breaking The Law」

 そして翌年にはこの路線を推し進めた名作「DEFENDER OF THE FAITH」を発表し、伝説のUSフェスティヴァルにも出演。USフェスは3日間で60万人を動員したが、へヴィ・メタル・サンデーと呼ばれた2日目は実に30万人もの動員を記録し、全米にヘヴィ・メタル・ムーヴメントが発生したことを満天下に知らしめたのである。このときの衣装が多くの人にとって「JUDAS PRIESTといえばこの恰好だな」と認知度が高いものだと思われるが、正直言って、あまり恰好良くない感じがするのは否めない。レザーを着ているものの、革や金属の質感があまり感じられない安っぽい感じだ。どうもこの当時のアメリカのエンタテインメントの衣装というものは後世には共感しにくいものがあり、この日に出演したQUIET RIOTやVAN HALENのタイツやスパッツといったものが流行していたのだが、どうにもこれが宜しくない。プリーストもファッションも悪い方面でアメリカナイズされた感じだ。IRON MAIDENも元々はレザーにデニム、足元はコンバースというファッションだったのに、アメリカ進出に打って出た時期はタイツに白ブーツという恰好であった。早々にアメリカを見切ったメイデンは元のラフな衣装に戻して事なきを得たが、プリーストはどうなってしまうのであろうか。
背徳の掟背徳の掟
(2004/08/04)
ジューダス・プリースト

商品詳細を見る

JUDAS PRIEST 「Locked In」

ターボターボ
(2004/08/04)
ジューダス・プリースト

商品詳細を見る

 86年にはハードなエッジを残しつつも、ポップでキャッチーな楽曲を並べ賛否両論だった「TURBO」をリリース。これに伴うツアーでは大々的なセットを組んだステージも話題となった。日本公演ではこのセットを日本国内へ輸送することができず、簡易セットでのライヴだったようだ。この時期のプリーストの衣装は楽曲がポップな為か非常に洗練されたもので、「DEFENDER OF THE FAITH」の頃のような安っぽさが感じられない。ロブのロングコートも蜘蛛の巣のデザインをあしらったもので妙におしゃれである。またこの時期のロブはアルコール依存症のリハビリを行なっており、そのせいでやつれてしまったのだが、体重が減った為か非常に軽快な動きを見せている。メタルファンには以前のマッチョな感じで凄みの利いたアクションの方が評判はいいが、この時期の華やかなプリーストも素晴しい。映像でも曲の冒頭でドラムキットの方からステージの中央に躍り出るシーンがあるが、ああいうアクションは珍しい。
 「TURBO」アルバムには「Parental Guidance」という曲があるが、これはこの時期にヘヴィ・メタルが不道徳な文化であるということで全米の子を持つ親の間で問題となり、PMRCなどの検閲団体も現れるという事態となり、そのことをテーマとして採り上げたものである。現在、映画は暴力表現や性表現などでその程度によって推奨年齢、あるいは年齢制限などを行なっているが、PG-12(日本)、PG-13(米国)という格付けがあり、日本では12歳未満、アメリカでは13歳未満が保護者同伴、あるいは保護者の許可・助言を必要とするという制限があり、そのPGというのは「Parental Guidance」の頭文字である。JUDAS PRIESTはバンド名がキリスト教に喧嘩を売っているようなものであることもあって(実際はボブ・ディランの「The Ballad of Frankie Lee And Judas Priest」という曲名からとられたもの)、平均的なアメリカの家庭からは「悪いもの」の代表と見られていた。事ある毎にプリーストとヘヴィ・メタルは社会悪として攻撃の対象とされていた。尤も、レベル・ミュージックであるヘヴィ・メタルにとって、社会から攻撃されること自体はあって当然のことであり、またそれこそが誇りでもある。そして、攻撃されたら反撃あるのみである。子供を信じようとせず、ただ頭ごなしに子供の望むことを禁止する親のエゴを描いた曲を作って、プリーストは検閲問題に立ち向かったのであった。またその曲の曲調は、同じく悪のヘヴィ・メタルの代表として槍玉に挙げられ、公聴会で検閲団体を論破してみせたディー・スナイダー率いるTWISTED SISTERの作る曲調にどことなく似ているものだった。日本ではこの曲は「プリーストらしくない、アメリカンメタルだ」という一言で切り捨てられているきらいがあるが、このような背景があって存在している、いわば必然となってこういう曲になったのだとおれは解釈したい。この明るい曲調は、このメッセージがポジティヴなものであることの顕れであると。
JUDAS PRIEST「Parental Guidance」

エレクトリック・アイ [DVD]エレクトリック・アイ [DVD]
(2007/11/21)
ジューダス・プリースト

商品詳細を見る


TWISTED SISTER 「We're Not Gonna Take It」

※未来永劫歌われていくであろう名曲。PVは一見どころか何回見てもギャグだが、これに込められたメッセージは本当に真摯なものである。
ステイ・ハングリー (ワーナー・ハード・ロック1500)ステイ・ハングリー (ワーナー・ハード・ロック1500)
(2011/09/21)
トゥイステッド・シスター

商品詳細を見る


 このあと、世間を敵に回したプリーストには過酷な運命が待ち受けているのであった。
スポンサーサイト



プロフィール

でー

Author:でー
メタルとか他いろいろなことを
法螺や誇張を交えてつらつらと

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR