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ラウパとMANOWAR

 今年のラウパーもヘッドライナーキャンセル発生。初日のトリのMANOWARが昨年トリのKING DIAMOND同様、船便のトラブルで機材が届かず出演を見合わせ、後日2回の単独公演を行うとの事だった。
 おれは2日目に参戦することが仕事のスケジュール上絶対的に不可能だった上、1日目に参戦したとて終電に間に合わせるためにトリを見ずに帰るハメになることは確実だったので、めったに来ることのないであろうMANOWARを観ることができずに帰るという苦しみを味わうくらいなら参戦しまいと思ったものの、トリに繰り上げになったARCH ENEMYならしょっちゅう来日しているので、観ずに帰ってもそれほど苦になるまいと判断し、急遽、ラウパーの初日のみに参戦、そして初日にラウパー会場にて先行販売されるMANOWAR公演のチケットを購入することにした。と、言うわけで、全国のメタラーが悲嘆にくれる中、おれは密かにほくそ笑んでいたのであった。でも、本当に観に行きたかったのはどっちにしろ観ることのできない2日目の方だった。WITHIN TEMPTATION、RIOT、THUNDER、KREATOR、DEATH ANGEL、BELPHEGOR、GLAMOUR OF THE KILL……嗚呼

 今年も例のごとく、ラウパー前夜に大和町在住にしてオールシーズンライダースで高円寺を闊歩する友人Mくんと歌舞伎町GODZで待ち合わせ。店員が増えててびっくりする。何杯か飲んだ後高円寺に移動しようと出口に行ったところで、GODZダブルマスターの一人ヒデさんが出勤。挨拶しEMPERORの来日公演の時見かけたことを話し、そのあと職務質問を食らったことを報告すると「職務質問は我々の宿命ですからね!」と長髪顎髭サングラスメタルTシャツ姿で力強く胸を張っておっしゃるのであった。友人Mくんも職務質問の常連であり、おれと別の友人Tくんと新宿を歩いている時、後ろから警官が不意打ち気味に「Mくんだけ」職務質問されるという出来事が10年位前にあったことを思い出した。彼も長髪であり、前述のごとく春夏秋冬関係なくライダースジャケット姿で外を練り歩いている上に、イラストレーター/デザイナー(元々はアニメーターだった)でもあるため、常に画材と名刺代わりの自作のポストカードを手提げ型のアルミケースで持ち歩いており、危険物を所持している疑いで職務質問で中を改めさせられたのである。おれもこの風体で20年近く生活しているが、とりあえず現時点で職務質問を食らっているのは、EMPERORのライヴの時の1回だけである。
 高円寺に移動し、抱瓶で沖縄料理を喰らい、その隣の七福神で鮨を食う。七福神は廻らない寿司屋だが、明朗会計で価格もリーズナブルなので安心。品質も良く、カッパ巻きの胡瓜の処理など細かいところに手間をかけていて好感が持てる。そして、WRES CAFEがこの月に閉店したとのことで跡地を訪ねる。去年は焼肉屋の二楽亭も無くなってしまったなぁ。その近くのバーでエーデルピルスを飲んでMくんちに行き、就寝。
 翌朝は何とか早起きし、さいたまスーパーアリーナへ。今年はグッズの先行販売に間に合う。とは言え、正直今年は欲しいグッズが殆どなかったので、とりあえずDOWNのTシャツを2タイプ購入。昨年は寝ぼけてLサイズのTシャツを買うという失態を犯したが、今年はちゃんとSサイズで買えた。
 そして、入場時間となるが、トリキャンセルの影響を感じさせない客入り長蛇の列が少しずつ進み、さいたまスーパーアリーナに入る。そして、MANOWARのチケット売り場に行くが、ここもまた長蛇の列。やはり、今回の来日を待ち望んでいたマノウォリアー(マノウォーファンのこと。モノノフみたいなもんだ)は多いのだなと感心。10月29日公演と10月30日公演の列が分けられており、おれは2日目である30日公演の列に並ぶ。ラウパ初日の来場者は5000円引きの3000円にて購入できるシステムだった。ラウパ初日に来たが単独公演に行けない方はラウパの半券と引き換えにグッズを廉価で購入できるようにするとのことで、単独公演チケット購入者はグッズ購入でラウパ半券を再利用できないよう「MNW」のスタンプを押される。そして列に並んで30分ほどして無事にチケットをゲット。
manowarticket.jpg
 しかし、列が長いため、密かに楽しみにしていたオープニングアクトのアイドルグループ「仮面女子」のステージを見ることができなかった。なんといってもバックが大物揃いでギターがDAITA(BREAKING ARROWS、元SHAM SHADE)、ベースがまーくん(LOUDNESSの山下昌良)、そしてドラムが真矢(LUNA SEA)である。本日LOUDNESSの出番があるまーくんはともかく、大物であるところのDAITAと真矢さんが朝の10:30からステージに出るためだけに早起きして会場入りしたと思うと、どうしても観てみたかったと思う。

 ラウパのライヴの詳細はラウパのページなり他所様のレポを参照していただくとして、簡単な所見で済ませておく。
BATTLE BEAST ・・・ ごっついお姉さんがド迫力で歌うパワーメタル。メッチャクチャカッコ良かった。実質トップバッターとしてのこの充実ぶりは、いつぞやの3 INCHES BLOODを思い起こさせた。
MARTY FRIEDMAN ・・・ 英語でMCしていた。全編インスト。ベビメタのバックでお馴染み大村孝佳がまるでV系バンドのようないでたちでサポートギタリストとして参加。「天城越え」は盛り上がるも、全体的にはクールダウンした感じを受けた。
VANDENBERG'S MOONKINGS ・・・ 元WHITESNAKEの超大型オランダ人ギタリストのエイドリアン・ヴァンデンバーグのニューバンド。あまり期待してなかったのだが、渋いハードロックでコレがなかなか良かった。ヴォーカルの歌い方が昔のデイヴィッド・カヴァデールを彷彿とさせるものなのも意図的か。しかし、WHITESNAKE曲のセルフカヴァーがカシミールもどきの「Judgement Day」ってのは如何なものかと思った。WHITESNAKE本体も未だにこの曲を後生大事に演奏しているのもよくわからん。エイドリアン期のWHITESNAKEだったら「Sailing Ships」とかのほうがいいと思うのだけれどなぁ。もう1曲WHITESNAKEナンバーで大ヒット曲の「Here I Go Again」はさすがに来るものがあった。でも、エイドリアンが作曲に関わってるわけじゃないんだよな、と思うと複雑。なんだかんだ気になったものの、全体としてはとても楽しめた。歌上手い人がいい曲を歌うってのはこれだけで素晴らしいことなんだなと。
LOUDNESS ・・・20年以上メタル愛好家やってきて、今回が初LOUDNESSってのはいかがものかと思うが、やっとLOUDNESSのライヴを観られてよかった。ライヴが始まる前に袖でタッカンがちょろっと「In The Mirror」のリフを爪弾くと、フロアーから大歓声が上がり、ラウドネスコールが巻き起こる。客電が落ちてメンバーが登場すると更なる大歓声。タッカンはなんで禿げてるわけでもないのに、あんな不自然なラスタヅラを被ってるのか気になるのだが、ライヴが始まってしまえばどうでもいい。セットの前半はニューアルバムからの曲で推しまくって、現役っぷりをアピール。終盤「Crazy Night」「Crazy Doctor」「S.D.I」と名曲の畳み掛けは凄まじく、ラストはなんと「Esper」!最高の〆だった。でも幾らなんでもLOUDNESSの格を考えると出番が早すぎやしないかと。持ち時間が少なすぎる。あと、「Crazy Night」のような如何にもLAメタルっぽい感じのミドルテンポのナンバーでモッシュが起こったのは意外であった。
SOILWORK ・・・ 何気に本日のお目当ての一つだったが、選曲も謎な上に音響が酷すぎて何をやってるのかよくわからず。仕方ないので飯食いに行った。ケバブが美味かった。
AMARANTHE ・・・ 如何にも2000年代以降のメロディアスでヘヴィでサイバーなメタルコア(改めてメタルコアの定義がわからん)。ヴォーカルも豪華に3人(女・クリーン男、デス男)。非常に聴きやすいのだが、どうにもリア充オーラが凄いというか、楽しそうで何よりだが雰囲気に馴染めないなコレ。でも楽曲や演奏はいい。しかし今年のラウパは全体的に音響が良くない。ラウドネスは例外的にすごく良かったのだが。
DOWN ・・・ ご存知元PANTERAのヴォーカリストであるフィル・アンセルモ率いるストーナーロックバンド。ストーナーってほどトリップ感はなく、個人的にはサザンロック+BLACK SABBATH的な印象を受けた。これはこれでとてもいい感じ。そしてフィルも凶悪なスクリームを聴かせてくれた。最後にはラスタヅラを脱いだ金髪タッカンが飛び入り。バンドが曲を演奏する中で、タッカンだけ即興のジャムっぽい演奏でDOWNの曲に独特の色を添えていた。さすがである。あと何故かフィルが最後に「Stairway To Heaven」をちょろっと歌っていた。ちなみにフィルのTシャツはDISCHARGE、ベースの人のTシャツがG.I.S.M.とハードコアづいていたが、G.I.S.Mのシャツはブートだろうなぁ、多分。
RAGE ・・・ ドイツのベテランパワーメタルトリオ。正直、昔はピーヴィ・ワグナーの歌があまり好きではなかったので積極的に聴くことはなかったのだが、今回のライヴで目が覚めました。なんでこんないいバンド今までスルーしてたんだろ?ただただその素晴らしい演奏と曲を堪能。一部のサンプラー音以外は紛れも無くこの3人だけでの演奏。これでこのブ厚いパワー・メタルの音が鳴り響いているのだから、もうひれ伏すしかない。本日の文句なしのMVPでした。
DRAGONFORCE ・・・ 2年前に神がかったライヴをみせたドラフォだったが、今回はそうでもなかった。でも決して悪かったわけではなくて、前回が良すぎただけである。それにしても上から観ていると、イケメンの頭髪の状態が気になって仕方がない。おれも年も近いし決して他人事ではない。
ARCH ENEMY ・・・ MANOWARに代わってトリを務めたアチエネ。アンジェラがバンドのマネジメントに専念するためという理由でのヴォーカルの交替に関して、おれにとっては正直アレッサがTHE AGONISTから抜けてしまったほうがショックだったのだが、アチエネにとってはこの交替は悪い選択ではなかっただろう。すぐにでも会場を出て電車に乗らなければならなくなったが、3曲目で「Ravenous」が聴けたのでここで潮時と決めて、おれのラウパー14は一旦終了となった。

・・・そして10月30日のMANOWAR公演。本来ならば単独で記事ページを書きたいところだが、写真撮影完全禁止だったし、なにより正直堂言葉で表していいのかよくわからない。ただただ、幸せな空間であったとしか言いようがない。あの筆舌に尽くしがたい音響を体験すると、確かに「専用の機材じゃないとダメだ」と言い切るのもよく分かる。とてつもない音量ながらも、全く耳にダメージの来ない絶妙なバランス。そして、クラブミュージックやヒップホップなどでありがちなスーパーウーファーによる低音とは一線を画す力強くも全く不快感のない音圧は、まるで風が吹いているかのような聴覚のみならず触覚でも感知できる不思議なものであった。一度トラブルがあってPAが鳴らなくなり、程なく修繕して仕切り直しをした場面もあったが、このリカバリーの早さは専用の機材に専任のスタッフがあってこそのものであろう。
 ジョーイ・ディマイオ閣下の日本語MCも素晴らしかった。まず「こんばんは」とラッシャー木村を彷彿とさせる礼儀正しい一言からは始まり、数分間にわたって何も見ずに(もしかしたらイヤーモニターで音声による指示があったのかもしれないが)日本語で我々に語りかけてくれた。「俺達は世界で一番音の大きいバンドだ」「俺達は約束通り最高の機材を持ってきた」とラウパキャンセルから単独公演に切り替える根拠となる機材に関して説明したあと、「お前たちは日本のマノウォリアー。1人で1000人分のパワーを持っている」「マノウォーのTシャツを着れば、お前たちは無敵だ」と、傍から聴いたら一笑に付してしまうような言葉も、この場では異様な高揚感をもたらす。
 そして、ディマイオ閣下と日本を強く結びつけたアイテムであるところの「マムシ酒」をステージに持ち込み、マネージャーと思しき外国人男性とクリエイティブマンプロダクションの社員と思しき日本人男性を呼び込み、マムシ酒で乾杯しようとする。ところがこのクリマン社員はマムシ酒を拒否。しかも着ているTシャツがMANOWARではなく、ラウパ2日目のトリであるところのDREAM THEATERのTシャツ!なんという不届き者であろうかとおれを含むマノウォリアーたちが怒りに打ち震えるが、当のディマイオ閣下は寛大な心で穏やかにビールでの乾杯を許し、今度は英語で「三船敏郎と黒澤明とビートたけしとYOSHIKIに捧げる」と言って乾杯したマムシ酒を飲み干すのであった。そしてこの不届きなクリマン社員にふたたびMANOWARをラウドパークに出演させる旨を約束させたのであった。
 ライヴでも「他のバンドは演(や)るがマノウォーは殺(や)る」もできたし、「ヘイルヘイルヘイルアンドキル」もできたし、Kill With Powerでダーイダーイできたし(何のことか意味不明だと思うが、マノウォリアーになればわかる)思い残すことはない。
 そしてラストの「Black Wind, Fire and Steel」が終わった後に、「The Crown And The Ring」のSEが流れる中、ステージ上のモニターに映し出される「この今日10月30日、東京のManowarrior達が最高だったことを この素晴らしい日本全土に知らしめよう 我々はまた戻ってくる Hail and kill  MANOWAR」の文字に感激し感極まって涙を流すマノウォリアー達。もうこの光景が素晴らしすぎて、もう何も言えない。本当に行ってよかった。最高だった。ヘヴィ・メタルが好きで心から良かったと思えるライヴだった。
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EMPEROR東京公演 ~こうていののろい編~

 本編のEMPERORは1st完全再現。
 イーサーン(本当は“イーシャン”に近い発音をするらしい)は歌いながらも凄まじく複雑なリフを易易弾きこなす正確無比な演奏を聴かせてくれるが、オールバックに黒縁メガネ着用で全くブラックメタルの雰囲気なし。いつぞやのW.O.Aみたいに普段着にトゲトゲプロテクターといういでたちをされても困るけれども。サモスは長髪の間から鋭い眼光を見せてメタラー然としたルックスだが、定位置で黙々とギターを弾く。曲も演奏もいいので盛り上がるんだが、どこか冷めた風な印象を受けた。
 しかし、1st再現のために合流した初代ドラムのファウストが殺人の前科持ちのため来日できず、日本公演のみ2nd以降のメンバーだったタリム(こちらもMCを聞く限り“トゥリム”という発音のほうが近いと思う)がドラムを担当し、正確ながらも同時に凄まじくアグレッシヴなプレイを見せてくれた。プレイ的には微妙なファウストよりもすさまじい演奏をしてくれるため、日本だけラッキーだったといえばラッキーだったのかもしれない。勿論「ファウストのあのもたることが如何にもアンダーグラウンドってな雰囲気があっていいんだよ!」という意見も尤もだとは思うけれども。
 そして、なんといっても今回のツアーにヘルプで帯同しているZYKLON(サモスのバンド)のベーシストであるセクトデーモン(こちらもMCを聞くと“セクスダモン”に近い発音かと)が、見栄えのするルックスでガンガンヘドバンをかましつつ、ドスの利いたグロウルでコーラスも取っており、正メンバー達より目立っていた。ついDIE YOU BASTARD!のライヴでのスーパーヘルパー信二さん(現:DISGUNDER)を思い起こしてしまった。またやはりヘルプで参加しているキーボードのエイナル・スーベルグもステージの隅っこのほうながら、セクトデーモンとは対照的な良く言えばマイケル・シェンカー風、悪く言えば寂しい頭髪状況ながらも派手に頭を振り乱しながらあの冷ややかで荘厳なサウンドを奏でつつ、セクトデーモンとともにコーラスを取っていた。このヘルパー二人が大いに目立つことで会場を盛り上げていたと思う。
 それにノセられるかのように、イーサーンも客を煽りだしたりして、フロアーではモッシュが起こったりもした。最近はともかく、どうしても初期のブラックメタルとなると、ユーロニモスが標榜した「No Mosh、No Core、No Trends、No Fun」を純粋に守ろうとする人がいるため「モッシュはご法度」という印象があるが、イーサーンはモッシュが起こってる様子を見て満足そうにニコニコと笑っておられた。実際、ユーロニモスも単にデスメタルと明確な差別化を図るためのマーケティング戦略で言い出したことであって、そこまで本気で言っていたわけではないらしい。その辺りのギャップが災いして、真性でガチガチの原理主義者であるヴァルグ・ヴィカネス(BURZUMのカウント・グリシュナック)に殺される羽目になったのかもなぁ、などと思ってみたり。
 おれ自身もどこか冷めてる風に思う一方、やはりブラックメタルの歴史上最も意義のあるアルバムのひとつである「IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE」の楽曲群を聴かせられては興奮しないわけがない。1曲目の「Into The Infinity Of Thoughts」ではヘドバンをしまくり、3曲目の「Cosmic Keys To My Creations & Times」のイントロが奏でられると思わず「うおおおお!宇宙鍵ーっ!」とこの曲に付けられた変な邦題を叫んでしまった。4曲目の「Beyond The Great Vast Forest」が始まった時もやはり変な邦題である「巨森越え」を叫ぼうとしたものの、一方で冷めている風なおれの心が「きょしんごえ」と読めばいいのか、それとも「きょもりごえ」なのかよくわからなかったことを感じさせたので、叫ぶのをやめた。
 そしてハイライトはやはりEMPERORの曲の中でも名曲の誉れも高い「I Am Black Wizard」(さすがに邦題の「我は黒魔術師なり」とコールする気にはならなかった)ではフロアーからも一際大きな歓声が上がり、このあまりにも荘厳な音の海に身を委ねた。フロア前方ではクラウドサーフなども起こっており、20年の時を越え日本に降臨した闇の皇帝に生贄を捧げるがごとく、ステージに向かってサーファーが運ばれていった(勿論、ステージには上がれなかったが)。
 この曲が終わると、「IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE」にはもう1曲しか残っていない。イーサーンが「インノゥー!」(陰嚢ではない)とコールすると、こちらもあらん限りの声を振り絞って「サタナアッー!!」と叫び返す。そして本編最後の「Inno A Satana」が演奏されステージからメンバーが去っていった。
 勿論、こんなんで満足するわけがないフロアーからは「EMPEROR!EMPEROR!」とアンコールを促すエンペラーコールの大合唱。そしてさして待たされるわけでもなく、すぐにステージに再登場したEMPERORの面々は「Ancient Queen」を演奏。どうやら「IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE」の20周年記念盤のボーナストラックに収められていたようだ。おれは20周年記念盤は所有していなかったものの、デモ音源集「EMPEROR」と「WRATH OF THE TYRANT」のカップリング盤でチェックしていた。まぁ、なんともあっさりした曲であっさり終わったため、フロアーは虚を突かれたようになっているが、バンドは構わず「Wrath Of The Tyrant」を演奏。おれはこの日「WRATH OF THE TYRANT」のEPのジャケット柄のTシャツを着ていたので、気分は厭が応にも上がってゆく。CDで聴くプリミティヴブラック的なチープな音と違い、ライヴでは非常にクリアで力強い音で演奏されて新たにこの曲の魅力を再確認する。「いやいやいや、素人はコレだから。プリミティヴ・ブラックってのはあの劣悪な音質にこそ見出すべき価値があるのであってだなー」という意見も尊重はするけれども。
 そしてイーサーンが「クォーソン(クォートンと発音しているように聞こえた)に捧げる」とMCし、BATHORYのカヴァー曲「A Fine Day to Die 」の静かなイントロのアルペジオが奏でられると、目の前にいるBATHORYのTシャツを着ている背の低い外国人男性が振り向いて、おれに向かって己のTシャツを指さし「BATHORY!BATHORY!」と興奮しながら口走っていた。おれが彼に「Quorthon is genius ! BATHORY is The Greatest Band!」と声をかけるととても嬉しそうに飛び跳ねていた。イーサーンの咆哮とともにシンプルで印象深いリフが刻まれると会場が一気にヒートアップし、この日の最後の曲に酔いしれた。
 公演前は日本のみ単独公演でタリムがドラムということで「1stの再現だけでなく、2nd以降の曲も何曲かやるのでは?」と噂されていたが、結局は海外フェスのセットリストと全く同じセットでの公演となった。イーサーンも当初は何曲か考えてはいたらしいが、やはりEMPERORの曲は複雑怪奇な構成のため、セットを複数にするとリハーサルに時間を掛けなければならないだろうし、タリムは実質ミュージシャン業を引退しているため、時間もなかなか取れないとのことであった。しかし、とても引退したプレイヤーとは思えない凄まじい演奏であった。
タリム「EMPEROR 日本公演に向けてのリハーサル」

 
 とは言え、一方で冷めている自分がいるというのもまた事実なわけで。やはり、これはこの再結成EMPERORは、あのブラックメタルのEMPERORとはまた別のものであるという事実が突きつけられたからであろう。「モッシュなんか起きてて気分が悪かった」「イーサーンのメガネはどうにかならんのか?」という意見もちらほら聴かれたし、やはりEMPERORが現役時代に纏っていたであろう禍々しいオーラというものは全く感じる事はできなかったので、EMPERORの持っていたブラックメタル的な要素を期待していた向きには到底満足のできないものだったのだろう。
 しかし、ヘヴィ・メタル・バンドEMPERORとしてみれば、本当に素晴らしいライヴだったわけで、あのニコニコと笑うイーサーンをみることができたのも嬉しかった。ある意味、ブラックメタルという呪縛から解き放たれた公演を体験できたわけであり、今後また再結成され、2ndや3rd、4thの曲を演奏するライヴが日本で観られるのかどうかは分からないが、その機会に恵まれれば、純粋にメタルバンドとしてのEMPERORを楽しむことができるのではないかと期待している。
EMPEROR 「The Burning Shadow of Silence」(東京公演)

EMPEROR 「Cosmic Keys To My Creations & Times」(東京公演)


 公演終了後、汗だくのまま夏の夜の道玄坂を歩き、駐車場に停めていた車に乗り込む。明日は朝から仕事なので早く帰って休もうと思い、家に向けて出発。途中、横道から黒塗りフルシルエットの一桁ナンバーのキャデラックが前に出てきて、なんだかやだなぁ、QUIET RIOTの「Slick Black Cadillac」は好きだけどさぁ、などと思っていると、後ろからパトカーが。なんでこんなイヤーな車に前後挟まれてんだよ、とオセロの石になったような気分になるが、首都高に乗ろうと高樹町インターの手前まで差し掛かった時に後ろから「前の車、停まりなさい!」との声が。あのキャデラックはヤバイ車なのかな、などと思っていると「そこの水戸ナンバーの軽自動車、左に寄せて停まりなさい!」……ええっ?おれかよ!?インターに入るのに片側3車線の一番右のレーンを走ってたというのに、一番左のレーンまで車線変更して、停車。パトカーから二人の警官が出てきて窓を開けるように促される。
QUIET RIOT 「Slick Black Cadillac」US FESTIVAL

※大ヒットアルバム「METAL HEALTH」収録のゴキゲンなR&Rナンバーで、QRの中で一番好きな曲。作曲はランディ・ローズで、彼が在籍していた頃に出た2ndアルバムにも収録されている(勿論、ギターはランディ!)。

 警官いわく「免許証見せて。なんで停められたか分かる?ナンバー灯が切れてますよ。整備不良です」とのことで、車を出て、リアのナンバー灯の確認をさせられる。テールランプやブレーキ灯ならともかく、ナンバー灯なんて気づくかよぅ、トラップじゃねえか、などと思いつつ車から出てきたおれであるが、傍目から見ると汗だくで長髪の色白で黒尽くめ(しかもTシャツの柄がこれ)の男だったので、警官もおそらく「こいつは今話題のアレを所有しているのでは?」と思ったのだろう、切符を切るのをやめて、職務質問に入った。「整備不良には気付いてなかったようなので、故意ではないのでしょう。これは不問にしますので、明日にでも付け替えておいてください。あと、車の中を見せてもらいますのでご協力をお願いします」と、車内を引っ掻き回しだした。職務質問の用件は『警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。』ということが法で定められているのだが、整備不良も犯罪とはいえない間でも行政罰相当の反則ではあるし、それを見逃してもらった立場としてはまぁ断れないなと思いつつも、何も出てこないことは明白であったので凄まじく余裕ではあった。とは言え車の中を弄くり回されるのはやはり気分のいいものではない。「いや、形式的なものですから」「今、都内は結構物騒なんで」と一人の警官が言い訳する一方で、もう一人警官が黙々と車内を荒らしていく。言い訳している警官も財布を見せろなどというので見せてやると、「他人名義のカードなどは持っていませんか?」などと完全に犯罪者扱いである。しかし、清廉潔白なおれはそんなものを持っているはずもない。警官が業を煮やし、もう一人に「なにか出てきたか?」と問うと「ダメです、CDしかありません!」との答えが。「ダメです」ってなんだよ、もう何か出てくるの前提じゃねえか、と呆れる。警官からすれば、車から出てきたおれを見てさも警ら中に田代まさしや清水健太郎のようなボーナスキャラにでも出くわしたかのような期待感があったのだろうが、お生憎様である。まぁ、他県ナンバーのしかも軽自動車なんぞでわざわざ都内の繁華街に来るような奴はまともではない、何かそういうものでも仕入れに来た商売人なのであろうと推測したのだろうけれども。
 何も出てこなかったので警官も下手に出て「すみませんねえ、ご協力ありがとうございました、被災地の様子は今でも大変ですか、頑張ってください」などと言って、ようやく身柄が解放された。このあとナンバー灯の整備不良で停められてもいいように、言い訳警官の身元を確認。渋谷警察署の●●巡査ね、と。停められたらこの人に確認するように手はずを整えて出発した。
 やれやれ、と思いつつ首都高に乗り走っていると、やたらに左レーンが混んでいる。箱崎で隣のレーンに合流しないとなぁと思って左ウィンカーを出すと、なんと目の目の前で事故処理を行なっており、合流できない状態に。警官が出てきて「すみません、左に行くんですか?この事故車の前のスペースが空いてるんで、そこから入ってください」と誘導される。なんだかなぁ、ブラックメタルの呪縛から解き放たれたと思ったら、別な呪いでも掛けられたのかな、などと思いつつ、這々の体で家路に急いだのであった。


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EMPEROR東京公演 ~SIGH編~

 昨日(7月17日)、EMPERORの東京公演が行われた。おれも当然のごとく観に行った。
emperorticket.jpg

 午前中に仕事を終わらせるはずがちょっとズレこむ。首都高でおきまりの渋滞につかまり、会場のO-EASTに到着したのは17時を若干回ったあたり。開場は18時なのだが、先行の物販が17時から始まるというアナウンスを聞いていたために、遅くとも16時30分までに到着しておきたかったものの、この時間の到着では当然長蛇の列が形成されたあと。 とりあえず並んだものの、先行の物販が終了する17時45分までに売り場に辿りつけず。
 仕方なく、向かいのコンビニでトイレを借りることにするが、そこもまた長蛇の列。店内の客もみんな黒尽くめの異様な空間。ブラックメタルである。ここのトイレはなんとオートロック式。防犯のため、店員が遠隔で解錠する方式となっている。すなわち、前の方の用が済んだら、ドアを閉めないようにしてトイレに入らなければならない。列の途中うっかり用が済んだ方がトイレのドアを閉めてしまったため、ドアが開かず、次の人がいちいちレジまで行って解錠するようにお願いしに行くというケースも見られた。勿論トイレの内側からは施錠解錠はできるので、用を足している間はドアを閉めても問題ないようにはなっている。このようなことをしないとコンビニのトイレなどというのは犯罪行為やそれに類するようなことが容易に行われてしまう空間なのだろう。田舎者にとっては結構なカルチャーショックである。放射能渦巻く世紀末クライムシティのいわき市(勿論、死ぬほど大げさに話を盛っているので本気にしないように)でさえ、こんな防犯仕様のトイレがあるコンビニはない。さすが渋谷の道玄坂は怖かとこね、恐ろしかばい。結局は誤ってオートロックを作動させるようなこともなく、スムーズに用を足し、コンビニを後にした。

 会場に戻ると既に整理番号の呼び出しが始まっていたが、おれは800番代だったのでまだまだ順番は後であった。整理番号がそれほど前の方じゃなかったため、この日は後方の方でゆっくり観ようと思っていた。で、いざ入場してみると、みんな物販の方に行っており、フロアーにはそれほど人がいなかったため、急遽予定を変更してフロアの前の方に陣取る。
 今日のオープニングアクトはSIGH。是非とも新ギタリストの“KADENZZA”YOU OSHIMAこと大島雄一さんを観ておきたいと思っていたので、ギターアンプの斜め前のマイクのところに身をおいた。すでにSIGHのライヴでは定番のドクロと燭台を置いた祭壇のようなテーブルが用意されている。
 大島さんに関しては、昔BURRN!の輸入盤レヴューでKADENZZAの「INTO THE ORIENTAL PHANTASMA」が取り上げられており、『福島県いわき市在住のYOU OSHIMAなる人物のプロジェクト』と書かれ興味を惹かれた。その後しばらくして東京に行った際に、西新宿の「GOLD」(今は多分無くなってるのかな?)でこのアルバムを見つけて、購入。帰宅後に聴いたら凄いのなんの。「こんな人がこんな田舎のお隣の市に住んでるのか-」と当時はバンドなどをやってないし、ギターも殆ど部屋の飾りと化していた聴き専のおれは、プレイヤーではなく単純に音楽鑑賞の対象として大島さんに度肝を抜かされていたのであった。バンド活動を始めてからも、いわきのバンド関係者に大島さんのことを訊いてみたり、震災の時に安否情報を探しまくったりしたわけだが、特に情報を得られることはなかった。いつぞやSIGHの英語版ツイッターで「我々はKADENZZAを忘れてはいけない」みたいなつぶやきがあって、「おや?」と思ったのだが、後日SIGHの新作にゲスト参加することが発表され、びっくり仰天。大島さんが消息不明の際どうなっていたかの衝撃的な事実が明らかになったりしたのだが、これも含め、KADENZZAに関しては後日機会があれば改めて記事にしたい。
 そして開演時間を待つが、ぼっち参戦(たいがい東京にメタルのライヴを観に行くときはぼっちにならざるを得ないのだが)のため、非常に退屈である。タブレットは車の中に置き忘れてしまったし、デジカメを持ってきてはいたものの、最近のクラブギグでは珍しく撮影禁止のアナウンスもされていたのでデジカメはポーチから取り出すことはなかった。当然、撮影画像は一切なし。結局結構な人達がスマホで撮りまくってましてけど。場内のBGMはキング・ダイアモンドの曲ばかりかかっていたので、去年のラウドパークのドタキャンを思い出しちょっと鬱になる。開演前にSIGHの川嶋さんが現れテーブルなどのチェックを行っていると、そこかしこから「カワシマー」と声が飛んでいた。
 定刻を過ぎるとEMPERORのマネージャーが現れ、SIGHが登場する旨をコールすると、歓声が上がり後方から圧力がかかる。1stアルバムからの「A Victory Of Dakini」でおどろおどろしくライヴがスタート。1stの曲ゆえ元々はミカンニバル博士のパートがない(ライヴでは途中からミカンニバル博士が歌うパートが設けてある)ため、曲の途中からミカンニバル博士が登場。頭巾で顔を隠し、露出度の高い衣装からは妊娠して膨れ上がったお腹をさらけ出していた。先月既にSIGHのFBでその衣装の画像を見ていたため「あー、ほんとに妊婦だわ」くらいにしか思わなかったが、事前情報無しだったら結構ショッキングな姿だったかもしれない。それにしても頭隠して体隠さずって“けっこう仮面”みたいだな、などと巨匠・永井豪先生の作品名がふと思い浮かぶ。頭巾を外したミカンニバル博士は、1月にUNITで見かけた時よりは当然ながらふっくらとした顔をしていた。おれが陣取った先のマイクスタンドは実は大島さんのポジションではなくミカンニバル博士のポジションだったが、ちょっと考えれば分かったことである。とはいえ、妊婦の方の顕になったお腹なんぞ、独り身ではなかなかじっくり観る機会もないので、結果オーライ。可能性は低いが、まだ見ぬこの先自分の奥さんになる女性がいざ妊娠した時にテンパらないよう、ここで慣れておくことにした。
 お目当ての大島さんはレコーディングプロジェクトに特化していたKADENZZAではまったくライヴ活動を行なっていなかったので、おそらく正式なライヴ自体もう10年以上やっていないだろうし、今回のように1000人を超えるようなライヴは初めてだと思う(BLACK MARIA時代のライヴ活動についてはよく知らないのであくまでも憶測)ので緊張した面持ちだが、このミドルテンポの曲のリフを確実に刻んでいる。前の方とはいえ、このポジションだと足元が見えないのでどういう機材を使っているのかわからないが、アンプ(マーシャルJCM2000DSL100。おそらく持ち込みではなくO-EASTに備え付けてあるものだろう)はクリーンチャンネルで鳴らしているので、アンプではなくエフェクターで歪を作っているのだけはわかる。あとで、足元のペダルとかWEBで公開してくれないかな、などと思ってみたり。大島さんがアンプ1台4発キャビ1台で鳴らしている後ろには、おそらくというか間違いなくEMPERORが使用するであろうBLACKSTARの“3段積み”が、うず高く“2列”並んでいた。
 曲中に川嶋さんが燭台に火を灯そうとするが、なかなか火が点かない様子。四苦八苦しながら火をつけると、蠟が焦げるような臭いが鼻をつく。ミカンニバル博士と二人で分厚い聖書を模した小道具に火をつけるところもなかなかうまくいかない感じだったが、いざ火がつくと会場から歓声が上がる。曲が終わった後のMCで「これだけたくさんのお客さんがいると、酸素が薄くて火がなかなか点かない」と愚痴ると会場から笑い声が漏れる。「できればみなさん、呼吸をセーブしてほしい」などとのたまったので「それ無理ー」と野次を飛ばす。
 そのあとは現状での最新作「IN SOMNIPHOBIA」から「The Transfiguration Fear」が演奏される。「うーうーうーううっうーうー♪」というコーラスが会場の其方此方から聞こえてくるので、SIGHのファンも結構な数来ていることがわかる。サビのミカンニバル博士が歌う「Into Darkness You're Falling, Into Fire~♪」というところもしっかりと歌いたくなるとてもキャッチーな曲だ。
 そして立て続けに同アルバムからの「Purgatorium」が続く。このアルバムの1曲目と2曲目を逆に演奏する形になる。最初にこの曲を聴いたときは「え?SIGHがメロスピになっちゃった……!?」などと思ったものだ。疾走するドラムにちょっとネオクラが入ったかのようなクサいメロディ。昔からSIGH自体はメロディを重視しているバンドではあったし、シンフォニックな演出も初期から散々していたが(CRADLE OF FILTHやEMPERORがシンフォニックの要素を入れたのは先行者であるSIGHの影響だったりする)、ギターがクラシカルっていうのはあんまりなかったのではないかな、という印象があったので虚を突かれた感があったものである。特にレコーディング当時のギタリストである石川さんはそういうイメージがないので、なおさらであった。そして、いざ今回のライヴになると“KADENZZA”でクラシカルなシュレッドプレイを聴かせていた大島さんがSIGHに加入したため、これはおあつらえ向きなメンバーが加入したといえよう。中間部ではミカンニバル博士の大島さんは自分の手元よりも他のバンドメンバーの方を見てる事が多く、この展開の激しい曲調に備えている様子が見受けられた。
 そして続くは前作「SCENES FROM HELL」からやたらに勇壮なオーケストレーションで、クラシカル……ではない大正時代が舞台の昭和の日本映画のサントラみたいな、どうしてもイメージが帝都物語とか丸尾末広の憲兵のイラストを思い浮かべてしまうような「The Soul Grave」が演奏されるというよりは鳴り響いてきた。非常に日本的なメロディで、何故か思わず「はっこねの山は~天下の険~♪函谷関も~もーのなーらずぅ~♪」などと「箱根八里」を口ずさんでしまう(多分、おれだけだと思う)摩訶不思議なナンバーだ。
 そして残り3曲は更にその前のアルバム「HANGMAN'S HYMN」から「Introitus/Kyrie」「Inked In Blood」「Me-Devil」を立て続けに披露。その間にミカンニバル博士は血糊を頭からかぶって血まみれ状態。マイクもその時血糊まみれにシてしまったらしく、会場から買い取った模様。数年前はうちのバンドもしょっちゅういわきソニックのマイクスタンドを壊したりして弁償したなぁ……ソニックのスタッフには「新品になるんでありがたいっす。どんどん壊して下さい」等と言われる始末。しかしつい最近、ラーチカさんがミキサー卓に水をぶちまけたときはさすがに「これを弁償するには内臓でも売らないと……」と戦慄したが、幸いミキサーは故障せずに済み、ラーチカさんが統括責任者の新妻タツミチ氏にやんわりとした口調でありながらも辛辣な言葉選びで抗議される(怒鳴られた方がマシなくらいじわじわ効いてくるらしい)のみで済んだのは幸いであった。
 閑話休題、終盤に差し掛かって大島さんも余裕が出てきたようで、客席に向かって手を振る(と言うよりは手首をくるくる回す)ような仕草をしたり、アクションも大きくなってフロントマン然とした振る舞いになってきた。SIGHは2人のヴォーカリストである川嶋夫妻のみがフロントでアクションをし、インスト隊は3人とも定位置で黙々と演奏するバンドだったのだが、新入りの大島さんはこの2人に割って入るという事はなくとも、上手側でその存在感を積極的にアピールしているのは前任の石川さんと大きく異なる点だろう。そして、アルバムのフレーズを忠実に再現するタイプの石川さんと違い、派手なフレーズを隙あらば入れまくり、連続スウィープをかましたりするなど、オリジナルギタリストではない上に短期間のリハーサルでライヴに臨まなくてはならないところを逆手にとって、自分のオリジナリティを随所に入れ込んでいる印象があった。おれのすぐ後ろにいるガキンチョの集団が曲間で「サイ初めて見たけどギターの人かっけえし、うめえ、ライヴ終わったらCD買おうっと」などと口々に言っていたが、大島さんが参加してるアルバムはまだ完成していないので、買おうと思っても売っていないのだった(ただCANDLELIGHT RECORDSのコンピ「LEGION III」に1曲新作のデモが収録されている)。川嶋さんも剣に火を点けて火柱を上げるなど派手なファイアパフォーマンスをを織り交ぜながら歌をがなりたてる。そして「Me-Devil」の演奏が終わりSIGHのステージは終了。後ろのガキンチョが「サイ良かった!思ったよりクサかった」「うん、クサかったな」「すっげえクサかった!」……字面からみると貶しているようだが、これは一応褒めてるというか、かなり絶賛している様子であった。やはりブラックメタルといえどもシンフォニック系はXAMETAL系のリスナーが多いようだ。そして、セットチェンジの際、川嶋さんが床の血糊を拭き取ったり、テーブルを片付けているさまを見て後ろのガキンチョは「エライなぁ、バンドの人なのに片付けを手伝ってる」と感心していた。……ライヴハウスに出ているアマチュアや前座なんてみんなそんなもんなんです。
 サポートはSIGHだけなんだしもっと曲数やってもいいんじゃないかな、正直物足りない、もっと観たいという感じはしたが、身重であるミカンニバル博士の体調や、加入して間もない大島さんとのリハーサル期間を考えると仕方がないとも言える。当然、ミカンニバル博士はお産をしなければならないので、翌日の大阪公演を以ってライヴ活動はしばらく休むとのこと。その間に新作「GRAVEWARD」の制作作業を進めるのだろう。殆どのレコーディングは東京のスタジオで行うそうだが、ギターパートのレコーディングやミックス、マスタリングは大島さんの自宅スタジオで行なうとのことである。なにしろ大島さんはいわき在住である。SIGHの新作がいわきで作られてるなんて、なんだか胸が熱くなるな。
SIGH Live At Maryland Deathfest VII

※SIGHの2009年のライヴのプロショット映像。最近は見られない川嶋さんのライヴでのキーボード演奏が見られる他、おれの大好きな「Hail Horror Hail」やラスト2曲の「Countess Bathory」「Black Metal」というVENOMカヴァー連発でオイシイ選曲。そういえば4月にVENOM来日がキャンセルになったっけ……

新日本プロレス茨城大会を観る ~後編~

 前回雪云々のことを書いた直後、すさまじい大雪で地元が停電断水を起こし、信号機も点灯しない有り様で、震災のときの孤立っぷりを再現することになったがすぐに復旧して一安心。しかし、その後もなんやかんや忙しく、1月経ってやっと前回の続きに取り掛かることができた、が、すでに1ヶ月経ってしまい記憶もあやふやだが、何とか思い出すことにする。

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 エントランスから体育館のアリーナに入ると、すでに物販の前には人だかりが。お祭りのような賑いである。スタンドに目をやると応援旗が下がっているが、プリンス・デヴィットと内藤哲也の2つだけ。これはちょっと寂しいかも。エントランスでご当地茨城県が誇るアマチュアレスリングの名門校「霞ヶ浦高校」のジャンパーを着ていた坊主頭の高校生を何人か見かけたのだが、おそらく同校出身者であるところの平澤光秀がその正体と言われている覆面レスラー“キャプテン・ニュージャパン”の応援に来ていたのかもしれない。にも関わらず、キャプテン・ニュージャパンの応援旗がないというのは如何なものかとも思うが、キャプテン・ニュージャパンの応援チームや応援旗自体が存在しているのかどうか怪しいというほど微妙な位置に存在するレスラーであることも事実。しかし、この日のメイン試合の8メンタッグの中にキャプテンも名を連ねており、さすがは地元(と言っても出身地は違う)縁のレスラーだからこの扱いなのか?ということでますます正体は平澤説の疑いが深まっていくばかり。
 会場をグルっと回ってみると、リングの傍らには尾崎リングアナがいて、何やら書類に目を通しているのを発見。おそらく当日のイベント進行の確認をしているのだろう。我々の世代で言えば新日の名物リングアナといえば、数々の前口上の名調子や、新日愛のあまりに他団体を貶してしまう事で有名な田中ケロ氏だが、その後を受けた(その間にもう一人いたけど)この尾崎リングアナも田中氏ほどの強烈な個性はないが、その美声とルックスで、女性ファンを増やすのに大いに貢献しているであろうことは間違いない。それにしてもこの方を過去に散々「この若いリングアナのあんちゃんが云々」などと言っていたのだが、おれより年上だと知ったときは本当にびっくりした。40過ぎにはとても見えない。
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 物販では中邑真輔の「頭巾」と、棚橋弘至のTシャツを購入。なんともニワカ丸出しの選択だが、本日のサイン会担当が棚橋なのでとりあえずサインを貰うために購入。中邑の頭巾はネタで購入。しかし、新日復活劇を目の当たりにした立場からすると、恥ずかしげもなくこの2大エースをリスペクトせざるを得ない。というわけで、棚橋サイン会の列に並ぶ。
 列を進んでいくと、物販の方で鈴木みのるが自らTシャツ売りをしている姿が目に飛び込んできた。うわ、あっちも行きてえ!と思ったが、秩序を乱さないでおこうとぐっとこらえる。サインをこなす棚橋の姿を見ると、ただ単に仕事でやってますという素振りを見せず、ファンひとりひとりと制限のある中でも積極的に交流をしようという姿が見られる。レスラーとしては勿論、職業人としての意識の高さには感心するばかり。うーむ、この人がおれと同年齢(しかも学年はあっちのほうが一つ下)というのでこちらも身を正さなくてはという気になる。Tシャツにサインをもらうと「いやぁ、長髪男子ってのは貴重ですよね!同じ長髪の人がいると嬉しくなります!お互い長髪で頑張りましょう!」と握手しながら言われる。なるほど、こりゃ人気がでるわと納得。
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 物販の物色を終えて席につく。特別リングサイド3列目というなかなかの席であったが、発売日から結構経ってチケット購入でこの位置ではまだまだ茨城は新日本の波に乗り切れていないと痛感。水戸の格闘居酒屋の方の尽力で、新日のみならず、プロレスの水戸興行が成り立っていると聞く。この手の地方興行に絡みがちな地元の反社会的勢力関連の方々と思しき方々の姿も見られず、とても雰囲気がいいのも、そうした地元の招聘元となってる方の努力の賜物だろう。ライヴもそうだが、そういった方々の心意気に応えるのには観客の動員が一番。前編でも書いたが前日の福島(郡山)での興行は超満員だったとのことで、これから郡山での興行は増えてくるだろう。茨城のプロレスファンも頑張ってほしいものである。
正面の花道(体育館のステージ)にはスクリーンがあり、そこではブシロードのカードゲームのプロモーション映像や、新日のイメージ映像などが映しだされている。するとやにわに聞き覚えのあるコーラスが流れ、ザクザクと刻むヘヴィなリフが続く。おおっ、NIGHTWISHの「Wish I Had An Angel」ではないか。やはりメタルの流れるイベントはいい。気分が俄然盛り上がってくる。曲の終盤になるとどんどん音量が上がっていき、会場中が轟音に包まれる。なんだこれは、ただのBGMではないのか?そして爆音となった「Wish I Had An Angel」が終わると、開演を察した観客から一斉に歓声が沸き上がる。尾崎リングアナがリングに上がり、イベントの開演と今日の対戦カードが読み上げられ、そしておなじみワールドプロレスリングのテーマ曲であるEMERSON, LAKE & POWELL(ELP或いはEL&Pと呼ぶと、カール・パーマーに怒られるので注意)の「The Score」が鳴り響く。キース・エマーソン、グレッグ・レイクがEL&Pの再結成を目論んだものの、当時人気絶頂だったASIAにいたカール・パーマーが参加せず、同じく頭文字がPのコージー・パウエルが参加した一種のスーパーグループ的ユニットだったが、EL&Pほどの人気が得られずにアルバム1枚で消滅。しかし日本に於いてはワールドプロレスリングのテーマとして認識されているため、曲名やバンド名はわからずとも、曲を聞けば「プロレスのテーマ曲ね」と分かる人も多いだろう。
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NIGHTWISH 「Wish I Had An Angel」

EMERSON, LAKE & POWELL 「The Score」


 試合の内容は新日のサイトを見ていただくとして、あとは当日の画像を貼っておく。リング調整時の休憩時間にはDRAGOPNFORCEのアルバムをかけっぱなしにするというメタラーにとって非常に居心地のいい空間なので、メタラーは積極的に新日の会場に足を運ぶべし。勿論、ノアやDDTや全日など、いろんな団体の会場にも足を運んでいただいて、新日一強時代から更に上のプロレスブームが来てほしいものである。
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※エル・デスペラードと小松洋。対戦相手の田中翔も小松と同時デビューのヤングライオンだが、デスペラードの正体が三上だとするとキャリアは2年ほどしか違わない。それにしてもBUSHIへの女性ファン(女児も含む)の歓声は一際大きい。たしかに全日時代の素顔を晒してたときも女性人気が高かったが、それを踏まえて覆面を被り新日に移籍してからも女性ファンがついてくるというのは、ライトユーザーだけでなくコアな若い女性ファンも増えていることの顕れだろう。
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※ベテランタッグの永田さんとライガーさん。特にライガーさんは新日の現役最年長。しかし、それはリバプールの風になってしまった山田恵一の年齢によるものであって、ライガーさんのプロフィール(1989年に永井豪氏邸で誕生)だと、最年少の高橋広夢や田中翔らと同じ年になってしまうという不思議。それにしても永田さんの入場テーマはやたらに格好いいが,、タッグマッチのためパートナーのライガーさんのテーマが聴けなかったのは残念。「怒りの獣神」が鳴るともっとテンションが上がるんだがなぁ。ただ「あの全身タイツが奇跡のバイオアーマーw」となってしまうのが困る。
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※ライガーさんのテーマは聴けなかったが、こちらの四虎ことタイガーマスク(4代目)のテーマはきっちり流れた。でもあまりにも昭和なこの曲はいまいちノレないのが正直なところ。しかしこのように彼が空中で静止しているかのような写真がとれたのはちょっと嬉しい。それにしても本間朋晃の会場人気はすさまじい。オカダや棚橋や中邑にも全く遜色のない歓声が飛ぶ。彼の傍に倒れている対戦選手がいようものなら会場中から「こっけっしっ!こっけっしっ!」の大合唱。彼はちょっと悲しそうな顔をして自分の額を指さすと、相手に向かって地球の引力のみで倒れ込むヘッドバット「こけし」を敢行。この日は小こけし(リングのマット上で敢行するこけし)1回、こけし(トップロープから敢行する正調のこけし。場外に倒れている相手に向かって行なうこけしは「大こけし」)1回を繰り出すも、いずれもヒットせず。画像は小こけしを外して痛がっている姿。
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※客席の中で暴れながら登場する飯塚高史。でもご覧のとおり観客は全員笑顔。スキンヘッドの巨体がリング下を左右に行ったり来たりするさまは、この日の3日前に対バンした義狼魑武掟羅亜のヴォーカリスト、クルミさんを彷彿とさせる。対戦相手組にいる天山広吉はかつて飯塚と友情タッグなどというものを組んでいた。あの頃のGBH周辺の組織の変遷はCHAOSができるまでずいぶんいろいろあったなとふと思い出してしまう。njp25.jpg njp26.jpg
※天山のタッグパートナーといえば小島聡。いわゆるテンコジ。この人の実兄がジャパコア界の大御所“鉄アレイ”のヴォーカリストであるブタマンさんだというのはあまりにも有名。この試合での小島のフィニッシュである剛腕ラリアットを受けた外道。まるで2回転ぐらいしたんじゃないかと見紛うような見事な受けっぷりはまさに芸術。技を繰り出した小島もこれには感激したようで試合後に「外道さんは最高のレスラー、尊敬しています」と思わずツイート。いい話だが本当にそれでいいのかと突っ込みたくなるも、ミスター高橋暴露本が出て以降もう長い年月が経っているので、却ってこうした開き直りがいい方向に出ているのかもしれない。
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※CHAOSの中で浮いている感じがする高橋裕二郎。内藤とのタッグユニットNO LIMIT時代の輝きが懐かしい。頑張っている事が痛いほどにわかるだけになんとか壁を破れないものかと祈りたくなる。一方、中西学はデビューしてから中西時代の到来を期待されながらも、IWGPを戴冠しても時代の盟主にはなれなかった感がある。しかしベテランになってからの野人キャラでブレイク。邪道外道なども決してスタープレイヤーではないが、名ジョバーとして名を馳せ、現在はブッカーとして実質上新日の興行の多くの部分を仕切る立場である。スターになるばかりがすべてではないということか。
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※鈴木軍のTAKAみちのくとCHAOS邪道の対決。ロープ際でTAKAが珍しくクリーンブレイクすると会場中からどよめきが起こる。しかし相手が邪道では仕方あるまい。二人共モノノフ(ももいろクローバーZのファン)なので、どこか通じ合うものがあるのだろう。
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※場外乱闘を繰り広げる鈴木みのると矢野通。鈴木が新日侵略を開始して後IWGP戦線で棚橋や中邑などと抗争を繰り広げてきたが、現在は矢野通との抗争に落ち着いてしまっている感がある。ヒール同士の抗争ってのも如何なものかと当初は思ったが、CHAOSがもはやヒールユニットの体をなしていないまさに混沌(chaos)状態のユニットとして成立してしまっているため、ヒール同士の抗争にもおかしな説得力があるというか……矢野の人を喰ったキャラの良さ、コーナーマット外しなどのヒールとしての職人芸などに加え、アマレスの学生王者だったという実力の裏付けがあるというのも、格闘路線のレスラーだった鈴木と絶妙な整合感を感じさせる所以なのかも。
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※BULLET CLUBの総帥プリンス・デヴィットとバウンサーのバッド・ラック・ファレ。この二人は新日名うてのベビーフェイス外国人だったが、突如ヒールターン。ジュニアの救世主とも言われたデヴィット、青義軍として永田さんを支えたキング・ファレの変貌には度肝を抜かれる。この二人のみならず実は善人オーラが出まくりなメンバー揃いのBULLET CLUBに於いて、生粋のヒール感を醸し出しているザ・ヤング・バックスのマット&ニックのジャクソン兄弟。
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※本人はヒールのつもりだし、雰囲気からルックスから言動から何をとってもヒールなのに、もはやヒール扱いしてもらえない人気者の真壁刀義。ヒールターンしたデヴィットと袂を分かつたかつてのジュニア王者タッグアポロ55のパートナーだった田口隆祐。そしてTNAのモーターシティ・マシンガンズ時代からのお気に入りのスタッズ&レザーをまとうパンキッシュな外国人アレックス・シェリー。現在シェリーとタイムスプリッターズを組む、個人的に新日ジュニアで一押しのKUSHIDA。そのせいか自分のバンドの曲で1曲、期せずしてKUSHIDAの入場曲にちょっとだけ似てしまったリフの曲があるのは内緒だ。別にKUSHIDAの入場曲が好きだというわけではないのだけれど……
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※どんなに悪ぶっても性格の良さが滲み出てしまう、カール・アンダーソン。BULLET CLUB加入の際にヒールターンしたが、それ以前にもGBH→CHAOSとヒールユニットに所属しており、矢野から制裁を受けて追放されてしまったのも人の善さがどうしても出てしまうためだったのではなかろうか。善人オーラ出まくりなのはアンダーソンの相方であるドク・ギャロウズもそうだ。CMパンクの禁欲主義社会にいたときはあまりぱっとしなかったうえ、IGF時代は猪木自身からダメ出しを食らっていたが、今や立派なタッグチャンピオン。キング・ハクの息子であるタマ・トンガもやはり善人オーラがにじみ出ている。
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※善人オーラ醸成ヒール集団のBULLET CLUBに対し、ヒール以外の何物でもない雰囲気をまとう鈴木軍のタッグチームK.E.S。椅子を持って挑発するデイビー・ボーイ・スミスJrと、長髪の“ジ・アメリカン・サイコ”を称する2mを超える長身のランス・アーチャー。一方この日は相棒TAKAではなくK.E.Sとタッグを組んだタイチ。昨年、会場で相棒が客に野次られたことを不満に思いツイッターで愚痴を書いたところ、「ヒールがそんなことでいちいち愚痴るんじゃねえ」と説教ツイートされていた。説教していたのはDIE YOU BASTARD!の木村さんだった。
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※NEVER無差別級タイトル戦線で抗争中の王者・内藤と石井。翌週のタイトル戦で石井が王座を奪取。このところの内藤のスランプっぷりで株が急降下中、対する石井が昨年のG1以降名勝負製造マシーンと化しダイブレイクしたので順当な結果といえる。そして、IWGPの絶対王者として君臨するオカダ・カズチカ。バディファイトのCMの影響で若いのに「オカダさん」と呼びたくなる。
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※キャプテンニュージャパンがメインカードに登場したのは、やはり平澤光秀の出身校が茨城だからか。とはいえ内容はいつものキャプテンだった。対して、今日のメインでフィニッシュを決めた後藤。柴田との同級生絡みが巧く行ってるのかどうかよくわからないのはこの人が天然なせい。
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※ジャケットを脱ぎ捨てる中邑とYOSHI-HASHI。このコンビの妙な信頼関係というか、中邑のYOSHI-HASHIに対する弄りっぷりは絶妙。IWGPインターコンチネンタル王座を1.4で中邑から奪取した棚橋。中邑がIC王座の価値を高めたところで、棚橋と絡むことによって、ついにIWGPヘビーではなくICが1.4のメインとなった。やはりこの2人の影響力は別格なのか。
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新日本プロレス茨城大会を観る ~前編~

 今年の冬は本当に寒いが、それでも雪が降らずにいてくれた。1月のEXTREME THE DOJO 番外編の日も凍えるような寒さだったが、雪ではなく雨が降っていた。その後も天気予報では雪の予報が出ても、実際に降雪はない日が続いたのだが、ついに雪が降ってしまったのである。それも水戸にプロレスを観に行く日にだ。まったく、天はおれを素直に遊ばせるのが余程嫌いらしい。
 電車ではいつ止まるかわからんので、本格的に降り出す前に車でおっかなびっくり行くことにしたが、スリップよりも前方の視界がやたらに悪いのが参った。それでも無事会場に到着。早めに出てしまったため、開場時間より1時間以上早く到着してしまった。会場入口の前に横付けされている新日ライオンマークがでかでかと描かれた機材車を見るにつけ、嫌が応にもテンションは上がっていく。
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 開場1時間前ながら入口付近には列ができていた。当日券を求める来場者の列のようだがいちいち確認するのに外に出るのも嫌なので車内で待機。タブレットで前日の福島大会の様子を見ると、月曜だったにも関わらず超満員だったとのこと。それに比べると茨城は当日券が出てるので、満員というわけではなさそうだ。だが、この早い時間で既に駐車場は結構埋まっているし、当日券の列も結構な数なので、プロレス冬の時代からすれば動員は確実に良くなってきている模様。昨年のG-1決勝などは国技館でも客が入りきれずにチケット難民が大量に発生したとかで、今年のG-1決勝は西武ドームで開催されるとのことである。猪木時代や坂口社長体制の三銃士時代に比べればまだまだかも知れないが、21世紀初頭のどん底っぷりからすると、本当によくここまで持ち直したと改めて実感。今年上半期のメタル来日公演大攻勢も一つ一つは大規模とはいえないが、これだけたくさんあるとどのライヴに行けばいいのか迷ってしまう状態で(尤も、上京する移動時間や仕事との兼ね合いを考えるとほとんど行けないのだが)、ある意味プロレスと状況がリンクしている感じはする。

 空も暗くなってきた開場時間10分前頃に車を出て列に並ぶ。するとスタッフから「ファンクラブ会員の方いませんか?内藤選手との撮影会がありますので、会員の方で参加を希望している方は右側の列に並んでください」との声が飛ぶ。「撮影会に参加される会員の方もういませんか?間もなく開場時間です。開場になったらもう受付できません」と最後の追い込みにかかっている。撮影会に入ってからのトラブルを避けるための注意喚起なのはわかるが、これだけ言われると「もしかして、内藤選手の撮影会に参加する人が少ないのでは?」と要らぬ詮索をしてしまう。ともあれ会員ではない自分には関係ないことである。前に並んでいるいかにもプヲタという感じの4人組がプロレス談義に花を咲かせている。平ハウスでの新日ファンといえばDJタモツこと柴田みのる(通称しばみ)であるが、彼奴を連れてくればよかったとプヲタ談義を横目に思う。それにしてもやはり寒い。会場の中を見ると、スタッフがストーブの前に集まっていた。会場の茨城県立スポーツセンターはぶっちゃけただの体育館なので、空調などは無いのだろう。
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 ドアのガラスにはポスターが貼られている。同じ県内とはいえ、水戸は自宅よりかなり遠いので、初めてこの興行のポスターを見た。他県でも程近いいわきで興行を打つときなどは近所にもポスターが貼られるのだが。数年前、近所で全日「世界最強タッグリーグ戦」のいわき興行のポスターを見てちょうどその日は仕事が休めそうだったので観に行こうとしたことがあった。ポスターには当時全日にいた武藤敬司がでかでかと映しだされ船木誠勝とタッグを組むという。その他にも小島やら鈴木みのるやら、西村、曙、高山、そして長州力まで、とんでもない豪華メンバーだったためこりゃ絶対に観に行かないかんでしょという気分になったのだが、当日に治療中で経過も良好だった腰椎ヘルニアが突然悪化して、結局観に行けなかった。医者も「なんでいきなりこんなに腫れたんだ?」と訝しがるほどの症状だったが、翌日にはすっかり腫れが引いてしまったので、「天はこれほどまでにおれにプロレスを見せたくなかったのか」と絶望したことを思い出してしまった。そして、ようやっとプロレスを観に行くことができたことを喜ばしく思いながらしみじみポスターを眺めていると、ポスターの裏にマジックで「プロレス観戦のお客様は左の扉よりご入場下さい ←」と書かれた手書きの指示表示を見て、新日のDIY精神を感じたのであった。
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 エントランスに入って目に飛び込んできたのは3人の男が写っている大きな3枚のパネル。真ん中のパネルに写っているおどけた表情の男がオカダ・カズチカなのはすぐに判ったが、両サイドに写る2名はちょっと間をおいて、棚橋弘至と中邑真輔だと認識する。どうやら新しく出た女性向け写真集の宣材写真のようだが、3人とも非情に不気味。特に「an-anで初めてグラビアを飾ったレスラー」であるところの中邑はまるっきりフレディ・マーキュリーである。
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つづく

赤点企画は最高だった

 年末年始は12月25日から1月8日まで連勤。大晦日もお正月もあったもんじゃない。1月1日の仕事を終えたあと平ハウスにて新年会。とはいえ、おれが来たときはもう皆さま出来上がってて寝ているなど宴の後状態。仕方なく上の階で個人練習。とある人の態度を思い出して腹を立ててしまい、モニター(飾り)を蹴っ飛ばすなど、結構情けない元日を過ごす。
 1月7日は水戸で業界団体の新年会。昨年は泥酔して潰れるという醜態を晒してしまったためにリベンジを誓うも、この日は仕事場に戻らなければならず、役員会のみに参加し新年会を欠席。次の日に東京に行く用事があるので、そのまま水戸に留まりたかったがどうしようもない。

 そして翌1月8日。昼すぎまで仕事をして一旦仕事納め。夜は代官山UNITで「EXTREME THE DOJO 番外編」を観ることになっている。翌日は休みではあるが、午前中に火災報知機の点検に立ち会わねばならないので、夜中には帰宅できるよう、電車ではなく車で出かける。そしてこの日も首都高で渋滞に捕まる。しかも、複数箇所の渋滞情報がいずれもこちらの順路にぶつかるため開場時間に間に合わず。会場のUNITに到着してすぐに開演となった。お客さんはそれほど多くない印象。勝手に出演順を「GRAVE→WEHRMACHT→PRIMATE」と思って来たら、まるっきり逆。ステージ上にはケヴィン・シャープがいてPRIMATEのバックドロップがかかっていたので、あれっ!?と思ってしまった。ケヴィンのパフォーマンスが熱いので、ちょっと寂しい感じだったフロアーも徐々に盛り上がり、最後はBLACK FLAGの「Drinking And Driving」のカヴァーで前の方は結構盛り上がったと思う。後ろの方は知らん。

 セットチェンジの際にバーカウンターに行く。運転なので酒が飲めないのでジンジャーエールを買う。その際にダ・ヴィンチ編集長の関口さんと思しき人とすれ違ったが、もしかしたらお笑い芸人のHi-Hi岩崎氏だったかもしれない。おれはこの2人をぱっと見で区別する自信がない。

 2番手のWEHRMACHTはまずSEで「ジョーズ」のテーマが鳴っていたため、1曲目は「Shark Attack」だろうなぁ、と思ったら当然その通りでライヴがスタート。このバンドが来日するってだけでも奇跡なのだが、こういうハードコア寄りのバンドでもしっかりメタルであることを主張しているのはほんとうに嬉しい。TシャツもEXODUSにLOUDNESS、そしてPOSSESSED。最高。おれもたまたまPOSSESSEDのTシャツ(デザインは違う)を着ていたのでなんだか嬉しくなる。ライヴでもLOUDNESSの「Crazy Night」が披露された。着ているTシャツの柄も含め、アメリカ人にとってはやっぱりLOUDNESSといえば「THUNDER IN THE EAST」なんだなぁ、としみじみ思う。北欧のTHERIONやHAMMER FALL、CHILDREN OF BODOMなども「Crazy Night」のカヴァーをしていたからアメリカに限ったことではないんだろうけど、日本人の感覚だと個人差はあるとすれども『やっぱラウドネスは「DISILLUSION」だろ!』となるかな?終盤の「United Shoebrothers」では観客をステージ上げて、曲名にちなみブーツに入ったビールを回し飲み(これだと、shoebrothersならぬbootbrothersになってしまう気がしないでもないが、こまけえことはいいんだよ!)するという催しもあった。最後はIRON MAIDENの「The Ides Of March」が奏でられる。そうすると当然曲は「Wrathchild」になるわけで、やっぱり彼らの芯はメタルであることをしっかり確認してこの楽しいステージは終了。

 トリのGRAVEだが、連勤と長時間の運転、そして2バンド目まで客席で暴れてしまったために疲労がピークとなり、フロアーの一番後ろの方へ退避。柱にもたれかかりながらじっくりと鑑賞。それにしても音響の良い会場だと関心。支柱の傍なんて音響が悪くなりそうなものだが、しっかりとした演奏が堪能できる。PRIMATE、WEHRMACHTとハードコア寄りの音を出すバンドが続いたが、最後はGRAVEのような紛れも無いメタルで〆るというイベントの構成は非常によろしい。しかし溜まりに溜まった疲労感と、この後また長い道のりを運転せねばならないという気持ちがあり、しっかりと堪能できなかったのは残念。そんな思いでふと隣を見ると、ROSE ROSEのドラマーであるエガヤさんがじっとステージの方を見つめているのであった。アンコールで「Into The ~」というコールがあったので、最後尾から「Grave!」と力を振り絞って叫ぶ。この「Into The Grave」を含め、初期の楽曲を中心としながらも決して古臭くないスタイルでの演奏に感心。BURRN!で広瀬氏に9点とか付けられてたなぁ、この名盤が。まぁ、イングヴェイの1stも60点で酒井氏にボロクソに書かれていたけど名盤だし、メガデスの1stも有島氏に41点付けられてボロクソ書かれたけど名盤だし、いちいち点数でごちゃごちゃ言うのも不毛なことなのかなと。でもまぁ、売る方はたまったもんじゃないんだろうなあ。そしたら、WEHRMACHTの1stはさこたさんに4点付けられてたんだと後で知った。スラッシュ好きそうな人なだけに意外。4点と9点がこんな素晴らしいライヴをやるなんて最高過ぎる。つか、もう何年B!買ってないんだろう、おれ。

 帰りにエガヤさんからイベントのチラシを貰うが、実は昨年のアースダムでもエガヤさんから同じチラシを受け取っていたのであった。

WEHRMACHT「United Shoebrothers」


※当日のライヴでの「靴兄弟の契り」の模様。3:40あたりで「いよぉっ!川嶋未来っ!」と野次ってるのはおれであろう。こうして記録に残ってしまうとは思わなかった……

LOUD PARK 13 おぼえがき(箇条書きっぽい) ~イングヴェイ編~

前回の続き

・サッシャが引っ込んだ後にスタッフがサウンドチェックをしているのだがどうもおかしい。ギターの音が途切れると、そこに「ビィィィィ」ってな感じのノイズが入るのだ。おれの経験上からすると配線の接触不良のような感じであるが、少なくともシングルコイルのピックアップに乗る慢性的なノイズとは違うものである。そういえば、LAST IN LINEの演奏中には何故かレスポールでサウンドチェックしていたのだが、アレは一体何だったのだろう?そして開演時間を過ぎても「ビィィィ」という音は鳴る。エフェクターを踏むとノイズが消えるような感じではあったので、エフェクター内で接触不良を起こしているか、それともシールドケーブルのジャックのどれかが不良なのであろうか。全部繋ぎ直すのも大変であるが、それにしても一向に改善される気配がない。このままもしかしたら終わってしまうんじゃないかという空気が会場を支配していた。

・突如、あのストラトのトーンでジミヘンの「Voodoo Chile (Slight Return)」のイントロが奏でられる。このタッチはスタッフではないだろう。どう考えても王者のそれである。とは言え、そのリフが鳴り止むとまたノイズが鳴るんだが……それでも構わず客電が落ち「Rising Force」のキーボードのイントロが鳴り響く。なんとノイズを消さないまま、ライヴを強行したのだ!まさにロックである。そして王者が我々の前に姿を現す。この長髪のレスラー体型の変なもみあげのおっさんは間違いない、イングヴェイ・マルムスティーンだ!初めて憧れの王者の実物を目の前にしておれは感激に打ち震えていた。周りの観客も王者めがけ前の方へ突進する。バックのメンバーはもはや空気、ここから王者の実質ワンマンショーが始まった。それにしても「Rising Force」のバッキングはキメのところしか弾いてないではないだろうか、ギターを回したり片手で掲げたり。そうすると「ビィィィィ」というノイズが容赦なく襲い掛かる。仕方がないので王者は弾きまくるしかない。それにしてもヴォーカルをとっているキーボードの人、結構歌が巧い。が、高いところとかで歌を頑張ってる時はマイクを握ったりなんかしちゃってるので、キーボードの音が止まるのが面白い。

・「コンニチワ!」と時刻を完全に無視したMCをする王者。カヴァデールみたいに「コニチワコバンワー!」とどうとでも対応できる挨拶をする人もいるが、ある意味王者が純粋なことの表れであろうか。そして今回のラウパーで何組も「トーキョー」と言われがちなさいたまであるが、少数だが正しく「サイタマ」とコールする出演者もおり、その少数の中に王者は分類された。だから彼は愛される。

・2曲めが始まるときに「最新作からSpellbound」と王者自ら曲をコールし、インストナンバー(って2曲めからもうインストかよ)の「Spellbound」が披露され、曲自体は全く印象に残らないが、とにかく弾きまくるイングヴェイの姿は印象的。途中でチューニングが狂ってきてるなと思うと曲の途中でも素早くペグを回してきっちり音を合わせる名人芸も生で見られて感激。昔、B!誌のライヴレポートでこのさまを表して「この間0.5秒」と書かれていたのだが、それを勘違いしたであろう馬鹿が「バンドやろうぜ」の質問欄に「イングヴェイはギターのチューニングを0.5秒でできるって本当ですか?」と投稿した記事を読んだことを思い出した。質問の答は「いくらイングヴェイでも無理です」だった。当たり前だ。

・よく「イングヴェイは無駄な速弾きばっかりしている」という批判があるが、今回は本当に切実に必要に応じての弾きまくりなのである。これなら文句あるまい。しかし、泣きのチョーキングの後に感極まって間を置こうとすると、「ビィィィィィィ」とノイズが入るのは如何ともし難い。チョーキングの時の感極まった王者の表情が真顔に戻り、やたらに手数の多いフレーズを弾きまくるのが見ててとても面白い。

・しかし襲いかかるトラブルはこれにはとどまらない。3曲めのよく知らない歌入りの曲ではヴォーカルを取っていたキーボードの人のマイクが突然鳴らなくなり、何故かコーラスをとるイングヴェイのマイクの音がバカでかくなる。仕方なくイングヴェイがメインのメロディを歌うが、音を外してはいないものの全く曲に合っていない歌唱であった。神はどれだけ王者に試練を与えるのであろうか。

・この日のサプライズとしては(まぁ、このステージそのものがサプライズの塊なのだが)何故かごきげんな表情で王者がストーンズの「Start Me Up」のリフを弾く。そして間髪入れず名曲「Hiroshima Mon Amour」の超カッコイイイントロがイングヴェイの指から紡ぎだされる。この瞬間おれは死んでもいい、と思ったが、メインリフで音が途切れるとまた「ビィィィィ!」というノイズが鳴り我に返ってしまう。キーボードの人が歌が巧いとはいえ、さすがにこの常軌を逸した高いキーのこの歌は歌いこなせない。オリジナルを歌っていたやっさんも当時結構きつそうに歌っていたような…85年のライヴの時のJSSはバケモノか。すると、なんだか途中で曲をぶった切るようにして終了。

・あの「Hiroshima Mon Amour」はなんつーか「公開リハーサル?」てな感じで呆然としているところにバッハのバディネリのオケが鳴り、イングヴェイが超絶技巧で弾きまくる。もう本当に好き勝手やりたい放題のギター版ジャイアンリサイタルである。ただしバカみたいに巧いが。そしてお馴染みパガニーニのヴァイオリンコンチェルト4番のアタマに続いて、「Icarus' Dream Suite」のアルビノーニのアダージョを四拍子に変えたフレーズが演奏されると、会場は「あの曲が来るな」と身構える。しかしこのメロウで美しい変形アダージョにも容赦なく曲の隙間隙間に「ビィィィィ」というノイズが入ってくる。それでも王者は、満を持して「あの曲」、そう「Far Beyond The Sun」が奏でられると、おれを含むアリーナ前方の信者たちが一斉に発狂する。なんだかんだ言ってこの曲が鳴ると気分が一気に上る。

・全体的な傾向として1~2曲やってはイングヴェイが引っ込む。彼のストラトは強烈なアーミングによってチューニングが狂うために、王者が袖に行ってしょっちゅう替りのギターを取りに行くのが常ではあるが(いくら彼でも0.5秒でチューニングすることはできないからだ)、今日のような機材トラブルに見舞われている状況だとこのまま戻ってこないのではないかという不安にかられる。すると人の良さそうなベースの人がイングヴェイコールを促したりして会場を落ち着かせようとする。すると袖からイングヴェイが出てくる。ベースの人が「アリガト、ニッポン!ニッポン、イチバーン!いい週末を過ごそう!ここにいるヘヴィ・メタルの巨匠といっしょにね!」とおべんちゃらを言う。イングヴェイも機材の不調に悩んでいる感じだが、そこまで言われてはとギターを弾きまくる。そして1~2曲弾いてまたギターを交換するために引っ込む。するとベースの人が「ニッポンの皆さん。イングヴェイのヒストリーは買ったかな?」などと客に対し営業を行う。「宣伝ご苦労」とばかりに新しいギター持ち替えて出てくるイングヴェイ。楽器屋でエフェクターの効果をみようと試奏するかのような演奏をしたり、ヴォリュームノブを使ったヴァイオリン奏法の練習のような演奏をすると、またイングヴェイが引っ込む。ううむ、これがイングヴェイ式のエチュード(練習曲)か、などと自分を無理やり納得させるかのように唸っていると、べースの人が「ニッポンの皆さん。君たちの中でギタープレイヤーはいるかい?」と言われたので手を挙げる。そしたらベースの人が「今君たちにとって最も偉大であろうマエストロが来るので待ってようね」だと。する王者が新しいギターをぶら下げて「しょうがねえなっ」とばかりに戻ってくる。まるで吉本新喜劇のようではあるが、もうおかしくしょうがない。また演奏してイングヴェイが袖に引っ込む。今度はスタッフがスタンドに固定されたエレガットギターを持ってきて設置する。するとベースの人が「ニッポンの皆さん。見てくださいよ、このギター。オヴェイションがイングヴェイのために新たに作ったオリジナルモデルですよ!すげえ!」とまるでテレビショッピングの司会のようなことを言い出す。するとイングヴェイがストラトを背中に回した状態で現れて、このすげえオリジナルモデルをおもむろに弾きだす。で、何曲かやって引っ込むと今度はまたベースの人がMCを始める。「ニッポンの皆さん。もし君らが宇宙から見るとふたふた……ごめん」と噛む。笑いを押し殺しながら仕切りなおす。「君らが宇宙に行って地上を見ると2つの人工物だけが見ることができる。それは万里の長城と、イングヴェイ・マルムスティーンのマーシャルの壁さ!」と言うと、イングヴェイがしてやったりといった表情でまた袖から出てきて、信者諸氏から笑いが溢れる。

・この「You know if you go into outer space there are only two man-made objects that you can see—the Great Wall of China and Yngwie Malmsteen’s Wall of Marshall」は最近のイングヴェイのお気に入りフレーズで、インタビューなどでよく吹聴するのである。Great Wall of ChinaとYngwie Malmsteen's Wall of Marshallをかけているのだが、日本語に翻訳されると「万里の長城」と「イングヴェイのマーシャルの壁」となんにもかかっていない言葉になってしまうので、面白さが半減する。まぁ、このフレーズ自体は半減するまでもなく何もおもしろくないのだが、この面白くもないことをさも面白いかのように決め台詞みたいにして話す王者が面白いのである。その滑稽さをベースの人もよくわかってるため、笑ってしまって噛んだのだろう。このお決まりのフレーズを知っている信者諸氏は「出た出たw」ってな感じで笑ったのである。このステージはもはやコントの域に達しているのだ。

・オヴェイションの凄いギターが出た時のことを書くと、以前も書いたが、ガットギターをピックで弾くとピッキングノイズがうるさいので指で弾くか、コンプレッサーを切るかして欲しい。アコギソロが終わったところで、「Rising Force」同様ジョー・リン・ターナー先生が歌メロを書いた美しいバラード「Dreaming (Tell Me)」が演奏される。演奏も歌も素晴らしいが、アコギパートが終わってエレクトリックパートになったあとは、やはり気を抜くとノイズが襲ってくる。しかしイングヴェイはそれに抗い続ける。すると曲の後半、いきなりレゲエ調のカッティングを入れてくる。ドラムもそれに合わせて裏の拍で打ち始める。それをちょっとだけやってまた元の演奏に戻ったが、こういうことをいきなりやってくるから王者は侮れない。おそらくリハーサルスタジオにいる時と同じ感覚なんじゃないかと思う。関係者の言う「イングヴェイは同じことしかできないようなことをいう人がいるけど、なんでも弾けるよ。仕事でやらないだけで。楽屋でギターで遊んでる時はホント、ジャズでもカントリーでもなんでもべらぼうにうまく弾く」というのが真実味を帯びてきた。いつかお遊びでレゲエやR&B的な曲を収録した音源を出して欲しい。

・以降も心赴くままに、「Baroque N' Roll」やら、なんやようわからん即興みたいな(実は持ち曲の中からの抜粋したフレーズだったようだ)のインストナンバーを弾きまくる。相変わらずノイズは出っぱなし。でも王者は歯を食いしばってそれに抗う。もうライヴの流れも何も知ったことかと、機材の不調やPAのバランスの悪さへの不満と怒りを音楽に昇華させるかのように弾きまくる。それでも収まらぬ怒りが途中でキーボードの人にピックを投げつけるなどの八つ当たりとなって表れたりもした。そして「Trilogy Suite」のイントロが奏でられると、やはり信者諸氏が前へ一斉に走りだす。勿論おれもだ。やはりこの曲のテンションは異常に高い。最後のディレイのところでいつもなら間髪入れず「Krakatau」に移るところなんだが、かなりふてくされた様子で余韻もそこそこに袖に引っ込む。この時はあのベースの人も持ちネタが切れたか、呆然と王者の背中を見つめるばかり。おれもさすがにこの時はもう終わりだ、と思ったが、王者はすんなり戻ってきて「Krakatau」を演奏。そうすると大体ここでジミヘンの「Red House」のカヴァーで、勿論歌はイングヴェイ!っていう展開になるのでそれを期待したが、そこはカットされ、そのままピッチシフターを使った超高音ソロ、そして尻にギターをこすりつけたり、モニタースピーカーにギターをこすりつけたりしてスクラッチノイズを出す。そしてギターの弦を馬鹿力で引きちぎって、それを高く掲げる。ノイズをピッチシフターのつまみを回して目一杯高音にあげて超音波寸前の高音を出し、最後にディレイでその余韻を残す。この高音はほんとうに耳に悪い、と生で実感できた。こんなの毎回やっている王者の耳はかなりダメージを受けているだろうということは想像に難くない。しかし、今振り返ってみると、かなり楽しみにしていたジミヘンタイムがなかったのがちょっとガッカリだったが、この時はそんなことを感じている余裕もなかった。

・弦を引きちぎったギターを引っ込めて新しいギターに取り替えると「もっとギターを持ってくりゃよかったな」とはにかみながら言う王者。そこから泣きのナンバー「Blue」を演奏。こういう隙間の多いナンバーでもノイズを打ち消すために手数を出しまくる王者の姿が悲壮だが、それがまた見るものの心を打つ。続くイングヴェイが作ったエレクトリックギター協奏曲からの抜粋「Fugue」では、オケをバックにバンドメンバー全員引っ込んでの独演会状態。もはや孤高という領域を完全に超越した唯一絶対の存在、イングヴェイ・マルムスティーン。「Fugue」が終わると意外や意外のドラムソロへ。と言っても、王者のどのライヴでもドラムソロは入っているので別に珍しいことでも何でもないのだが、今日の状況だと他のメンバーにスポットライトが当たること自体が本当に以外なことに思えてしまう。まぁ、単なるイングヴェイの休憩時間なのだろうけれど。しかし、空気と化しているとはいえ、その実力は3人とも申し分がない。

・ドラムソロが終わると、妙な間があいて曲が始まる。このポップなリフは……「Heaven Tonight」か?妙な間のところはおそらく出だしのコーラスのサンプリングが流れていたのだと思うが、音が小さかったのか、先ほどの超高音ソロで耳がやられててあの周波数帯の音が聴き取れなかったのか、ちょっとわからなかった。しかし、またもヴォーカル曲はODYSSEY収録のジョー・リン・ターナー先生のナンバー。「あのアルバムは気に入らない」「この曲はゲイだよ」「ジョーがソウルメイト?ソウルメイトが聞いて呆れる」などとさんざんボロクソに言っておきながら、ライヴでの数少ない歌入りナンバーはODYSSEYから3曲も組み込まれ、「ゲイソング」と中傷しているこの曲がだいたい本編最後に持ってこられるという、もうツンデレなんだかただ支離滅裂なんだかよくわからない王者であった。結局いい曲であることは間違いないので、おれも中間部の合唱部分を「This could be paradise♪ Holding you here by my side♪ If we just close our eyes♪ We'll be in Heaven tonight♪」と目一杯半声をはりあげた。曲のラストには、様々なトラブルに見舞われたにもかかわらず、満面の笑みで「ドモアリガト!ニッポン、イチバンイチバンイチバン!」とシャウトし、アウトロになる。曲が終わると、イングヴェイが片膝をついたままギターを背面に高々と放り投げ、それをスタッフがキャッチし、ステージから退場。本当に絵になる男である。

・アンコールではお決まりのインスト「Black Star」か?と思ったが、初期の超名曲「I'll See The Light Tonight」のリフが。そしてキーボードの人の「Noooooooooooooooooooooooooo!!」の凄まじいシャウト。これはもう狂うしかない。このイングヴェイがリフメイカーとしても非凡であることを証明したスピードナンバー、ネオクラシカルメタルの金字塔ともいるこの曲ではなんと、ノイズが消えていた!しかも音のバランスも最高。一体何が起こったんだ?奇跡か?もう、この人の何か持ってる感は異常。ハンカチ王子もこれくらい持ってればよかったのに。王者がこれまでの鬱憤を晴らすがごとくルート音とコードをかき鳴らす。2コーラス目にうつる時に、イングヴェイが何やらベースの人に言っているのでベースとギターの音が止まるが、すぐに復帰。そして「ハッハー!さっきまでの俺とは違うぜ!」とばかりに渾身のソロを弾きまくる。そして曲が終わるときに「Thank You Thank You ドモアリガトドモアリガト You're イチバーン! God Bless You!」と感情が堰を切って溢れるように観客に謝辞を述べる王者。あのノイズ地獄を捩じ伏せた先には、栄光が待っていたのだ。

・そうするとバック陣による凄まじく緊張感のある演奏が始まる。ローズ指板のストラトを持ちだした王者は、この日最高の演奏をかます。そしてこのギターを高く放り投げると、ギターはそのまま床に落ち、爆裂音のような音を出す。それを何度もも繰り返し、ギターは真っ二つ!破片を客席に放り投げてライヴ終了。これまでのトラブルは全てこの最後のカタルシスのためにあったのだと言わんばかりで、最後の最後でのカタルシスは本当に異常だった。それにしても、破壊用の安物ギターで弾いていた音が一番良いというのがなんとも……ライヴ'85でも、破壊用のギターで弾いていた「Jet To Jet」がやたらいい音をしていたが、当然このギターは改造されておらず、指板もスキャロップ加工もされていない。スキャロップのないギターのほうが王者にとっても本当はいい感じなんじゃ……といらぬ邪推をしてしまう。

・このライヴ、もしノイズがなくてもおそらく同じような構成にはなっていただろう。しかしその場合は単に「つまらない、退屈な豚貴族の自己満足公演だった」との烙印を押されていただろう。このノイズのお陰で「機材トラブルを乗り越えて、この極悪環境を力でねじ伏せた王者」という評価がなされたのである。そういう意味ではノイズこそこのライヴを特別なものにしてくれた最大の功労者だったと言っても、決して的外れではないであろう。
しかし、これがもし同様の状態が単独公演で行われたら「ふざけんな金返せ!」ということになったのではなかろうか。フェスだったからこそ、この異常な状況を楽しめる心理状態になっていたのかもしれない。

・機材トラブル+フェスという舞台装置が揃い、そしてバックの確かな実力、特にベースなのに太鼓持ちな人の素晴らしいサポートによって、この奇跡の公演が生まれたのだ。公演前はおれを含め「イェンスと共演してくれないかな」と希望したファンが多かっただろうが、彼の入り込む余地など全くなかった。このステージはまさに始まる前(キングの・キャンセルも含め)から、最後まで、波乱に満ちた1つのドラマだった。そしてその主役は、王者:イングヴェイ・マルムスティーン。いくら状況が揃っていても、イングヴェイでなければ同じようなことをしても大ブーイングを受けてしまうであろう。「終わりよければ、すべてよし」を地で行くような公演だった。イングヴェイはもはや存在それ自体が奇跡であり、ロック界に君臨するLiving Legendであろうことは、もう確定的に明らかである。高座で居眠りしても絵になった落語の名人・5代目 古今亭志ん生の域まで達しようとしているのだ……
5代目 古今亭志ん生「鰻の幇間」



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LOUD PARK 13 おぼえがき(箇条書きっぽい) ~2日目編~

前回の続き

10月20日
・早朝に起床。非常に体が重い。酔いと疲労のためであろう。鏡を見ると顔がむくんでいて、目が普段の半分くらいしかない。このような容貌で外で要人に会わねばならぬとは、たまったものではない。

・9時頃に会合のため、隣町の観光ホテルに出かける。むくみは取れず、革靴を履くのも苦労する。スーツに着替えている時にベルトの上に腹肉が乗ったことに衝撃を受ける。会合に出席すると地元経済人に「随分くたびれてるねえ、昨晩どこで遊んできたの?」などと言われてしまう。多分おねえちゃんのいる飲み屋で豪遊したのだと思われているな。この方々にとって遊びというのはこれとゴルフを指すのだろう。嗚呼……。ちなみにラウパーの入場用リストバンドは当然巻いたままの状態である。フォーマルな場なので、袖の内側にしっかりと隠している状態。見えないところでロックしつつ社会の歯車となっているおれであった。とほほ。

・11時頃自宅兼職場に戻り仕事をこなす。仕事の合間にラウパーの状況をチェックすると、なんと鉄色クローンXのステージにゲストで八代亜紀が登場したとのこと。ちくしょう、観たかったなぁ。ベビメタがダメで八代亜紀は何でいいんだという意見もあるが、メインアクトとゲストでは重みが違うのは当たり前だろう。だからこそラウパー11でのももクロはさして問題にならなかったのに、オズフェストでは大問題になったのだ。逆に言えばメインでなければいいわけで、通路のブースに簡素なPAを使った簡易ステージを作ればよい。野外フェスでは出店と並んでテントの下でローカルバンドたちが演奏しているのがよくあるだろう。アレをラウパーでやって、インディーズバンドやベビメタのようなメタルを利用した微妙な連中のプロモーションにすればいいのだ。会場の外で何年か前にMETAL SAFARIの方々がデモCDを配っていたが、やはり直にライヴを聴かせたほうがいいし、そこで更に無料音源を配布するなどすれば効果は大きいだろう。ただ、通路なのでモッシュなどは禁止しなければならないが……昨年使ったサブアリーナはメイン級を持ってこないと採算が合わないようなシロモノだろうし。でも大手ゲーノープロダクション所属のタレントさんとしては話題にならないとマズイわけで、そこそこ売れてきた今となってはそんなとこには絶対出てこれないだろうなあ。

・13時頃仕事が終われば予定より早く行けるな、もしかしたらTRIVIUMも観られるかも……という期待はあっさり打ち砕かれ、14時頃に仕事が終了。そのままさいたまスーパーアリーナに向けて出発。この頃には浮腫みもすっかりとれて、腹肉も引っ込んでいた。よしよし。常磐線が北千住の先が運休になっているため、メトロ千代田線の代替運行で西日暮里まで行き、京浜東北線で赤羽まで行って高崎線に乗り換え、さいたま新都心へ。スーパーアリーナに着いたのは17時30分頃であった。

・会場内でまずビールを購入し、M君のいるであろうエリアに移動。その途中でGODZのヒデさんに出くわし会釈する。自由席エリアに入るとSTRATOVARIUSが演奏中。このSMAPの「世界にひとつだけの花」(ROLLYの従兄弟である槇原敬之作曲)と同じメロディのサビは「Eagleheart」であろう。「Eagleheart」の方がSMAPより先に作られたことをここに特記しておく。それにしても小ティモなどと呼ばれていたティモ・コティペルトのヴォーカルがとてもいいし、バンドのアンサンブルも完璧。大ティモ(ティモ・トルキ)なんかいらんかったんや、というのは暴言であり、この「Eagleheart」だって大ティモの作ったナンバーで、STRATOVARIUSの骨格血肉に至るまで彼の影響からは逃れ得ないが、現在のSTRATOVARIUSには大ティモがいなくても十分やっていけるだけの力があると、この圧倒的なパフォーマンスの前には認めざるをえない。場内の一体感が半端無く、ビッグロックステージ側の観客ものりまくっているのが見て取れる。そして長尺曲の「Destiny」が披露されても全く会場のテンションが落ちることがない。続いてキーボードソロが始まったが、気になるのはキーボードの名手中の名手であるカリスマ:イェンス・ヨハンソン。果たして、大トリにスライドしたイングヴェイとの共演はありえるのだろうか?そしてそのままチェンバロの音色でのキーボードのイントロが奏でられると、すぐに「Black Diamond」と曲名が浮かぶ。おれも結構このバンドを聴いていたんだなと再確認。バラードの「Forever」が演奏される前に「本当は予定になかったんだけど」とコティペルトの注釈が入る。キングのキャンセルの影響で持ち時間が増えたために急遽入れたということだろう。時間切れで涙をのんだ前日のTHERIONとはまた違った苦労である。ラストの「Hunting High And Low」ではサビでのコールアンドレスポンスでの客のノせ方も完璧。圧倒的な充足感に包まれSTRATOVARIUSのライヴが終了した。はっきり言ってこの人達がトリにブッキングされてもキャリア的にも実力的にも全く問題無いと思うんだが……
STRATOVARIUS「Eagleheart」



・そしてLAST IN LINE。要は元DIOのメンバーたちによる故ロニー抜きでのDIOナンバーを演奏するバンドだが、結果的にトリ前という位置での演奏には正直首を傾げざるを得ない。セルフ・カヴァーバンドとかトリビュートバンド扱いされてもおかしくないが、彼らの「そもそも俺達が作った曲を演奏するんだから文句を言われる筋合いはない」という言い分も至極ごもっともである。特にギタリストのヴィヴィアン・キャンベルはDIOを解雇された後、「如何に自分はロニーとウェンディ(ディオ夫人でありバンドのマネージャ)に搾取されていたことか」「ギャラや印税の配分がとても貢献度に比例していない」「ロニーにとってバンドメンバーは手下でしかないんだ」ということを訴え続けていた人であるし、ロニーに捧げるわけじゃない、俺が本来受けるべきだった利益を少しでも取り戻すためにやっているんだ、ということならば少なくともトリビュートバンドという冠は相応しくないだろう。今はDEF LEPPARDに入って悠々自適かと思ってたが、こういった反骨心を捨てないというのもロックを続けるために必要なのかもしれない。本当はロニーに対するわだかまりなどどうでもいいが、モチベーションを上げるために敢えてそういう理由付けをしているのだとすれば、ヴィヴィアンはロックの精神性をすごく重んじている人なんだとも思うし、ロックンロールという音楽は本当に業が深いものだと思う。

・そういうことを抜きにすると、LAST IN LINEは素直に楽しめた。ヴォーカルが何よりロニーに全く似せる気がないのがいい。そして巧い。いい曲がいい演奏をされれば、それだけで上質のエンタテインメントになる。本当に単純にして明快。おれは大トリに備え、隣のアルティメット側のアリーナで観ていたが「Stand Up And Shout」からもうメロイックサインを突き立てまくっていた。ふとおれの隣の人を見ると、どう見ても野村義男にしか見えない人がいたが、もしかしたら他人の空似かもしれない。ビッグロック側の年齢層が高いのは明らかだったが、「Holy Diver」はKILLSWITCH ENGAGEがカヴァーしていたのでDIO直撃よりだいぶ下の世代でもわかるだろう。本当にいい曲を持っている人たちはそれだけで財産である。「Rainbow In The Dark」が終わってヴォーカルの人が「You!You!You!Rock!」と客席に向かって言うともう来るのはわかっている。「We Rock」だ。この超名曲の完璧な演奏の前には、カヴァーバンドだとかなんだろうとかどうでもいいという気に、この時ばかりは、させられた。
DIO「We Rock」


・そして、大トリに“なってしまった”我らが王者:イングヴェイ・マルムスティーンの登場を待つ。ステージ上には例のマーシャルの壁が築かれていた。ヘッドだけで18台あった。JMPが11台、JCM(だと思う…JVMかも知れないが)が6台、ヴィンテージモダン(これだけLEDが青いので間違いないと思う)が1台。1台くらいくれないかな、とおれを含むファンのギター小僧達は思ったことだろう。

・今日は例年通りサッシャがMCを務めていた。「この次は急遽大トリを務めていただくことになりました、本日最後のアクト、イングヴェイ・マルムスティーン!」というコールで会場のヴォルテージが上がる。そこでサッシャがiPHONEを取り出して「その前に皆さんで写真を撮りましょう。パノラマでね」と写真撮影を行おうとする、が、「…電源が落ちてしまいました。おいおい、アップルゥゥ」と苦笑い。些細な事であったが、これはこれから起こる惨劇の前触れであったのかもしれない……

続く

LOUD PARK 13 おぼえがき(箇条書きっぽい) ~初日編~

前回からの続き

10月19日
・7時30分頃起床。M君もほぼ同時に起床。8時前頃に中野区大和町のM君宅からさいたまスーパーアリーナへ向けて出発。2人ともキングが来ないためにヤケ酒を煽ったため、テキメンに二日酔いである。非常に足取りが重い。

・9時頃会場到着。予想はしていたことだが、物販先行発売の列がすごいことになっているため、物販は会場内で買うことにし、入場口の列に並ぶ。こちらは比較的列が短く、ゲートの目の前。昨年のような入場時間を45分超えてやっとゲートに辿り着くなどということはなさそうだ。列の前方には既に今年のオフィシャルTシャツを着用しているお客さんが。背面に掲載されている出演バンド一覧の「KING DIAMOND」のロゴが虚しい。列のわきにある鉄柵に「KING DIAMOND出演キャンセルのお知らせ」というA4サイズの紙が貼ってあった。会場近辺を見ても、これ以外のお知らせが見当たらない。多分、同様の用紙がこちらの目の届かないところに掲示されていたのだとは思うが、大トリのキャンセルなんだからもっと目立つところにデカデカと掲示すべきではないのかと思う。

・9時30分に開場。5分ほどでゲートに辿り着き、チケットを回収され2日通しの客用のリストバンドパスを着けられる。そして物販に向かうが、後ろから走って物販ブースに向かうお客さんが多数。こちらは二日酔いがひどくとても走る気にならない。

・場内物販はそれなりに長い列ではあるものの、割とすんなりブースに到達。おれはカーカスのTシャツを2枚買う。Sサイズと言ったのに、Lサイズを渡されてしまう。しかも二日酔いのためにろくに確認もせずそのまま購入してしまい、後でサイズ間違いに気づく。仕方ないので身幅だけあとで詰めようと思う。身丈の方はプリントがわりと上下いっぱいになされているためそのままに。M君も物販を購入。パンフレット等を買っていた。ラウドパークでパンフレットが売っていたことを3回めの参戦にて初めて気付く。

・ビッグロックステージ側のスタンドに入ると同時に、オープニングのLOST SOCIETYのライヴが始まる。前回はオープニングのクリストファー・アモットのライヴが見られなかったので、物販がスムーズに変えたことを改めて実感。しかしそれは本日の客入りがそれほど良くなかったせいでもあると思う。やはり、出演バンドを見ると、メタルファン全般に強烈に“行きたい!”と思わせるようなメンツばかりではなかったというのは否めない、が、初っ端のLOST SOCIETYが非常に溌剌とした素晴らしいライヴを展開。ダウンチューニング系ではない、正統スラッシュが確かに若い世代に受け継がれているのを実感できておじさん顔がほころんでしまうよ。二日酔いで体調は良くないが気分は高揚してきた。しかし、おれより多量の飲酒をしていたM君は相変わらず辛そうであった。
LOST SOCIETY 「Kill」



・LOST SOCIETYが終わると、向こう側のアルティメットステージでは日本のメタルコアバンド、Crossfaithのライヴが始まる。キーボードを大々的にフィーチュアしたメロディアスさを見せつつも非常に気合の入った演奏に、更に気分は高揚。キーボードのメロディアスさというのもいわゆるメロディック・メタル的ではなく、ちょっと90年代のクラブみたいな感じなのがおれの世代には結構たまらんものがある。あと、ヴォーカルのMCで客を「お前ら」と呼ぶのはよくあることなので全然構わないんだが、お前ら呼ばわりしておいて「ですます調」なのが個人的にはツボだった。また事ある毎に「メタル」であることを強調していたのもポイントが高い。ラウパーだけでなく、他のメタル系専門ではないイベントに出た時も「俺たちはメタルだ!」と言ってくれれば言うことなし。期待してまっせ。
Crossfaith「Monolith」


・BRING ME THE HORIZONもキーボードをフィーチュアしたメタルコアバンド。正直あんまり印象には残っていないが、キーボードの人がエレドラを叩くときの妙な佇まいはやたら印象に残っている。それにしても、この2バンドを形容するときに「メタルコア」という言葉がつくが、正直、メタルコアがどういう音を指すのかますますさっぱりわからなくなってしまった。メタルコアというと、「要は90年代以降のダウンチューニング系のデス声メタルで、ギターソロを省いてるものでしょ?」という認識だったのだが、デス声というほど歪んでないスクリーム歌唱でA7Xみたいにツイン・リードのソロを取るバンドもメタルコアとされ、エモやスクリーモがハードコアパンクの系列として現れて…… Crossfaithのようなピコピコしたキーボードをフィーチュアした音楽までメタルコアになるのかと。もう全部ひっくるめてメタルでええやん、となると、ハードコアパンクの系統で語られたいバンドは不都合になるんだろうし……ううむ。難しい。ちなみにおれが餓鬼の頃から「メタルコア」という言葉はあったが、それを指してたのはG.I.S.M.とかガスタンクみたいなバンドがやってる音楽のことだった。
BRING ME THE HORIZON「Shadow Moses」



・DEVIN TOWNSEND PROJECTはこの日のハイライトの1つだったのではないか。DTP名義だが、10年前くらいに出たデヴィンのソロアルバム「INFINITY」の楽曲が多かった。メタル+アンビエント、などという単純なものではないが、デヴィンの周りから別次元の空間が広がってきていそうな、非常に精神に訴えかける音楽だった。歌もギターもバックの演奏もハードで歪んでエッジの効いたものなのに、この異様な癒され感は一体何なんだ。そして最後は一転DTPのヘヴィなナンバーを機銃掃射の如く畳み掛ける。ジーン・ホグランじゃないのが残念、と言ったらドラムの人に失礼だろう。ほんとうに素晴らしい。言葉は要らない。
DEVIN TOWNSEND PROJECT「Juula」



・THERIONはお目当ての1つだったので、アリーナに降りて観戦。しかし、時間になっても始まらず、テクニシャンが集まって、ステージ前方の床に設置してある機材をチェックしている。何やらトラブってしまったらしい。そして15分~20分程度遅れてスタート。これで大幅な時間制限を受けるはめになったためか、どうもパフォーマンスがちぐはぐしている。それでも今回ゲストながらリード・ヴォーカルを務めたスノーウィ・ショウ(今回キャンセルしたKING DIAMONDにドラマーとして参加していたこともある)の存在感は凄まじい。バンドのテンションが上がらない中、あの大木のウロから響きわたるかのような声で観客を煽ったかと思うと、頭のてっぺんから出るような強烈なハイトーンをかまし、会場を徐々に温めてゆく。真ん中訳の金髪直毛ロングヘアに白塗りメイクのスノーウィを観るたびに「クラウザーさん!」と叫びたくなる衝動に駆られる。ああ、額に「殺」と書き入れたい!しかしバンドのちぐはぐさは終盤まで続き、「To Mega Therion」が始まったとおもいきや、いきなり演奏を中断。どうやら曲順を取り違えたらしい。そして仕切りなおして女性ヴォーカルの片割れのロリをフィーチュアしたフランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」のカヴァーが披露される。結構盛り上がったが、どうも今回は演奏と歌のキーがずれているように感じた。そして今度こそ「To Mega Therion」に突入。ツインギターのハモリを歯弾きと背面弾きで披露し会場はやんやの大喝采。これから盛り上がって…というところで無念の時間切れ。本人たちも不完全燃焼であったであろうが、それでも水準以上の演奏をして〆たところは流石であった。復讐戦を期待。
THERION「Poupée de cire, poupée de son」


・THERIONのトラブルでの時間の遅れを取り返さんとばかりに、THERION終了から間髪入れずにLORDIのライヴが始まる。いやはや、圧巻。ポップでヘヴィで速くて格好いい曲、という馬鹿でも楽しめるナンバーをたてつづけに演奏。こちらもアタマからっぽにして夢を詰め込みまくるように素直に楽しむ。序盤の畳み掛けが凄まじかったためか中盤以降ちょっとだれた気がしないでもないが、最後の「Would You Love A Monsterman」できっちり〆た。さすがユーロヴィジョン優勝者である……って、何年前の話だよと。いつか、GWARと共演する姿を見てみたいものである。
LORDI「Would You Love A Monsterman」



・LYNCH MOB……、なかなか決まらなかったラウパーの出演者発表の最後の一枠に彼らが収まった時のメタルファン達の拍子抜け感は半端無かった。それを象徴するかのようなビッグロックステージ側のアリーナの人口密度の低さは、はっきり言ってヤバイなんてもんじゃないほどの空き状況。隣のアルティメットステージ側のアリーナはその次に出てくるBEHEMOTH待ちの客でぎゅうぎゅう詰め。この差はあまりにも無情。そこでアリーナに降りないところがおれの嫌なところである。言い訳をさせてもらえば、この時おれとM君はスタンドで食事をしていたのである。二日酔いのくせに当然ビールも飲んでいた。飲食物はペットボトルの水以外はアリーナに持ち込めないため仕方がなかったのである。それにしてもジンギスカン丼がやたらに旨い。そしてアリーナの空白が埋まらないまま、バンドが登場。80年代を代表するギター・ヒーローであるジョージ・リンチを迎えるにはあまりにも寂しい状況。おなじみの虎縞ギターを持って現れたジョージのギターソロからいきなり始まる。60歳とは思えないほどにグッドルッキンなイケメンおじさんのジョージの指からは若いころと変わらない素晴らしい音が紡ぎだされるが、いきなりギターソロなんかをやっちゃうところがこの惨状を招いているのではないだろうか、などと失礼なことを考えているうちに曲が始まる。最初はメシを食いながら聞き流していたのだが、途中で「あれ、この曲DOKKENの「Tooth And Nail」じゃね?」と気づく。アリーナのフロアに目をやると、アリーナにどんどん人が増えていっている。DOKKENのこの名曲を聴かされては矢も盾もたまらなくなった連中が、ジョージが発する引力に吸い寄せられていっているかのようだ。続いて「Into The Fire」。またも繰り出されるDOKKENナンバーによってアリーナが人で埋まってゆく。その後もLYNCH MOBの曲を挟みつつも、ジョージの素晴らしい演奏によるDOKKENナンバーが披露される。バラードの「Alone Again」などは本来フェス向けでないように思えるが、今回はこれがまた意外性のあるところを突かれて、心を鷲掴みにされ、おれも一緒に歌ってしまう始末。しかしガラガラだったアリーナが、音楽だけの魅力によって埋まってゆくさまを見るのは感動的ですらある。やはり、DOKKENのギタリストとして名をはせたジョージがDOKKENナンバーを弾けば、メタルファンは皆惹かれてしまうのである。現在のドン・ドッケンがDOKKENナンバーを歌うと皆がっかりしてしまうのとは非常に対照的だ。最後はLYNCH MOBの「Wicked Sensation」が披露されたが、これはさすがに格好良く、DOKKENナンバーでなくても全く問題なし。
LYNCH MOB「Wicked Sensation」



・感動的な場面を目撃し心がほっこりしたところに、究極に邪悪なBEHEMOTHの演奏が始まってしまうのがこのフェスの恐ろしいところ。この振り幅の大きさはまさにメタルというジャンルの奥行きの広さ、懐の深さを象徴しているかのようだ。ヴォーカルのネルガルの口から発せられる地獄の底から吹き上がってくるような声は、あっという間に会場全体を邪悪な空間に塗りつぶしてゆく。何故か日本語で「死ね!ジーザス!!」とMCして度肝を抜かれるも、とりあえず「ジーザスは既に2000年近くも前に死んでるんだが……」と心のなかでツッコミを入れる。その後も複雑で邪悪な楽曲を非常に高度なレベルで演奏し、ラウドパーク全体がまるで地獄のような雰囲気にしてしまうも、曲が終わる度にいちいち日本語で「ありがとなー」と言うため、ちょっと笑ってしまう。しかし、このライヴに於ける邪悪なオーラのレベルは現在のブラック・メタル界で随一なのではないか。まさにイーヴルとしか形容のしようのない、ブラックメタルの基本原理である「邪悪さ」「恐怖感」突き詰めたうえ、尚且つ高度な楽曲に仕立て上げてしまうという凄まじく難度の高い芸当をこなしているこのバンドの実力は、まさに地獄のように底なしである。
BEHEMOTH「Lucifer」



・そして、CARCASSの出番というところで再びアリーナに降りる。新譜の予習は全くしていないが、CARCASSの曲ならなんでも楽しめるだろう。そして全くその通りであった。「Buried Dream」が1曲めに繰り出されると後はもうアリーナは狂気の坩堝。モッシュして、サークル走って、クラウドサーフしてる奴に頭蹴られて、と、まぁ楽しい時間を満喫。中にはクラウドサーフしようという人を抱え上げてアリーナ前方に突っ込んでくる一団がいたが、それはちょっと危ないかなとは思う。イベントのMC(この日はサッシャじゃなくて、MTVのBooが担当してた)が「モッシュ、ダイブは禁止です!でも、どうしてもやっちゃいますよね。でも禁止です!禁止ですけどお~……、やっちゃいますよね?怪我しないように“愛のある”モッシュ・ダイヴでやってください!」という素晴らしい申し出があったのを思い出したが、まぁ、怪我しないように、そして怪我をさせないようにやってほしいものだ。それにしてもMCといえば、ジェフ・ウォーカーのMCがおかしい。やたらに「ニホンゴシャベレナクテ、スミマセン」と言うのだ。一度だけならなんてことないのだが、MCするたびに最初に必ずこれを言うのだ。なんだこれ。……後で調べたら、どうも今回の来日で公演前に行った掟ポルシェのインタビューが原因らしい。それはさておき、ライヴは最高。アリーナの大運動会も盛り上がりまくりで最高だった。そして話題のグロ画像スクリーンだが、オグリッシュやロットン全盛期からネットに親しんでる人たちにとっては、この手の画像には免疫が付いている人が多いのではないだろうか。また、日曜早朝にテレビ東京で放映されている「話題の医学」をチェックしていれば、CARCASSのライヴに行っても何も怖いことはない。でも畸形嚢腫の切除手術の動画が流れているときは見入ってしまって、近くでモッシュしてる人が突っ込んできたら危ないところだった。CARCASSのステージが終了したところで通路に出て、オフィシャルバーでビールを注文する。それにしても暴れまわった後のビールの旨さは一体何なんのであろうか。
CARCASS「Heartwork」


・さてANGRAの出番であるが、ここで大きな選択を迫られることになる。ここで退出して余裕を持って帰宅するか、EUROPEまで見て最終電車で帰るか。翌日朝から仕事その他の用事が入っており、絶対に今日中に帰らねばならないのである。悩みに悩んだが、ANGRAを聴きつつ帰宅の準備をする。天気も良くないので万が一電車が止まってしまう場合のことを考え余裕を持って帰ることにした。EUROPEを少しでも聴いたら多分最後まで聴いてしまうだろうし、それで電車を逃したら目も当てられない。仕事あっての遊びなのである。

・ANGRAのライヴは1曲目がいきなり「Angels Cry」。ヴォーカルは前任者のエドゥが解雇され、現在はサポートということでRHAPSODY Of FIREのファビオ・リオーネが担当。ファビオの朗々たる歌いっぷりは非常に堂の入ったもので、ライヴにおける歌唱に問題のあったエドゥ(ラウパー10で観たときはちょっと酷いように感じた)より安定感がある。ただ、「Angels Cry」を含む初期のANGRAナンバーは、当時のヴォーカリストであるアンドレ・マトスの独特の裏声と地声のめまぐるしく入れ替わる歌唱で構築されていたため、ファビオの高い力量を持ってしてもこの奇っ怪なヴォーカルワークを再現することは困難な仕事であった。ヴォーカリストにとって裏声を使うのはギャンブルのようなものなのだろうか?フレディ・マーキュリーもスタジオ録音では裏声をよく使っているのに、ライヴではその部分(「We Are the Champions」のサビの部分など)をフェイクして地声で歌っていたりするし。そうするとやはり裏声でばかり歌うキング・ダイアモンド御大の偉大さもわかろうというもの。ああ、キャンセルだとは……と現実に引き戻されてしまう。ファビオは裏声のところをミックスヴォイスで乗り切っていたが、なかなか苦しそうだ。おれが帰る頃に演奏されていた「Caryy On」ではそのキツイところが満載の鬼ナンバーであった。

ANGRA「Carry On」


・そして、M君に明日どのエリアにいるかを確認する。M君はスマホどころかガラケーすら持ち歩かない、筋金入りの反携帯電話主義者であるため、こうした確認が必要なのである。おれが到着する時間帯にはアルティメットステージ側スタンド前方の自由席にいるであろうことを確認。それから3時間賭けて帰宅。電車の中で携帯電話でラウパーの実況を見る。とにかくEUROPEが凄いことになっていると。2曲めまでは去年のSONATA ARCTICAを彷彿とさせる意地っ張りな地味曲演奏で落胆している声が書き込まれており、EUROPEを観ずに帰って正解だったかな、と内心思うも、3曲めに超絶名曲「Scream of Anger」が演奏されている旨が書き込まれてから状況は一変。もうベスト・オブ。ヨーロッパと言わんばかりの名曲群が演奏されている状況が書かれ、もう電車の中で歯噛みするばかり。「Ninja」が演奏されてると書かれた時の絶望感たるや半端なものではなかった。そして「Seven Doors Hotelキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」の文字が目に入ってきたときはもう……。ああ、おれもあのサビを歌いたくてたまらなくなる。そして最後は安定の必殺ナンバー「The Final Countdown」ということであった。さぞかし会場は盛り上がったことだろうな、ちくしょう。

・そしてトリのストテンの惨状はもう予見していたとおりだったようだ。ストテンもチェスターも悪くない。オズフェストの記事の時にラウパー11のリンプがトリだった時の大惨状のことを書いたが、性懲りもなく同じことを繰り返したわけである。クロージングアクトと割り切って呼ぶならともかくも、そういうつもりでブッキングしたわけでもあるまい。ストテンの方々には悪いが、ラウパーの顧客であるメタルファンがこのような主催者に対するアピール的な行為をするのは当然の権利なのである。誰とは言わないが、主催者サイドに「80年代で頭の中身が止まっているメタヲタどもを教育してやる」という人物がいるのだろうが、余計なお世話である。そしてそういう人に限って頭の中身が90年代で止まっているというのがなんともおかしい。今は2013年だというのに、時代錯誤も甚だしい。90年代はたしかに日本のメタルシーンはアメリカなどとは違っていたかもしれないが、遅れていたわけではないのだ。大体、21世紀のメタルの基盤を作ったイェテボリサウンドを担ったのはスウェディッシュ・メロディック・デス・メタルのバンド群であったが、アメリカより最低でも5年は早く日本のメタル市場では彼らをメインストリームに押し上げていた。アメリカで流行っていたメタルではなく(パンテラは別として)、別の角度からメタルを聴いていただけであって、80年代に固執していただけではない。その辺の感覚のズレがこのような、ストテンにとってもリスナーにとっても不幸な現実を作っていくのはなんとも愚かしいことだ。

・23時頃、家に帰り着き、泥のように眠りこける。また明日も仕事を終えた後にラウパーに行かねばならんのだ。キングのいないラウパーに……2日通し券を買ってしまったんだものなぁ。

続く

LOUD PARK 13 おぼえがき(箇条書きっぽい) ~前日編~

10月17日
・LOUD PARK開催日と仕事の折り合いがつかず、悩み続けていた。初日はトリ前で帰り、2日目はトリ前あたりからの参戦になることになるからだ。参戦するにしても初日だけにするか、それとも今年は参戦しないか……しかし、KING DIAMONDがどうしても観たかったので、2日目の大半を棒に振っても2日間とも参戦することに決める。初日のトリはどうせ見なくてもいいと思っていたのでその辺は問題なし。

・LOUD PARKのチケットを開催日2日前に購入。既に参戦を決めている都内の友人M君に参戦することを伝え、前日に上京し、当日朝からの参戦に備えることにする。

10月18日
・ラウパー前日、仕事を終え上京。待ち合わせ場所の新宿歌舞伎町のメタルバー「GODZ」に向かう。その前に花園神社に参拝し仕事が上手くいくようにと祈願。そして、おもしろ絵馬をチェック。V系のバンギャが書いたと思しき、バンギャ仲間がお気に入りのバンドメンバーと疎遠になってほしい、というようなことをびっしりと書き連ねた絵馬を発見し、ちょっと鬱になる。

・「GODZ」に到着。故ゲイリー・ムーアのライヴ明けに行って以来久しぶりである。M君は先に来ており、開口一番「キング・ダイアモンドが出演キャンセルだって」といきなり強烈な一発を繰り出す。GODZの店内ディスプレイの画面にもラウドパークの公式画像が表示されており、KING DIAMONDのところに「CANCELED」の文字が重なっていた。一体おれは何のために2日通し券を買ったと思っているのか。全てはキングのためだろう。そこから怒涛のヤケ酒展開に。コロナを飲んでいる時に盛大に吹き出してしまうという醜態を晒す。

・2人とも空きっ腹に酒を流しこんでいたために何か腹に入れねばと、M君自宅の最寄り駅である高円寺駅付近に向かう。駅近くの沖縄料理店「抱瓶」で食事をする。ミミガー、ラフテー、ゴーヤーチャンプル、テビチ、島魚の唐揚げにオリオンビールの生&瓶。とても美味しかった。

・その後、街をふらつきM君行きつけのプロレスファン向けのバー「WRES CAFE」に行く。また飲むのかよ。しかし、大絶賛ヤケ酒進行中である。すべてはキングが来ないのが悪い。ここは、おれも数度足を運んだことのある店である。初回は酔いつぶれて寝てしまい店長のBingoさん(年下・女性・既婚)に「ここは寝るための店じゃないんだよっ!」と叱られるという最悪のファーストコンタクトであったにもかかわらず、何故か現在では「師匠」と呼ばれる状態にまでなっている。何故だ。2010年のラウドパーク帰りに寄ったときは、漫画家「ゆでたまご」の“ゆで先生”(嶋田隆司)が来店している時に遭遇した店でもある。やっぱ東京はすごかとこばい。

・お初の店員2名に初めましてと挨拶。女性の方は初めてだったのだが、男性店員からは「前にもお会いしましたよ」と言われてしまう。とにかく、顔を覚えるのが苦手なおれである。そもそも他人づきあいが苦手なので仕方がない。この男性店員のナベ君は某バンドのヴォーカルであった。「二万(東高円寺のライヴハウス『二万電圧』のこと)でウチの企画で対バンしましょうよ」と言われる。でも君んとこは女性客ばかりではないか。完全男性向けの我々が出演したら客が逃げて行ってしまう。「音をヘヴィにすると、お客さんに『怖くなった。前みたいにもどってほしい』って言われちゃうんですよね……」と女性客の多いバンドならではの、自分の趣味性との兼ね合いについての悩みを聞かされる。結局ここでもヤケ酒気味に飲んでしまう。キングが来ないからこうなったのである。

・午前2時頃、かなり酔った状態でM君宅に到着。そのまま2人ともすぐに寝てラウパーに備える。

続く

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でー

Author:でー
メタルとか他いろいろなことを
法螺や誇張を交えてつらつらと

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