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21年前のデイヴ・ムステイン 中編

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 (前回からの続き)前半生に於いて“人間らしさ”が欠落していたというムステインは、どのような家庭環境にいたのであろうか?
 インタビューを要約すると“幼少の頃に両親が離婚し母子家庭となったが、15歳の時に母親とも離別し天涯孤独となる。子供の頃に既に離別していた父親は、デイヴが17歳の頃に死亡”。ゴシップ週刊誌とかで安易に「○○さんが送った壮絶人生!」みたいな見出しをつけられるタイプのものである。個人的に「壮絶人生」とかにあまり関心がない方なので、そのあたりはまぁどうでもよいのだが、ムステインはそのあたりもキッチリと自分で客観視した上で分析しているので、薄っぺらな感じがしない。
 「俺の家族は家族としての機能に欠けていて、(中略)そうした機能に欠ける家庭からは、人間の機能に欠ける子供ができるものなんだよ。家庭が機能しなければしないほど、子供は恨み、憎しみ、苦々しい気持ちを抱き、アグレッシヴになり、他の人間に対しても色褪せた感情しか持てなくなる。それで自分だけの世界というのをつくり、自己のスピリットを守ろうとするのさ。過去の恨み、憎しみ、苦々しさに押し潰されて、自分のスピリットが死んでしまわないようにね」
 勿論、これはムステインの個人的な見解であり、母子家庭だろうがグレもせず、世間一般で言う「まともな人生」を歩んでいる人もたくさんいるだろうし、逆に、普通とあまり変らない家庭環境にありながらも、個人的な資質やそれ以外の要因でグレたり、引き篭もったりしてしまうケースもあるだろう。でも、やはり家庭環境が子供の人格形成に及ぼす影響が限りなく大きいのも事実であるし、デイヴは率直にそれが現在(当時)の自分を形成したものであると認め、それが社会全体(特に当時のアメリカ)に於いて決してレアケースではないということを訴えているのである。
 この頃、世に出ようとしていたNIRVANAのカート・コベインも幸せな幼少期を過ごしながらも、思春期に両親の離婚が元で内向的な性格となってしまってるし、EMINEMことマーシャル・マザーズも母子家庭のトレイラーハウス暮らしで周囲に迫害されていたことで、ラッパーの才能に目覚め、自分の中で別人格のスリム・シェイディなる幻想を作り上げて“自己のスピリッツ”を守っていた。一方、METALLICAのラーズ・ウルリッヒなどはデンマークの裕福な家庭に生まれ、学生時代にテニスプレイヤーとして鳴らし、テニスの為にアメリカに移住したのちに趣味のへヴィ・メタルのレコードコレクターであることが嵩じてミュージシャンとなった、という境遇ながら、高次元のレベル・ミュージックを作り上げていく例が存在したのも特筆しなければなるまい。ムステインと境遇が似ているのはMOTLEY CRUEのニッキー・シックスであろうか。ムステインにとってのラーズが、ニッキーにとってのヴィンス・ニール(幸せな家庭に育っている)、あるいはトミー・リー(裕福なギリシャ移民家庭)であると考えても、共通点は多い感じがする。そのあたりは、MOTLEY CRUEの自伝「THE DIRT」や、ニッキー・シックスの80年代の日記集「ヘロイン・ダイアリーズ」等を参照のこと。アクセル・ローズにとってのスラッシュ(エンタメ業界人の両親を持つイギリスからの移民)というのもあるが、キリがないのでこのあたりで。
 閑話休題。インタビューでは続いて母親と離別した要因についても触れられる。
「オフクロは信心深い人で、ある宗教に凝っていた。そして、俺のやっていたことがオフクロの信じていたものと相反する、相容れないということで、俺は見放されたわけさ」
 母親の宗教が元で離別したということだが、同時に母親が宗教にハマった事情に関しては一定の理解を示している。
「オヤジがどうしようもない奴だったから、そういうオヤジとの現実から自分を救うためには神が必要だったんだと思うよ」
 では、父親は実際にどのような人物だったのか?それを極めて明快に語っている。
「オヤジはアルコール中毒だった。そのために家でどういうことが起こったかは話す気はないけど、それで家庭はメチャクチャになり、俺にはオヤジのアル中が遺伝したってわけさ」
 日本では93年ごろから「アダルトチルドレン」という言葉が使われはじめた。日本ではしばしば「子供っぽく、大人になりきれないまま成人した人」であるかのような誤用が目立つこの言葉であるが、そもそもこの言葉は「アルコール依存症の親の元で育ち成人した人々(Adult Children of Alcoholics)」から派生し「子供の成育に悪影響を与える親のもとで育ち、成長してもなお精神的影響を受けつづける人々(Adult Children of Dysfunctional Family)」という意味の言葉となった。このインタビューでアダルトチルドレンという言葉は使われていないし、ムステイン自身は当時その言葉を知らなかったのだろうけども、まさにその言葉の正確な意味を踏襲して見せたのがこのインタビューなのである。読み返してゾクっときてしまった。(続く)

MEGADETH「Wake Up Dead」PV



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